謎の少女
「あんたの世界にアタシが、行くから、あんたはアタシの世界に来て生活してくれない?」
いきなり道端であった女から言われた。
一瞬こいつ何言ってるんだと思ったけど、そこには触れないでおいた。
厄介ごとは嫌いな僕、緒川渉は、その女を無視して歩き始める。
今日は明日のテスト勉強をしないといけないんだ。
こんな奴に時間を取っている暇はない。
だが女は御構い無しに僕を追いかける。
普段そんなに運動をしない僕はすぐに捕まる。そもそも逃げる気なんてないんだが。
「何なの君。さっきから意味がわからない事言わないでくれる?」
彼女はプクーっと膨れてから言った
「アタシはさっきから用件を言ってるじゃないのよ!!」
「だからそれじゃわからないって言ってるんだよ!」
「万年2位とは聞いていたけど、ここまでバカだとは思わなかったよ。」
そんな呆れ顔で言われても説得力がない。
「あのさ、僕に文句ばっか言ってるけど、意味はどうなの?自分の言っている事の、意味がちゃんとわかってるの?」
「ちょっと!文句言ってんのはあんたでしょ!アタシは本当の事言ってるのよ!」
そう言って僕の手を引き、走り始めた
「うお!ちょっとなんだよっ!放せよ!」
「ヤダ。アタシはあんたと入れ替わるって決めたの。」
入れ替わる…??本当にこの人は何が言いたいんだか…
「さ!これに乗りな!」
「乗りなって言われても…」
目の前にあるのはなぜか僕の部屋の椅子。
どうやって持ってきたんだ?泥棒なのか?
どうせすぐ飽きる子どもの遊びだろうし僕はしょうがなく椅子に近づく
ただ…こいつはどう見ても10代後半。ちなみに僕は15歳の中3で、今年受験生なんだ。
こんな遊びに暇は取りたくないけど、心の底のどこかで、こいつの言葉に期待を持っていたのだろう。
「はぁ……」
僕はため息をつきながら椅子に腰をかける。
後々考えると…ここで乗り、この女が僕を押したら…ここは坂道だ。
確実に俺はご愁傷様になってしまうだろう。
その恐れていた事をこの女はやる。
「そぉーれ☆あんたも向こうで楽しむんだよ☆」
そう言いながら満面の笑みで僕を見送る。
正確に言えば椅子に座った僕を坂の上から押した。
「うっうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
向こうってどこだよ!!あの世かよ!!
俺は意識を手放してしまったのは、叫んで酸素が足りなくなったくらいの時だった。