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白亜の騎士と癒しの乙女  作者: ゆきんこ
第四部

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引っ越し 2

「私、先生の誤解を解きたい」


「それは……。ラインヴァイスはこうと思ったら、真っ直ぐそれを貫く性格だよ? アイリスも分かってるんじゃないの?」


 ブロイエさんの言葉に、私は口を尖らせた。先生が頑固なのは私も知ってる。きっと、先生は、私がどんなに近衛師団のみんなの気持ちを伝えても、本当の意味で納得はしてくれないと思う。


「でも、どうにかしたんだもん……」


「そっか……。うん。そうだよね。どうにかしたい問題だよね」


「ん……」


「良いでしょう。この僕が協力しましょ。で、何をしよっか?」


 何をすれば、先生はみんなの気持ちに気が付くのか……。好意を伝える方法って、何があるんだろう? う~ん。何かあったような……。う~ん。あ!


「贈り物! 魔人族は、好意を伝える為に贈り物するって聞いた!」


 良い事を思い付いた。と思ったのに、ブロイエさんはうぇ~っとばかりに顔を顰めた。


「確かに、贈り物は好意を伝える手段ではあるけど……。男同士でそれは……」


「何で? 男の人同士で贈り物したら変なの?」


「変だねぇ。贈り物が表す好意は、愛していますって事だから。例外は、見返りがある場合だけ。これあげるから何かしてよって時ね」


 見返りかぁ。それじゃ、目的が違うなぁ。好意は見返りを求めるものじゃない。純粋に、気持ちの問題なんだから。


「じゃあ、魔人族の人達って、仲良くなりたい人とどうやって仲良くなるの?」


「う~ん。そうだねぇ……。僕は一緒に呑むかなぁ。お酒が入るとね、ぽろっと本音が出たりして、普通に話をするより仲良くなれるんだよ」


「でも、先生だって、そういう機会、今までにあったよね、きっと。一度も無かったなんて無いよね?」


「うん。まあ、そうだねえ……。でも、誤解したままなんだよねぇ……」


「ん。お酒を一緒に飲むだけじゃ駄目なんだよ、きっと」


 近衛師団の人達と一緒にごはんを食べたり、お酒を飲んだり、楽しい時間を過ごしたり。そういう事は、きっと、私と出会う前から、頻繁ではないにしろあったはず。でも、先生は誤解したまま。そういう事じゃ、先生の誤解を解く事は出来ないんだろう。


 しばらくの間、私とブロイエさん、そして、ローザさんも一緒に頭を捻っていた。でも、良い案は思い付かなかった。好意を伝えるって難しい!


 だから、次の日から、私は色んな人に意見を聞いて回る事にした。先生に隠れてこっそりと。キッチンの人達や厩舎の人達、緩衝地帯の隊長さん達などなど。手当たり次第に聞いた。意外だったのは厩舎の人達。ダメ元で質問したら、何だかんだでみんな律儀に答えてくれた。先生とバルトさんの人望って何気に凄い。


 聞いた意見の中で、一番多かったのはブロイエさんと同じ。一緒にお酒を飲むだった。次に食事。他にも、一緒に狩りや採集に行くとか、手合せをするなんて意見もあった。


 そのどれもが、先生が一度はみんなとしていそうな事だった。これじゃ駄目なんだよなぁ。はぁ……。良い案ってなかなか見つからないなぁ……。


「どしたの、アイリス? 何か悩み事?」


 小さく溜め息を吐いた私を、アオイが不思議そうに見つめている。いかんいかん。ついつい、良い案が出ないからって、アオイの前で溜め息を吐いてしまった。アオイの寝る準備が終わって、毎晩恒例のお茶会の最中だったのに。


 アオイにはこういう姿、見せたら駄目なんだ。だって、私はアオイのメイドだから。アオイは私の事を妹みたいなものと言ってくれているけど、それにいつまでも甘えていたら駄目。その辺はきっちり弁えないと。先生みたいに。


