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白亜の騎士と癒しの乙女  作者: ゆきんこ
第四部

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家 1

 先生の気持ちを知った次の日、私は先生との事を相談する事にした。アオイとローザさんに。


 二人なら、どうしたら良いか、どうするべきなのか、答えを出してくれる気がしたから。毎夜恒例の三人でのお茶会で、先生と交わした会話を二人に話す。


「へ~。ラインヴァイスがねぇ。ちょっと意外~!」


 私の話を聞いたアオイがほうほうと頷くと、お茶を一口啜った。


「あまりそういった気持ちを口に出さない方ですからね。うちの人と違って」


 そう言ったローザさんは穏やかに笑っている。


「何か良い案ある? 私も先生も寂しくない方法」


「そりゃ、一緒に住むしかないでしょ」


 ティーカップを置いたアオイがケロッとした顔で言う。私は眉を下げた。


「でも、どこに住むの? 寄宿舎? それともお城?」


「ん~……。どっちに住むにしても、二人のうちどっちかが職場まで遠いのかぁ……」


 アオイが腕を組んで頭を捻る。ローザさんも難しい顔をしていた。


「通えない距離ではないですけれど、少し遠いですわね。せめて、城から寄宿舎までの距離がもう少し近ければ、無理なく通えるのでしょうけれど……。あ。うちの人に、城と寄宿舎を繋ぐ魔法陣を描いてもらいます?」


「いや、それ、マズいですよ、流石に。城の外への直通出口なんて作って何かあっても、責任なんて取れないですよ、誰も」


「そう、ですわね……」


「もうさ、いっその事、家作れば良くない? 城と寄宿舎の中間あたりとかどうよ?」


 さも当たり前のようにアオイが言う。ローザさんも賛成とばかりに笑顔で頷いていた。


「流石に、それは先生と相談しないと……」


 家を作るにはお金が掛かる。そんなの、私だって知っている。そりゃ、私だって無駄遣いしないでお金を貯めてるけど、そんなのくらいじゃ全然足りないと思う。先生にもお金出してもらって――。そもそも、家を建てるのって、いくらくらい掛かるのかな? 先生に相当負担させる事になるんじゃ……。


「そんな顔しなくても大丈夫だよ、アイリス。二人が良ければだけど、結婚祝いの前借って事で、シュヴァルツにお願いしてあげるから!」


「それでしたら、うちの人にもお願いしてみましょうか? 家具ですとか、色々と必要になりますし」


「じゃあ、うちが箱物で、ローザさん家が内装関係ですかね?」


「ですわね」


 アオイとローザさんの二人が、嬉々とした様子で相談を始める。ええっと……。私、当事者のはずなんだけどなぁ……。蚊帳の外になっちゃった。


 お仕事を終えて病室に戻ると、今日は珍しくバルトさんが起きていた。ベッドで上体を起こして、じゃれ付くミーちゃんと遊んでいる。


「ただいま」


「ああ。今日は少し早いな」


「そうかな? アオイとローザさんと、結構お話したんだけどな」


「何か悩みか?」


「え……。何で分かったの?」


「顔に書いてある」


「そっか……」


 頬を押さえ、眉を下げる。私、すぐ顔に出ちゃうからなぁ。怪我人のバルトさんには、あんまり心配掛けたくないんだけどな……。


「あにゃにゃにゃにゃにゃにゃにゃ、にゃ~にゃんににゃにゃにゃ!」


「私で良ければ相談に乗るよ、だそうだ」


 叫んだミーちゃんの言葉を、バルトさんが真顔で訳してくれる。


「ん~。でも、バルトさん、もう寝るでしょ?」


「まあな。だが、少しくらいなら付き合うが?」


 どうしよっかな……。あんまりバルトさんに無理させたくないけど、二人にも聞いてもらえるなら聞いてもらいたいような……。う~ん……。ミーちゃんとバルトさんを見比べる。二人ともジッと私を見つめていた。


