第二七話 米軍反攻開始(後編)
皆さんお久しぶりですV号戦車です....。
すっかりこの二年ほったらかしてしまいましたが....。
今一度連載を再開したいと思います。
今後もよろしくお願いします。
1940年5月27日午前11時09分
ポートモレスビー沖東約110km
大日本帝国海軍太平洋方面艦隊第一機動艦隊旗艦
天城型空母一番艦「天城」艦橋
「迎撃は今のところ順調ですね。」
古村啓蔵少将は腕時計を見ながら事務的な口調で言った。
「うむ。このままいけば無事に宇垣さんも目標に到達できそうだな。」
小沢治三郎中将は彼の言葉に同調しつつ目の前に広がる大海原を睨みつけていた。
「ポートモレスビーまではここから何時間くらいかかると思う?」
「そうですね。航空機ならすぐでしょうがこの大きな鉄の塊ならまあ少なくとも1日はかかるでしょう。」
「安達閣下を救い出せると思うかね。」
「かなりギリギリでしょう。先ほど入った偵察機の報告ではすでに米豪連合軍は既にポートモレスビー市街地の奥深くまで進撃しているようです。上陸時の攻撃による手痛い被害に加え、そもそもの戦力差がありすぎます。そもそもポートモレスビーという要衝を防衛するのには第四十八軍だけでは少なすぎたのでは?バタビアの第三十二軍なりバリの中川師団でも増援で呼ぶべきでした。」
「それは確かにあるな。しかも今や最前線はフィジーやアラスカ、果てはアフリカまで広がっている。明らかにこれは我が軍には過重労働すぎる。いくらシンガポールに南方総軍司令部があったって東京に届き裁可が下るには少なくとも七日はかかるだろう。まさに戦線拡大の弊害だな。」
そう言い小沢は深くため息をついて再び大海原に意識を戻した。
「そういえば統戦本では着々とマダガスカル侵攻作戦が進行しているそうです。なんでも今大戦で初めての連合国軍共同の大規模上陸作戦を決行するとか。」
「恐らくは来たるべきフランス上陸に向けての予行演習的位置づけだろう。何しろあそこは本土並み、いや本土以上に要塞化された島だ。あそこから飛び立つ爆撃隊や潜水艦がインド洋の制海権を脅かしているのも恐らく作戦の根拠だ。それさえなければあの島は設備を破壊して包囲状態のままでいい筈だからな。」
「まるで何時ぞやのウラジオストクですね。兵学校時代授業で何度も聞きましたよあれは。」
古村はそう言うと途端に目を輝かせた。
「あああれか。私も同じだよ。あの戦いは陸の乃木中将、海の東郷大将あってのものだった。あのまま攻め込んでいたらわが軍は恐らく負けていただろうな。まあそれはいい、それより我々も後世まで語り継がれるような戦いをしようじゃないか。」
「そうですね。」
「現在の状況をもう一度整理しよう。」
「はっ。現在我が方の迎撃隊は一路南西の敵攻撃隊に向かって接近中。会敵場所は恐らくここかと。」
古村は地図上のある地点を指した。
「うむ、そこなら何かあってもすぐ戻ってこられるな。」
「はい。あとは東の敵空母群ですが..いくつかの情報を照らし合わせた結果こちらが主力と思われます。先ほどの敵が合同攻撃隊だったらよいのですが...」
「そうでなければ我々は時間差攻撃を受けていて...あとおそらく三回の波状攻撃が待ってるということになる。考えたくもないな。」
小沢はそういうとコーヒーを求めた。
「はい。撃墜した敵機数や搭載機数を考えれば。電探には今のところ反応はないそうですが...厳重警戒を続けます。」
「ああ。あと一番怖いのは潜水艦だ。恐らく我々のケツにしっかりへばりついて今か今かと時機を窺っているだろうな。」
「敵攻撃隊の迎撃中や隊形変更中に打ち込まれたら流石にひとたまりもありません。今一度偵察機を放ち仮の準備をさせては?」