「何でもない」


「いや。何でもなくないでしょ。今、溜め息吐いてたじゃない」


「つ、吐いてないもん」


「吐いてた。嘘吐かないの。で? 何を悩んでるの?」


 ど、どうしよう……。ちらりとローザさんの顔色を窺う。すると、ローザさんは微笑みながら頷いた。


「ねえ、アオイ様? アオイ様は仲良くなりたい方がいらっしゃった場合、どういった方法で仲良くなろうとします?」


 私の代わりに、ローザさんがアオイに質問してくれる。アオイは腕を組み、頭を捻った。


「それがアイリスの悩み? 仲良くなりたい子でもいるの?」


「いえ。仲を取り持ちたい方々がいるのですよ」


 そうそうと、ローザさんの言葉に頷く。アオイは怪訝そうに眉を顰めた。


「仲を取り持つ? それは、恋愛関係の話?」


「いえ。男性同士での話です」


「先生と近衛師団の人達……」


 おずおずと口を開く。すると、アオイは更に怪訝そうな顔をした。


「ラインヴァイスと近衛師団の人達って……。取り持たないといけない程、仲、悪くないでしょ?」


「近衛師団の人達は先生の事好きだし、一目置いてると思うの。でも、先生が……」


「ラインヴァイスが? 何? 嫌われてるとでも思ってるの?」


「そう……。いなくなったら清々する人もいるかもって……この間……言ってて……」


「ああ~。それで、仲を取り持ちたいって事なのね」


「ん……。先生の誤解、解きたいの。先生がお引っ越ししたら、今よりみんなと顔を合わせる機会が減るから……」


「確かに、誤解を解くなら今のうちかー」


 そう言って、アオイが神妙な顔でうんうんと頷いた。


「会食とか飲み会なんてのは、今までだってあっただろうしぃ……」


 アオイがぶつぶつ言いながら頭を捻る。アオイも一緒に、どうしたら良いか考えてくれるらしい。アオイは異世界生まれだから、もしかしたら、私達が思い付かないような、奇抜な案を出してくれるかも! 期待を込め、じっとアオイを見つめる。じっと。じ~っと。


「すっごい圧を感じる……」


 私の視線に気が付いたアオイが苦笑した。ローザさんも苦笑している。


「だ、だって! アオイ、私の知らない事、いっぱい知ってるんだもん!」


「私の知らない事……? ああ……。異世界文化の事か……」


「ん! アオイの生まれた世界だと、仲良くなる為にどうするの? 何するの?」


「ええっと……。たぶん、こっちの世界と変わらないと思うよ。一緒に遊んだりごはんを食べたり、呑み行ったり……」


「そっかぁ……」


 アオイの生まれた世界でも、その辺は変わらないのかぁ……。世界が違うと方法も違うのかなって、ちょっと期待したんだけどな……。


「あ。でも、引っ越しする人にあげる物だったらあったよ。私、小学生――小さい頃に作った事ある」


 ん? 引っ越しする人にあげる物? あ。でも、プレゼントは駄目だ。変だって、ブロイエさんが言ってたもん。


「プレゼントは駄目なんだよ?」


「うん。まあ、そうなんだけど……。アイリスが取りまとめて、アイリスの手から渡せばそんなに変じゃないかもしれないし……」


 アオイの言葉に、ローザさんが一つ頷き、微笑んだ。


「では、その辺りの事は、うちの人に確認してみますね。で、どういった物を渡すのです?」


「寄せ書きって分かります? 色紙っていう厚紙に、みんなで一言ずつ書くんですけど――」


 アオイが寄せ書きについて一通り説明してくれる。何でも、アオイが小さい頃、引っ越しをする子がいるんで、「くらすめいと」なる友達集団で作って、一緒に過ごす最後の日にあげたんだとか。「元気でね」とか、「別の学校になっても友達だよ」とか、そう言う一言を、「しきし」なる分厚い紙に書き込むらしい。


 それなら、近衛師団の人達にも書いてもらえる。早速ブロイエさんに確認して、変じゃなかったら「しきし」を商業区に探しに行こっと!

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