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白亜の騎士と癒しの乙女  作者: ゆきんこ
第四部

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調査 3

 お昼近くになり、真っ先に目を覚ましたのはミーちゃんだった。きょときょとと辺りを見回し、すぐ隣に寝ていたバルトさんのほっぺを前足でペシペシ叩く。と、バルトさんが寝返りを打った。バルトさんはまだ、スッキリお目覚めは出来ないようだ。


「ミーちゃん、まだ起こさないであげてね?」


 私がそう声を掛けると、ミーちゃんはバルトさんとこちらを見比べた。と思ったら、バルトさんの頭に身体をくっ付けて丸まった。でも、丸まっただけで寝る気は無いようだ。机に向かっている私を観察するように、ジッとこちらを見ている。


「お勉強だよ。早く一人前になりたいから」


 ほらと、机の上に広げていた魔道書をミーちゃんに見えるように掲げる。と、ミーちゃんがねこ語で何か言い始めた。どうしたんだろう? 何言ってるんだろう? 首を傾げる私を見て、ミーちゃんが諦めたように溜め息を吐く。


「ごめんね。ミーちゃんの言葉、分からなくて。バルトさんが起きたらお話しようね」


「にゃにゃ……」


 ミーちゃんが首を横に振る。あれぇ? お話したいんじゃないの? 私が再び首を傾げると、ミーちゃんは興味が失せたとばかりに前足の上に頭を乗せて目を閉じてしまった。


 それからしばらくして、お昼を過ぎた頃、バルトさんがもぞもぞと動き始めた。それに気が付いたミーちゃんがのそりと起き上り、そんなバルトさんの顔を覗き込む。


「ん……? ああ、ミーか……。おはよう……」


 そう言ったバルトさんの口に、ミーちゃんがそっと口付けた。おお。お目覚めのチュ~! 何だか、見てるこっちが恥ずかしい!


 寝ぼけ眼のバルトさんがミーちゃんに手を伸ばした。そして、ミーちゃんの喉をくすぐるように撫でる。ミーちゃんは気持ち良さそうに目を細め、喉をグルグル鳴らしている。


「ん~……。何、この音……」


 あ。ウルペスさんも起きた。目を擦りつつ、ベッドから起き上がるウルペスさんの顔色は良い。バルトさんも。たぶん、ミーちゃんも。でも、一応、確認しておかなければ。


「みんな、気分どう? まだ具合悪かったら、魔術で治せるけど……」


「悪くないかなぁ」


 そう言って、ウルペスさんはう~んと伸びをした。バルトさんもベッドから起き、靴を履きながら口を開く。


「俺も大丈夫だ。ミーも大丈夫だそうだ」


 そりゃ良かった。今日の酔い醒まし、よく効いたようだ。


「じゃあ、食堂行こっか?」


「んにゃ、にゃにゃにゃにゃ」


「じゃあ、任せて、だそうだ」


 バルトさんがミーちゃんの言葉を訳してくれる。任せてって……。ああ、ミーちゃんが食堂まで転移魔法で連れてってくれるって事ね。体調が回復したなら、転移魔法の一つや二つ使えるだろうし。


 バルトさんとウルペスさんが簡単に身なりを整えている間に、私は机の上の魔道書を片付け、病室に内側から鍵を掛けた。ぐるりと室内を見回し、忘れ物が無いか一応確認する。うん。忘れ物、無し!


「準備出来たよ!」


「俺も~」


「じゃあ、ミー、頼む」


「にゃ!」


 頷いたミーちゃんが長く鳴くと、ミーちゃんを中心に魔法陣が展開された。目の前が一瞬光ったと思ったら、私達は食堂の前に立っていた。


 食堂の中は、お昼の時間を回ったせいか、空席が目立ち始めていた。大混雑の時間帯は避けられたらしい。私とウルペスさん、バルトさんの三人は大テーブルの上の軽食を取り、ミーちゃんはキッチンに繋がる小窓にべったりと張り付いている。私達がごはんを取り終わるくらいのタイミングで、キッチンから出て来た料理人さんがバルトさんのお盆の上に小皿を置いた。すると、ミーちゃんが小窓から飛び降り、バルトさんの足にじゃれ付き始める。バルトさんはそんなミーちゃんを見て目を細めると、その小さな身体を蹴らないようにだろう、慎重に歩き始めた。あんな風に纏わり付かれても、尻尾を踏んだり蹴っ飛ばしちゃったりしないんだから、バルトさんってば凄い。これも、ミーちゃんに対する愛情だろう、たぶん。