「いや、今の空では偵察機が撃墜されかねない。目視と電探だけにしよう。」
「分かりました。」
「とにかく...宇垣さんが着くまでの辛抱だ。それまで平穏を祈ろう。」
「閣下らしくないですね。最後に神頼みとは。」
「神にでもすがりつきたい気分ってことだよ。」
しかし神はそう簡単に彼らに平穏を与えようとはしなかった。
同時刻
第一機動艦隊より南約10km地点水深70m
サーゴ級潜水艦「ソードフィッシュ」
「さてと....ハルゼー閣下から指令が届いた。攻撃を開始せよとのことだ。エンジン始動準備にかかれ。」
そう言うとチェスター・C・スミス艦長はおもむろに胸ポケットの家族の写真に手をかざした。
「はっ。」
副艦長がそう言うと鈍い音が館内に響いたと同時にソードフィッシュはゆっくりと前に進みだした。
「艦長いかがなされますか。」
「とりあえずこのまま北に進路をとってひとまず敵艦隊から5kmの地点で待機。味方が到達し次第攻撃準備に入り3kmまで接近して雷撃を仕掛ける。」
「しかし敵空母は恐らく戦艦や重巡で囲まれていて攻撃は厳しいのでは?」
「いや目的はあくまで敵防空陣形の切り崩しだ。我々以外にも3隻が待機している。彼らと合同で仕掛ければ必ずスキができる。あとは航空部隊に任せよう。」
「了解しました。」
「決して見つかってはいかんからな。」
そう言ってスミスは深く椅子に座りなおして沈黙に入った。
午前11時36分
第一機動艦隊から東約6km上空
結論から言うとフレッチャー艦隊の第二次攻撃隊は迎撃隊を突破。
35機近くが到達したがまだ何も知る由のなかった彼らが密集陣形を敷いているのをみて松田少将はすぐさま弾幕射撃と零式弾で応戦。結果として加賀が至近弾で外殻に傷がつき、飛龍が回避した魚雷が駆逐艦に命中して1隻が沈没しただけという極めて軽微な損害に過ぎなかった。迎撃隊は8機余りを喪失。敵攻撃隊殲滅後すぐに着艦して補給を受けたものの時間が足らず、迎撃は一段階しか行えないほど近距離ですることになった。そして先ほどから凄まじい量を相手に奮戦し続けている200機近くの迎撃隊にも疲労の色が色濃く見えていた。
「流石に堪えるな...。こう何回も来られると....。」
進藤三郎少佐はそう言い小さく伸びをした。
『進藤さんでもやっぱり疲れは溜まるんですか?自分はまだまだいけますよ。』
坂井三郎飛曹長の能天気な声が無線機を通じて操縦席を満たした。
「馬鹿者!!その気の緩みがお前の欠点だ!!次相手にするのは敵本隊だ。ヘルキャットがわんさか来るぞ!!」
『す、すいません!!』
と、その時無線に前方を行く機から連絡が入った。
『前方の我々より低高度の地点に敵攻撃隊を発見。これより迎撃位置に就く。』
「了解した。全員よく聞け、進藤だ。ここで一機でも多く敵機を落とさねば次の蒼龍を生むことになる。それだけは絶対避けねばならん。一撃離脱でいく。全員配置につけ!!!」
『「はっ!!!!!!!!」』
「行くぞ坂井。」
『自分が先導しますよ。』
「ふっ、この小生意気が....」
そう言って進藤は一気にレバーを引き高度を上げた。
「報告します。迎撃隊敵攻撃隊と会敵。数が非常に多く苦戦しているようです。」
「分かった。」
小沢は制帽を深く被り直した。
「至急同じ連絡を長門にまわせ。」
「はっ。」
伝令は再び走って消えた。
「古村....雲はあるか。」
「いえ艦隊直上にはありませんよ長官。大丈夫です、ハワイのようなことは起こりませんから。」
「だといいがな...。」
その時黒い点が前方の雲からポツポツと出始めた。
「敵攻撃隊を視認!!至急対空戦闘用意!!」
「長門より入電。陣形このまま、戦艦群が盾となるそうです。」
「うむ。」
小沢の前方の黒い点は今や50以上に膨らんでいた。
「もうよい。迎撃隊に退避命令。」
