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白亜の騎士と癒しの乙女  作者: ゆきんこ
第四部

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家 4

「ただ――」


 先生が口を開く。ソファから身を起こし、そんな先生を見た。と、先生がにこりと笑う。


「屋敷が出来上がる様をアイリスの見守るの、実は楽しみでもあります」


「そうなの? そんな事が?」


「おや。そんな事と言いますか?」


 そう言って、先生が片眉を上げた。そんな先生に、憮然とした顔を向ける。


「だってぇ。一日も早く、先生と一緒に暮らしたいんだもん……」


「それは僕も同じですよ? ただ、一緒に暮らす前に想像を膨らませる事が出来るというか……。そうだ。今日は一緒に部屋割りを考えません?」


「部屋割りぃ?」


「そう。僕とアイリスが暮らしやすいように、ね」


 そう言って、先生はソファから立ち上がると、机に置きっぱなしになっていた図面を取りに行った。そして、ソファに戻って来ると、ローテーブルの上にそれを広げる。


「ここが主寝室。僕とアイリス、二人の部屋ですね」


 先生が図面の、大きな部屋を指差す。ふんふん。私と先生のお部屋は、三階の真ん中なのね。見晴らしが良さそうなお部屋だ。


「その隣が居間で、そのまた隣が食堂。メインの食堂はまた別に作って、こちらは二人きりで過ごしたい時に使います。今は図面にありませんが、この辺りに水回りも一式作ろうかと思っています」


 へ~。二人だけの食堂があるのかぁ。それは良い。


「ここがアイリスの私室と研究室にどうかと思っています」


 そう言って、先生が主寝室から少し離れた、二間続きになっている部屋とそのお隣の部屋を指差した。


「薬草保管庫も必要でしょうから、この二間続きの部屋が研究室と薬草保管庫で、その隣が私室ですね」


「でも、薬草保管庫、大きな窓は無い方が良いんだけど……。換気用に小さい窓で十分だし、部屋だってこんなに広くなくても……」


「では、研究室か私室を広げて、薬草保管庫は半分くらいの広さにしましょうか?」


「ん~。私室は広くなくても良いかなぁ。あんまり居心地良くすると、私室に入り浸りになりそうだし。それに、私室使うのって、喧嘩したりして、先生の顔を見たくない時でしょ? 居心地良いと、いつまで経っても出て来なくなるよ?」


「え……。それは困ります」


 大真面目な顔で先生が言う。その様子に、私は思わず噴出してしまった。


「冗談だよ、先生。驚いた?」


「ええ。一瞬、アイリスの私室を無くそうかと、本気で思いました」


「えッ!」


「冗談です。驚きました?」


「んもぉ~!」


 先生と二人、笑い合う。何だか楽しくなってきたぞ。


「先生のお仕事部屋と私室は? どこにする予定なの?」


「一階の奥を考えています」


 先生が図面の一階の、一番奥まった部屋を指差す。また随分と不便そうな場所だな。主寝室からちょっと遠くないかな?


「そこ、不便じゃない? それに、一階の奥って、見晴らしも日当たりも悪そう……」


「ええ。アイリスの言う通り、見晴らしも日当たりも悪いので、客間には向きません。使用人の居住空間は別の場所にまとめる予定なので、この部屋、使い道が無くて……。それに、あまり人の往来があるような場所に執務室を作りたくないので、ここが良いかと……」


「先生が、そこが良いって言うのなら私は良いんだけど……。でも、私室は別の場所にしない? お仕事部屋のお隣に私室があると、先生、主寝室に帰って来なくなりそうなんだもん」


「流石にそれは……」


「絶対に無いって言える? お仕事が忙しくて寝るのが遅くなって、私に気を遣って私室で寝ようかなってなる事が絶対に無いって言える? 絶っっっ対に?」


「それは……」


 先生が少し困ったような顔で視線を彷徨わせる。私は「はぁ……」と、これ見よがしに大きな溜め息を吐いた。


「ほらぁ。無いって言えないんじゃん。隣は駄目だよ、絶対! 三階のどこかにしようよぉ! お仕事部屋のお隣は、先生専用の応接間とかにしてさぁ」


「そうですね。アイリスがその方が良いと言うのなら」


「ん。その方が良いから、三階のどこかのお部屋ね!」


 三階の部屋を見比べる。先生の私室はどこが良いかなぁ? 私の私室の近く? ん~。でも、喧嘩した時に、顔を合わせる可能性が高い部屋だと、お互いに気まずいような……。あーでもない、こーでもないと頭を悩ませる私を見て、先生がくすりと笑った。


「ね? こういう事を一緒に考えるの、結構楽しいでしょう?」


 はっ! 図面から顔を上げると、先生が悪戯っぽく笑っていた。つい夢中になっちゃってた。恥ずかしい~! 赤くなった頬を押さえる私を見て、先生がクスクス笑う。


「出来上がるの、今から楽しみですね」


「ん」


「建設が始まったら、現地、一緒に見に行きましょうね?」


 そう言った先生の声は弾んでいた。たぶん、今まで聞いた中で一番弾んだ声だったと思う。先生も楽しみなんだな。上機嫌にニコニコしてるし。そんな先生を見ていたら、私まで楽しみになってきた。だから、満面の笑みで頷く。


「ん! 約束ね!」


 先生と一緒に住むのはまだまだ先になるけど、こうして先生との約束が増えると、楽しみも増える。早く建設始まらないかなぁ。くふふ。

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