「凄いよねぇ、あれ。俺だったら、間違えて蹴とばすよ」


「ん。私も踏んじゃいそう」


 バルトさんとミーちゃんを微笑ましく見つつ、ウルペスさんと二人並んでバルトさんとミーちゃんの後をくっ付いて行く。そうして空いている席に着くと、私達はちょっと遅めのお昼を食べ始めた。


 お腹を満たし、食後のお茶をしていると、先生が食堂に姿を現した。とたん、ミーちゃんが毛を逆立て、威嚇を始める。


「やはりここでしたか」


 先生が苦笑しながら、空いていた私のお隣の席に腰を下ろした。そんな先生にお茶を淹れてあげる。


「どったの? 何か用だった?」


 ウルペスさんが不思議そうに首を傾げる。と、先生が上着の内ポケットから護符を取り出した。


「叔父上からの預かり物です。昨日渡そうと思ってすっかり忘れていた、と。連絡用の護符です」


 先生が取り出した護符は、私も持っている連絡用の護符だった。ブロイエさんってば、忘れてたって……。こんな大事な物を……。


 ウルペスさんとバルトさんは護符を受け取ると、それを興味深そうに観察し始めた。


「呼び出したい相手の名を呼びながら魔力を流すと、相手の護符に繋がります。因みに、その護符を持っているのは、叔父上、竜王様、アオイ様、隊長三人組、アイリス、スマラクト様、僕だけです」


「アイリスちゃんも? 今持ってる?」


 ウルペスさんの言葉にこくりと頷き、襟元の鎖を引っ張って護符を取り出す。


「持ってるよ! ほら!」


「ふ~ん。アイリスちゃん」


 ウルペスさんが私の名を呼ぶ。すると、私の手の中の護符の魔石が薄らと光り始めた。魔力を流して、と。


「おお。こんな風になるんだ。すげ~!」


 ウルペスさん、護符に映った私の姿を見て大はしゃぎ。バルトさんは、そんなウルペスさんを呆れた目で見ていた。


「出来れば、一日の終わりに報告を入れて下さい。まあ、貴方達に限って、何かあるとは思えませんが、一応」


 先生の言葉に、バルトさんが神妙な顔で頷く。もしかして、先生の言う報告って、いわゆる生存確認ってやつ? 私、あんまり深く考えてなかったけど、こういう調査って危ないの……?


「そんな顔しないでよ、アイリスちゃん。どうせ、何も無かったよ~って、毎日報告するだけなんだから」


「でもぉ……」


 生存確認なんでしょ? 調査って危ないんでしょ? ひとりしょんぼりしていると、ミーちゃんがねこ語で何か言い始めた。バルトさんがふんふんとミーちゃんの言葉を聞いていたかと思うと、フッと小さく笑った。


「バルトさん……? ミーちゃん、何て……?」


「何かあったら、私がアイリスの所に転移で連れて行くから。頼りにしてるよ、治癒術師見習いさん、だそうだ」


「おお、そうだよ! 俺らには強い味方、治癒術師見習いのアイリスちゃんがいるんだから、心配する事なんて何もないでしょ」


 ウルペスさんが人懐っこい笑みを浮かべながらうんうんと頷く。ちらりと先生を横目で見ると、先生も微笑みながら頷いていた。


 そ、そうか。私、頼りにされてるんだ。よし! 何かあっても大丈夫なように、今日からもっと勉強頑張るぞ! それで、みんなの期待に応えなければ!


 ……あれ? でも、私が活躍する時って、ウルペスさんやバルトさんに何かあった時な訳で……。う~ん。そう考えると、私が活躍する機会は、出来れば回って来て欲しくないなぁ、なんて。

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