「あの、ね――」


 ベッド脇の椅子に腰掛け、口を開く。二人とも真剣な顔で私の話を聞いてくれた。


「――だからね、アオイとローザさんに相談したの」


「あにゃにゃにゃいにゃにゃにゃにゃにゃ!」


「あの白いの絡みか、だそうだ。二人はその話を聞いて、何て言っていたんだ?」


「家、作っちゃえばって。それで、結婚祝いの前借って事で、私と先生さえ良ければ、家、作ってくれるって」


「問題の根本は離れて暮らしている事なのだから、それが合理的だろうな。だが、今から建て始めて何年掛かる事やら……」


 バルトさんが呆れたように溜め息を吐く。言われてみれば、家を一から作るのって、とっても時間が掛かりそう。お金のことばっかりで、完成するまでの期間なんて考えてもみなかった。


「まあ、将来的には必要になるのだろうし、建ててもらえるのなら早いうちに建ててもらうのも良いが、完成までは、現状、何も変わらないな」


「そう、だね……」


「俺が退院すれば、もう少し頻繁に会いに行けるようになるのだろうがな……」


 自嘲気味にバルトさんが笑う。私はブンブンと首を横に振った。


「バルトさんのせいじゃないよ! 私と先生、ずっと一緒にいるのが当たり前だったから……」


「そうだな。アイリスが城に来てから、ずっと一緒にいたんだ。寂しいだろうな、互いに」


 そう言って、バルトさんが私の頭に手を伸ばす。そして、よしよしと頭を撫でてくれた。それを見たミーちゃんがバルトさんの腕に飛びつく。物凄い形相で。


「ミーちゃん、もしかして、やきもち焼いてるの?」


「ああ。私以外の女に触るな、だそうだ。ミー、爪が痛い」


「あにゃにゃい!」


「うるさいって……」


 はぁと大きく溜め息を吐いたバルトさんが、ミーちゃんを抱き上げる。そして、ご機嫌を取るように喉元をくすぐり始めた。しばらくして、ミーちゃんがゴロゴロとご機嫌に喉を鳴らし始める。


「家の話は、団長にもした方が良いと思うぞ」


「ん。この後連絡してみる」


「それが良いだろうな」


 そうして私は席を立つと、先生に連絡を取る為に私室へと戻った。連絡用の護符を手に、ベッドに腰を下ろす。


「先生」


 護符に魔力を流し、先生を呼ぶ。少しして、護符の魔石に先生の姿が映った。


「アイリス? どうしました?」


「あの、ね……。アオイとローザさんがね、家、作ってくれるって……。竜王様とブロイエさんにお願いしてくれるって……」


「家……?」


 怪訝そうに先生が眉を顰める。私はこくりと頷いた。


「私と先生が一緒に暮らす家。結婚祝いの前借って事で作ってくれるって……。私と先生が寂しくないように。先生、どう思う?」


「それは良いと思いますが……。それよりも、もしかして、昨日の事を……?」


「ん。アオイとローザさんに相談したの。そしたら、家作ればって」


「アイリス……」


 先生がおでこに手を当てて項垂れる。その耳はちょっと赤くなっていた。


「もしかして、相談したら駄目だった?」


「駄目と言うか、何と言うか……。まあ、話してしまった事を今更責めてもどうにもならないので、今後の事を話しましょうか……」


「ん」


「アイリスは、家、欲しいですか?」


「私は――」


 先生と暮らす家かぁ……。私が帰る場所で、先生が帰る場所。何があっても先生と一緒にいられる場所。毎日一緒にごはんを食べて、たくさんお話して――。心安らげる温かい場所。想像するだけで何だか心がポカポカしてきた!


「欲しい!」


「では、竜王様と叔父上には、僕からも連絡しておきます」


「先生は? 良いの? 結婚祝い、他に欲しい物とかあったら良いんだよ?」


「アイリスの喜ぶ顔が僕の一番欲しい物ですから」


 そう言って、先生が優し気に笑う。その顔と言葉に、私の頬が熱を帯びた。嬉しいけど恥ずかしい。恥ずかしいけど嬉しい!

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