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白亜の騎士と癒しの乙女  作者: ゆきんこ
第四部

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屋敷 4

 お部屋に帰って連絡用の護符を手に取る。そうして先生を呼んだ。けど、先生がなかなか出てくれない。もしかして、もう寝ちゃった? 最近小さい子達が部屋に来るんで寝るのが早くなったって、前に言ってたし……。と思った時、護符が繋がった。


「アイリス? どうしました? こんな時間に」


 そう言った先生の髪はちょっと湿っているようだった。なかなか繋がらなかったのは、お風呂に入っていたからだったみたい。


「あのね、先生。使用人さん用の建物の間取りの参考になりそうな案、兄様とブロイエさんに聞いたの! そしたらね、色々教えてくれたの」


「スマラクト様、ですか……」


「ん! 兄様ね、こういうの考えるの得意なんだって。ローザさんが相談してみればって言ってくれてね、相談してみたの!」


「そう、ですか……」


 ん~? 先生が何か変。ちょっと元気が無いような……?


「先生? どうしたの? 何かあった? こんな時間に連絡したの、迷惑だった?」


「いえ……。何でもありません。話を続けて下さい」


「何でもなくないでしょ? 誤魔化すのは隠し事されてるみたいって、前、先生が言ったんだよ。誤魔化さないで」


「その……スマラクト様と……やり取り……して……かと……気になって……」


 先生がもにょもにょと何か言う。けど、よく聞き取れなかった。


「先生、何? 聞こえないよ。もう一回」


「スマラクト様と頻繁にやり取りをしているのかと、気になって……」


「頻繁にはしてないよ? 時々、護符でお話するくらいだよ?」


 それも、いつも兄様の方から連絡が来る。そして、言いたい事を一方的に捲くし立てて切られてしまう。やり取りというほどの話はしていない、と思う。


「時々、ですか……」


「そう。時々だよ」


「スマラクト様と話をするのは楽しいですか……?」


「そりゃ、まあ……」


「僕と話すより……?」


 そう言った先生の目は不安に揺れていた。


「えっと……? 先生? もしかして、妬いてる? 兄様相手に?」


「っ!」


 先生の頬に赤みが差す。図星だったらしい。思わずにやけてしまう。


「そっかぁ。先生、妬いてたのかぁ」


「ち、違います。ただ、僕の知らない所でアイリスが他の男とやり取りをしているのが気に入らなかっただけです」


「先生、それを妬いてるって言うんだよ?」


 まさか、先生が兄様相手に妬くなんてちょっと意外。だって、どう逆立ちしたって、兄様は先生に敵わないんだから。色々な意味で。


「アイリスは、スマラクト様を慕っているじゃないですか……」


「ん。そりゃあ、ねぇ?」


 兄と呼べる間柄だし。兄様とお話するのも遊ぶのも、結構楽しいし。好きか嫌いかと問われたら好きだ。


「スマラクト様もアイリスを気に入っています……」


 妹として、ね。ただ、兄様の好意には、同情も入っていそうだ。私に親が、家族がいないから。先生の好意とはだいぶ意味合いが違うと思う。


「僕は、いつかアイリスがスマラクト様に取られそうで、気が気じゃないんです……」


「それはない。考え過ぎだよ、先生!」


 だって、それって言い換えると、私が先生じゃなくて兄様を選ぶって事でしょ? 考えるまでもなく、絶対にない。


「私の一番は先生なの。それは、これから先も変わらないよ!」


「本当に……?」


「本当!」


 そりゃ、先生が妬く気持ち、分からないでもない。先生がアオイや寄宿舎の子達に優しくしてると、私も面白くはないもん。それに、もし、リーラ姫が今も元気だったら、仲の良い二人に妬いていたと思うから。


 兄様に妬くくらい、先生が私を好きでいてくれるんだって思えば、腹も立たないし、逆に嬉しくすらある。けど、まさか、先生じゃなくて兄様を選ぶかもって思われてるなんて心外だ。だから、ちょっとした意趣返しくらい、しても良いよね?


「先生は? 先生にとっての一番は?」


「それは、もちろんアイリスです……」


「寄宿舎の子達より?」


「ええ……」


「アオイよりも? 竜王様とかウルペスさんとかブロイエさんよりも? 私が一番好き?」


「もちろんです……」


 先生が消え入りそうな声で答える。くふふ。先生が照れてる。可愛い。癒された。


「やっぱり、私、先生とお話してる時が一番楽しいし幸せ。兄様とお話するよりも」


「僕もです」


「じゃあさ、早く一緒に住めるように、使用人さん用の建物の間取り、考えよう!」


 工事の遅れ、駄目、絶対! ムンと気合を入れ、先生にブロイエさん案と兄様案の説明をする。私の拙い説明でも、ちゃんとどういう事か理解してくれるんだから、流石は先生。


「壁への収納型ベッドは、あまり好ましくありませんね……」


「やっぱり? 先生もそう思う?」


 牢屋に使われてたような技術、使いたくないよね? この方法しか無いんだったら仕方ないけど、他に方法があるんだもん。敢えてこの方法を使う必要は無いよね?


「ええ。絶対に、出したままにする子がいるでしょう? 朝夕の上げ下ろしが面倒だから、と」


 そっちか。確かに、言われてみれば、出しっぱなしにする子が出そうだ。そうなると、ただの狭い部屋で使い勝手も何も無い。


「ただ、ベッドではなく机には応用出来るかもしれませんね。これは要検討で」


 机……。そっか。使う時にだけ出せる机を付ければ、机分のスペースが節約出来る!


「二段ベッドの下段を抜いた場合とどちらが使いやすそうか、寄宿舎の子達の意見も聞いてみます」


「ん」


「収納机にした場合、ベッドはスマラクト様案の穴倉式か、叔父上案の小屋裏式か……」


「あ。こやうら式は、夏、暑いんだって。窓が無いと寝てられないって!」


「窓必須、と……」


 先生は私と話しながらメモを取っているようだ。何だか打ち合わせしてるって感じ。くふふ。


「それぞれの案で何部屋くらい部屋が増やせそうか、この後計算してみます」


「この後?」


 この後って、この後? 先生、夜更かしする気満々?


「先生、明日ね。明日、落ち着いて計算してみて?」


「しかし……」


「明日」


「……はい」


 分かれば宜しい。大真面目な顔で頷く私を見て、先生がくすりと笑う。


「アイリスには敵いませんね。そうそう。建物の外観をどうするか、アイリスが考えて下さい。参考になりそうな本は、城の図書室にありますから」


「ん。色んな建物が載ってる本探して、気に入ったの選べば良いの?」


「ええ。それを元にして外観図を描いてもらいますから」


「分かった!」


 よし。早速、明日、図書室に行って探してみよっと! こういうの、お家建ててるって感じがして楽しいな。


 どんなのが良いかなぁ……。竜王城や寄宿舎みたいなレンガ造りも悪くないけど、離宮やブロイエさんのお屋敷みたいな塗り壁も好きなんだよなぁ。


 塗り壁と言えば、生まれ育った村の建物も塗り壁だったな……。それで、壁に木の梁みたいなのがくっ付いてて……。あんな雰囲気の建物にしたいって言ったら、先生、気にするかな……。私が故郷に帰りたいんじゃないかって。母さんに会いたいんじゃないかって……。

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