「はっ!!」
すぐに黒い点のいくつかは急激に方向を変えた。
「敵は??」
航空参謀が観測手に尋ねた。
「はい。今のところ密集せず高度がかなり高いですね....。あれでは戦艦の射角では届きません。」
「やはりすでに情報は伝わっていたか..。」
「はい、まもなく射程距離に入ります。」
そう言った古村の喉からゴクリと唾をのむ音が聞こえたのを艦橋の全員が聞き逃さなかった。
「弾幕射撃まで、秒読み開始。10、9、8、.....」
10秒間艦橋は真空のような静寂に包まれた......いや、筈だった。
「4、3...」
その時陣形の一番右を対応していた摩耶から大きな水柱が二本上がった。
「どうした!!!」
通信参謀が大声で尋ねた。
「はい!!」
その時、黒煙を挙げている摩耶から発光信号が届いた。
「潜水艦の雷撃、右舷中央と後方に一発ずつ被弾。現在注水して傾斜を制御中だそうです。」
「これはまずいぞ...。」
古村の額に汗が一筋流れた。
そして再び、陣形後方から水柱が上がった。
「蘭月が被弾!!左舷に大きな穴が確認できます!!」
「うろたえるな!!!各員対潜警戒を密にしつつ前方の敵攻撃隊に集中しろ!!」
航空参謀が吠えると同時に各艦を様々な連絡が行き交い始めた。
その時、前方の戦艦群から一斉に零式弾が放たれ、何秒か経って大きな火球が空中にいくつも生まれた。
「どうだ???やったか???」
「確認中です...。敵雷撃隊の殲滅に成功しましたが艦爆隊はまだ生きています。20機以上確認できます。」
観測手の声には悲壮感が含まれていた。
艦爆隊がもうすぐ艦隊上空に到達することは小沢の目でもはっきりと分かった。
「あいつらを早く撃ち落とせ!!急げ!!」
いつもは冷静な古村が珍しく吠えてそれに呼応するかのように対空砲火がますます激しさが増した。
やがて艦爆隊は天城、土佐、雲龍の上で降下態勢に入った。
「全速で回避だ急げ!!」
艦長が叫び大きく艦体が揺れて右に曲がり始めた。
アベンジャーが三機向かってくるのを小沢は首を曲げてまばたきもせず見続けていた。
そしてそのうちの一機が被弾し爆散、二機が何秒か時間をおいて両翼から爆弾を二個ずつ落とすのも小沢は一つも見逃さず見ていた。
「敵機爆弾投下!!!艦橋に当たります!!!!」
観測手の声が艦橋中に響く。
「全員退避だ!!!」
「長官!急いで備えてください!!」
古村に腕を掴まれ小沢は再び現実に還った。
しかしその目は今にも艦橋に落ちてきてようとしている爆弾に張り付いていた。
まるでその黒い塗装は小沢を死という巨大な闇へと引きずりこもうとしているようだった。
同時刻
第一艦隊第一戦隊旗艦
長門級戦艦一番艦「長門」艦橋
前方の敵航空機に集中していた第一戦隊指揮官松田千秋少将の意識をそこから解放したのはくぐもった爆発音と後に続いた強烈な破裂音だった。
「なんだ!今のは!!」
松田は双眼鏡を天城がいるはずの右に向けた。
松田の目に入ったのは甲板前方と主艦橋周辺から大きく黒煙をあげる天城だった。
「何だと...天城が....。」
松田は一瞬思考停止になったがすぐさま主要幕僚の安否確認と被害把握を急ぐよう言った。
その直後再び爆音が耳に刺さった。
「土佐が被弾!!甲板中央部に穴を確認しました!!」
「くそっ!やり残したのか...。」
松田は強く拳を握り締めた。
「どうされますか少将?」
参謀が尋ねた。
「とりあえず被弾した二隻を取り囲むように陣形を変更。各艦に伝えろ。長門、陸奥は電探が捉えた敵第二波に備え前方に位置し敵を先に叩く。迎撃隊には?」
「はっ。先ほど連絡しました。現在燃料のない機、弾薬切れの機を除いて会敵地点に向かっているそうです。」
「分かった。」
