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白亜の騎士と癒しの乙女  作者: ゆきんこ
第三部

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デート 4

「暑い暑い。あぁ~、暑い暑い。常夏だわ、ここ」


 ウルペスさんが手でパタパタと顔を扇ぎながらそう言った。んもぉ! すぐそうやって茶化すんだから。ウルペスさんってば! こうなったら!


「んっ!」


 見物料。大真面目な顔で手を出す。と、ウルペスさんが不思議そうに首を傾げた。


「何、その手……?」


「見物料。タダ見は駄目です!」


「うわぁ。ちゃっかりしてるねぇ」


「ん」


 大真面目な顔のまま、こくりと一つ頷く。でも、欲を言えば、ちゃっかりじゃなくてしっかりと言って欲しかった。


「見物料かぁ。う~ん……」


 ウルペスさんがカウンターの下をごそごそと漁り始めた。お茶請けで出してくれた砂糖漬けのビンもカウンターの下に置いてあったみたいだし、そこはウルペスさんの私物置き場なのかもしれない。


「じゃあ、これで手を打ってよ」


 ウルペスさんがそう言いながら、ことりと小瓶を置いた。小瓶の中身は、色とりどりの……ガラス玉? にしては、表面がざらついているような……?


「何、これ……?」


「アメちゃん。リーラ姫が好きで、よく食べてたお菓子。んで、俺の研究のお供。疲れた頭には甘い物ってね。気に入ったら、ここの隣の店で買えるから」


 お菓子! いそいそと小瓶を手に取り、蓋を開ける。そして、まずは匂いを嗅いでみた。ん~……。果物みたいな匂いがする。けど、色んな匂いが混ざってて、何の果物かまでは分からないなぁ。試しにと、ピンク色のアメちゃんを一つ摘まみ、恐る恐る口に入れてみた。


「甘い! ベリーのジャムみたいな味がする!」


「気に入った?」


「ん!」


 頷き、バリボリと噛んで飲み込む。と、ウルペスさんが堪らずといった様子で噴き出した。


「凄いワイルドな食べ方!」


「え?」


「アイリス、それは噛まずに舐めるものですよ」


 そう教えてくれたのは先生だった。え? え? アメちゃんの小瓶とウルペスさん、先生を見比べる。ウルペスさんはお腹を抱えて大笑い。先生は口元に手をやり、一生懸命笑うのを堪えていた。でも、その肩はプルプルと震えている。は、恥ずかしい~! 熱くなった頬を、両手で押さえる。


「こういうお菓子、食べるの初めて?」


 ひとしきり笑い、涙の溜まった目でウルペスさんが問う。私は頷きかけ、ブンブンと首を横に振った。


「もらって食べた事あった」


「誰に?」


 今度は先生が問う。見ると、先生の顔が真顔になっていた。そんな先生からひんやりと、冷たい空気も漂ってきている。何で先生ってば、急に不機嫌になったの……? 私、まずい事、言った……? オロオロと先生、ウルペスさんを交互に見る。と、ウルペスさんが苦笑した。


「誰かからの贈り物だったの?」


「ん~ん。ず~っと前、アオイと一緒にお城の壁の苔毟りした時、お駄賃でお菓子もらってね、その中にあった……」


「そっか。お城の壁を綺麗にしてくれたお礼だったんだね」


「そう」


「だそーですよ、せんせー」


 見ると、先生はバツの悪そうな顔でお茶に手を伸ばしていた。私もお茶を一口飲み、ふと、思い出す。


「そのお菓子、アメちゃんよりも柔らかくって、もっちりしてたような……。それで、透明の紙に包まれててね、それ、剥すの大変だったんだ」


 思い出したらまた食べたくなってきた。食べるのは大変なお菓子だったけど、独特の食感で、あれ、美味しかったなぁ。


「透明の紙……? ああ、あれか……」


 ウルペスさんがうんうんと頷く。何気に、ウルペスさんってばお菓子好き? すぐに分かったって事は、普段から食べてるって事だよね?


「アイリスちゃんに良い事教えてあげるよ」


「何?」


「そのお菓子、アメちゃんが売ってる店に置いてあるよ」


「本当?」


「ホント、ホント。あと、透明の紙、食べられるんだよ。剥さないで、そのまま食べるの」


「そうだったの?」


 またしても、私、食べ方を間違えていたらしい。でもでも! 母さんと一緒に住んでた時は、お菓子なんて食べた事なかったんだもん。誰も食べ方なんて教えてくれなかったんだもん。だから仕方ないんだもん!


「この後、一緒に行ってみましょうか?」


 そう言ってくれた先生に笑顔で頷く。お菓子っ! お菓子っ! そうして私と先生は、ウルペスさんのお店を出た後、アメちゃんが売っているというお店に向かった。


 アメちゃん屋さんには、色んなお菓子が置いてあった。と言っても、イェガーさんがくれるような焼き菓子は置いていない。アメちゃんみたいにカラフルなお菓子ばっかり。こういうお菓子は、焼き菓子よりも安価な、大衆向けの物らしい。でも、焼き菓子よりも見ていて楽しい!


「これ、変なの! べへモスみたいな形してる!」


「飴細工ですね。こっちはラッセルボックですよ」


「本当だぁ! かわいい~! あ。先生、これだよ! さっき言ってたお菓子! 透明の紙の!」


「ああ、これですか。食べます?」


「ん~……」


 今日はお小遣いをほとんど使い切っちゃったからなぁ。また今度、買いに来ようかなぁ。と思っていたら、先生が買ってくれた。大量に。アメちゃんや、先生お勧めのキャラメルなるお菓子も大量に買ってくれた。


 一抱えある紙袋いっぱいのお菓子。それを自分の部屋のキッチンの棚に並べ、腕を組む。うむむ……。今日は先生の魔道具を買いに行ったはずなのに……。どうしてこうなった? ウルペスさんは、先生がくれるって物はなるべくもらってあげてって言ってたけど、流石にこれは……。でも、お断りしようとしたら、先生、見るからにしょんぼりしちゃってたし……。


 先生と一緒の買い物は、なるべく避けた方が良いのかなぁ? でも、今日はとっても楽しかったから、また先生と一緒に商業区でお店を見て歩きたい。う~ん……。あ! 先生にお礼、あげれば良いんだ。ウルペスさんだって、お小遣いに余裕がある時は、何かあげてって言ってたし! そうと決まれば、先生にお礼を買ってあげる貯金、略して先生貯金第二弾をしなければ!

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