いつかの夜
以下の内容に注意してください
・初投稿作品
・文章稚拙
・さえない主人公が異世界に転生!?とかそんな感じではない
・作者の語彙力が貧弱
・更新遅め(急ぎますが)
・時々打ち間違いとかあるかもしれない
以上の内容に気にくわぬものが3つくらいあったらブラウザバックをおすすめします
暗殺者は多くのモノを失ってきた。そして暗殺者は嘆きや慟哭を憎悪していた。それでも暗殺者は殺めることをやめなかった。暗殺者は名をワルサーといった。
◆◆◆◆◆◆
21年前
彼はアルドミア大陸の港街に住んでいた。
決して裕福な家ではなかったが、収入の安定した一般的な家族の長男として生まれた。
父と母と、それから2つ下の弟がいた。
父は街の治安維持隊の事務を、母は家事を、ワルサーは弟の面倒を見て暮らしていた。
当時ワルサーは5歳で元気いっぱいだった。
彼の住む国カルティアは治安がよい国だったので治安維持隊は『国家公認の給料泥棒』なんて呼ばれるほど平和だった。
そんなある夜のこと、ワルサーは大きな物音で目が覚めた。
起き上がって窓から外を見ると、街が真っ赤に燃えていた。
「なんだ・・・これ・・・」
ワルサーは突然のことに驚いたが、母は冷静そのもので、街の様子を見てすぐに弟を起こして逃げる準備をし始めた。
「ほら!ワルサーも早く!ここで死にたいの!」
母に連れられて家を出た。
母が弟をおぶっているので軽いものは小さなリュックに入れてワルサーにもたせた。
家を出ると皆混乱していた。
アダムはこの時の光景を21年たっても忘れることができなかった。
ある者は娘を助けると言って灯油をかぶって燃えている家の中に入っていき、またある者は水をよこせと家族を刺している。
地獄。
そう呼ぶのにこれほど相応しい光景はあるまい。
ここで死ぬのだろうと悟った。
天を仰ぐといつもなら無数の星が輝く空も、紅く染まって黒煙が星たちを隠している。
「ガッ―――」
なんだろうと思いふりかえる。
隣の家のお兄さんが母をレンガで殴っていた。
おぶられている弟も。
「おい!助けてくれよッ!!」
何でこの人は僕の母さんを殴っているのだろう。
もう死んでるじゃないか。
「おい!おい!頼むよ!!」
自分の殺めた死体に助けを求めている。
気でも狂ったのだろうか。
もう、どうでもいい。
自分もこいつも誰も彼も、すぐに死ぬのだから。
「おい!助けてくれよ!!」
男が僕に気づいた。
「な、なぁ、坊主。いつも一緒に遊んであげたよなッ!だから!今度は俺を助けて欲しい!!」
男が血のついたレンガを持って近づいてくる。
「俺が生きるために!死ッ―――」
急に男の両腕の途中からが消えた。
「ヴぁぁああぁぁああああああぁ」
足元を見るとレンガを握った2本の腕が落ちている。
そしてもう一度おやじのほうを向くと、口から血を吐いて腹から棒が出ていた。
突然のことに声が出ない。
夜に目が覚めたかと思えば街が燃えていて、逃げたら近所のお兄さんに家族を殺され、自分も殺されそうになったら今度はお兄さんの方が死んでいる。
もうわけがわからない。
「大丈夫かい、坊や」
お兄さんだったモノの後ろから誰かが声をかけてきた。
手には槍を持ち、全身が血まみれの女性が声をかけている。
しかし女性に怪我はなく、流暢に話しているので、どうやら自分の血ではないらしい。
「突然だけど、ひとつ尋ねる。坊やの街は見ての通り、もうダメだ。坊やは私が見つけた生存者でも希少な気の狂っていない子供だ。助けたい。そこで私についてきて生きるか、街と同じになるか。どっちがいい?」
ここで死ぬはずだった自分を助けてくれた恩人と見ていいのだろうか。
だとしたら助けていただいたのだからここで死ぬわけにはいかない。
それ以前に、チャンスがあるなら幸せを奪ったこの炎の原因を突き止めたい。
「もっとも、助ける見返りに私の下で仕事をしてもらおうと思っている」
そんなことは些細なことだ。
「・・・僕を、助けてください」
「護身用だ、もっときな」
女性はナイフを渡して付いてくるように行った。
こうしてワルサーは師と出会った。
◆◆◆◆◆◆
港から小さな帆船を使い二人で町から脱出した。
「手際とか、助けるのを子供だけに絞るとか、あなたにはこの町があらかじめこうなることがわかっているように感じられるのですが・・・」
女性は町の方を一瞥して答える。
「ツァスタバだ」
「?」
「私の名だよ。確かに解っていたさ」
女性は答える。落ち着いた、深海のような声だった。
「私はある男を追っていた。タルナードという魔術師だ」
魔術師・・・魔術を使う者。家族に魔術の素養のある人はいなかったけど小規模なモノなら使える人も珍しくない。向かいの家のおばあさんも使えていた。
「彼は決してすごい魔術師ではなかったんだが、たまたまとある魔導書を盗み出すことに成功した。」
魔導書?魔術の教科書のようなものだろうか?
「そして懸賞がかけられた。だから彼の首を持ち帰ろうとしたんだが、あと一歩のところでしくじってしまってね。私が投げた槍に感ずいて避けたんだ。胸を狙ったんだが下腹部に刺さって・・・まぁ結果的には死んだんだが、その前に魔術を行使した。その魔術が自身の発火。業火が彼からでて燃え広がった。」
「・・・」
「結論を言うとこの禍は私の招いたということになるのか」
「・・・でも。それでも。あなたは僕を救ってくれた・・・」
「君は優しいのだね。私のせいで何もかもを失ったのに私に感謝するのか?」
「悪いのはあなたの追っていた奴です・・・」
せっかく生き残ったのだから。助けてくれたこの人の下で働こう。奪われたと思うよりは助けられたと思う方が救われるではないか。
「貴方のために仕えます。僕を助けてくれたあなたに仕えさせてください」
この人のために。恩人のために。
「ああ。そのために連れてきたのだとも」
少年とその師は夜明けに別の港に着いた。