その後は被害を出すことなく、敵攻撃隊がいなくなり一段落ついたところで報告が松田のもとに入ってきた。
「読んでくれ。」
「はっ。まず潜水艦の雷撃により摩耶が右舷に二本の魚雷を受け現在注水により傾斜は回復しましたが恐らく中破相当と思われます。次に蘭月は沈没。救助の結果艦長以下八割の回収に成功しました。」
「よし、摩耶は陣形の中央に移動させよう。」
「はっ。そして爆撃を受けた天城、土佐両艦ですが天城は甲板前部と中央に被弾。土佐は甲板中央に二発被弾。現在弾薬庫への引火を防ぐべく消火作業中だそうです。どちらも艦載機の発着艦不能だそうです。」
「分かった。それで小沢中将以下幕僚の安否は?」
「はい。長官は.....。」
午前11時52分
天城級空母二番艦「赤城」甲板
「くそっ.....腕の傷がまだ完全に止血できていなかったか。」
半壊した天城艦橋からここ赤城に旗艦機能を移した古村は包帯でぐるぐる巻きにされた右腕を見ながら呟いた。
「いかがですか参謀長、調子は?」
艦長の長谷川喜一大佐が丁度巡回からもどり古村に容体を聞いた。
「ああ長谷川か。まあまあってとこだな。」
「なら良かったです。先ほど全ての設備の赤城への移譲が完了しました。」
「分かった。とりあえずここではなんだ.....艦橋まで行こう。」
「はい。」
艦橋
「この戦い....やはりかなり厳しいものになることはわかっていたつもりですが....こうも大きな損害を被るとは....正直予想外でした。」
長谷川は設備の移譲で埃っぽくなっている艦橋で軽く咳をしながら言った。
「ああ。二隻の空母が使い物にならなくなり迎撃隊の未帰還機も二十機以上になっている。流石に厳しいな。」
「はい。おまけに通信参謀は戦死、その他の幕僚にも多くの死傷者が出ています。」
「物的資源は容易に回復可能だが人的資源の損害はそう簡単にはいかん。まして艦隊の幕僚級などそう簡単には見つかるまい。」
陣形中央に位置をとった天城を見つめながら言った。
「これでは本来の目的であるポートモレスビーの陸軍支援は難しいのでh..『いや、意地でもそれはやり抜くぞ。』」
会話に割り込んできたその声に二人は目を見開き後ろを振り返った。
「長官!!!!もう大丈夫なんですか!!」
古村はそう言って下士官に介抱してもらっている小沢に走り寄った。
「ああなんとかな。幸いなことに太い血管は避けてくれたらしい。」
小沢の言うことは本当だった。
あの時直前で古村に床に引き倒された小沢だったがその直後に爆弾が艦橋すぐ下の甲板に直撃。小沢の立っていた場所は爆風によって硝子や爆弾の破片で一杯になった。
咄嗟に倒されたおかげで大部分は回避した小沢だったが、何個かの破片が左半身に刺さったせいで大量出血の恐れがあったが刺さった場所が動脈周辺でなかったことや迅速な衛生班の働きによって致命傷は免れたのだった。
「長官しかし.....全員この度の戦いで疲弊しています。このまま出撃しても敵制空権の下では最悪の結果もあり得ます。」
長谷川は艦隊員全員の気持ちを代弁して言った。
「確かにな。まずは目の前の敵を倒してからだろう。」
「はい。」
「だが....もうすぐ彼らが敵艦隊に到着する。それさえ成功すれば我々は休養たっぷりでポートモレスビーに堂々と殴り込みできる。」
「はい?彼らとは?」
何も知らない長谷川の脳内が疑問に満たされた。
「まもなくとっておきの仕掛けが炸裂する。まあ見ておれ。」
そういう小沢の口元が微かに緩んだのを古村は見逃さなかった。
午前12時16分
小沢艦隊から西に約72km
エセックス級空母「イントレピッド」艦橋
「つまり....我々は全所属機の6割近くを失ったと?」
フレッチャーの目には怒りを通り越して何かしらの諦念が浮かんでいた。
「はい...。第一次、第二次共に本隊の生贄のようなものです。しかもその損耗率は補用機も併せての結果です。実質8割近くかと。」
参謀長も彼と同じ目をして言った。
「それで本隊は?」
「はい。あちらはあちらでかなりの損耗率らしく、目標だった敵空母の一部無力化と雷撃を成功させたことからこれからシドニーに向かうそうです。」
「確かにそれは達成した。また敵航空戦力も幾分かは叩けたしラバウルも抑え込んだ。だが敵にはまだ強大な洋上戦力が存在する。過小評価は驕りだと思うがね。」
「ですのでハルゼー閣下は本隊の航空戦力をこちらに移して敵がポートモレスビーに近づいたところを再び攻撃してくれとのことです。」
「なるほど....返信しておいてくれ。『空きは腐るほどある』とな。」
「分かりました。」
そう言って前を向いたフレッチャーの視線の先に二つの黒い点が浮かんでいるのが見えた。
「おいあれはなんだ?」
「えっ?味方は未だ到達していません。」
フレッチャーの言葉を聞いて艦橋の全員が同じ方向を凝視した。
「偵察機は?」
「現在は飛んでいません。」
「おいまさか....あれは..」
フレッチャーが言いかけたその時二つの黒い点が火を噴いたのが見えた。
同時刻
「大和」艦橋
「一番、二番砲塔撃てえ!!」
砲術長の合図を境に大和、そして一拍遅れて武蔵の前方の51センチ三連装砲が火を噴いた。
(これこそがまさしく海軍の真髄では...あるな。)
宇垣は望遠鏡で遠くの敵空母を見ながらそう思った。
「弾道観測急げ!!!」
数十秒後、砲弾が敵空母に着弾した。
「観測機より入電。敵空母四隻中二隻に命中。甲板上で火災発生を確認。残り二隻が回避運動を始めました。」
「了解。目標敵残存空母。角度修正と同時に各個射撃に移れ。」
「しかし小沢の奴も思い切った手に出たものだ。」
宇垣は小沢の命令を思い出していた。
小沢の命令、それは敵艦隊への主力戦艦をもった直接攻撃だった。
南西の敵艦隊の攻撃隊は十分対処、撃滅可能と見た小沢は大和、武蔵を先行させ確認された敵艦隊の座標に向かわせた。それは艦載機の殆どを無力化できると踏んだ小沢の賭けだった。万が一敵が戦力を温存していた場合、航空支援のない二隻は間違いなく沈められる、しかし賭けに勝てば一気に戦況が逆転する可能性が小沢を決断に導いた。宇垣はこの命令を必ず遂行すべくひたすらに西進し続けついに所在を掴んだのである。
「第二射準備完了!!」
「撃て!!」
再び主砲が唸り艦橋が微かに振動した。
「報告は?」
「はっ。敵空母全艦に着弾を確認。一隻は大火災発生、もう一隻は落伍したようです。」
「うむ。順調だな。」
宇垣の目にも確かに炎上して傾斜している空母が見えた。
午後2時23分
「エセックス」艦橋
「つまり我々はジャップの空母2隻に傷をつけたが、4席の空母と幾多の優秀な戦士たちを失った。そういうことか?」
「はい閣下。幸いフレッチャーは駆逐艦で脱出し逃げ切ったそうですがポートモレスビーの支援は不可能になりました。」
「くそが!!奴らにまんまとはめられよって!!」
ハルゼーは静かに毒づきそして怒っていた。
「それで?カーニー?どうするべきかね?」
「はい。ポートダーウィン、パースの飛行場は未だ健在ですが機数が足りません。しかしポートモレスビーの大部分は既に我々のもの。とりあえずシドニーまで撤退し本国からの増援を待ちましょう。」
「ああわかった。」
ハルゼーはそう言うと静かに目を閉じたが暫くして一言呟いた。
「今回はこれで済んだが...すでに貴様の尻尾は掴んだぞオザワ....。また近いうちに会おう。」
そう小さく呟いてハルゼーはほくそ笑んだ。
大艦隊と帝国海軍の総力をかけた戦いがついに始まった.....。
ご意見ご感想等お待ちしています。




