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第二一話 デッド・オア・アライブ(前編)

 やっと二十話突破しましたっ!!

これからも一層この小説をたくさんの方に読んでいただけるよう、

精一杯頑張っていきたいと思っています。

また、内容もこれから暫くは、北アフリカ戦線に密着していくと思います。




 1940年2月13日


 ドイツ領北西リビア ミスラタ郊外


 ドイツ帝国軍北アフリカ方面軍所属第9戦車師団司令部







 第9戦車師団は壊滅の危機に陥っていた。14日前に始まったアメリカ軍の陽動攻撃、更にその2日後に始まったイタリア軍の大規模侵攻がドイツ軍を揺さぶり、それに加えアメリカ軍の防衛線突破とトリポリ上陸が第9戦車師団を半包囲状態に追い込んだ。(後は砂漠しかないため)これに対し第9戦車師団と同様の事態の第44突撃擲弾兵師団は包囲網を突破するために戦車と歩兵で最も防御の薄い地点に攻撃をかけた。しかし、これは罠だった。攻撃をかけた途端、地平線の彼方から60㎏爆弾満載のB17とF6Fが彼ら目指して突撃してきたのである。結果、攻撃は失敗。両師団は全戦力の4割を失いじりじりと追いつめられていた。


「師団長、第3中隊が破られました。現在第4中隊から2分隊廻しています。」


「そうか....」

師団長はこれまでの敗戦が祟ってか疲労の色が濃い。


「後第44師団司令部との連絡が途絶えました...恐らく放棄したか、もしくは..」


「言わなくてもいい。それくらい分かっておる。」

師団長はテントの外に出る。


「師団長っ!!危険です!!」

参謀長が警告する。


「大丈夫だ。」

そう言ってテントの外に出ると....地獄だった。


無残な戦車が地平線の彼方に広がり、そして歩兵たちが司令部に従って防衛線を大急ぎで造成していた。


「...もう持たないかもしれないな。」

そう言いながら師団長は中に入って参謀長に言った。


「参謀長。直ちに敵陣営に軍使を送れ。降伏しよう。」

幕僚達は一瞬大きく目を見開いたが直ぐに立ち直り小さく頷いた。


「...残念だ。」

師団長は呟いた。







 同時刻 スルト


 ドイツ帝国軍北アフリカ方面軍臨時司令部







 この司令部も先日の米軍の攻撃から逃れるため一路トリポリに向かっていた。

しかしその目的は潰えた。何故ならそれから5日後にトリポリにイタリア・フランス艦隊・イタリア軍ゲリラの支援の下で米軍2個師団が強襲上陸してきたのである。当然ながら現地にいた第14突撃擲弾兵師団は艦砲射撃とその後の戦車と歩兵の襲来によって総崩れ。師団長は最後に「全員散り散りとなって司令部と合流しろ。健闘を祈る。」と言って無線は切れた。既に6割近い戦力を失っていた第14突撃擲弾兵師団は一つも組織的抵抗も出来ぬまま投降するもの、

ゲリラ化したもの、司令部へと向かうもの、そして無残に殺されたものの四種類に分かれた。だがそれよりも遥かに大きい不安が司令部を覆っていた。


「将軍。」

参謀長が言う。


「...奴の所在は?」


「..今だ掴めません。」


「...そうか。」

そういうとロンメルは深く溜息をつき椅子に座った。


「現在健在の部隊は?」


「はっ。米軍方面では第8機甲軍と第221突撃擲弾兵師団、第7突撃擲弾兵師団と他3個師団、それに第445統合戦闘航空団が防衛援護中です。」

参謀長が部隊一覧の中から安否が確認されたものを抜粋して言っていく。


「イタリア軍方面では第28機甲師団と第114突撃擲弾兵師団と第88機動化狙撃兵師団と他2個師団と1個戦車大隊、ちなみにその内の第58機甲師団はトリポリで米軍2個師団と戦闘中。空軍では第403統合戦闘航空団と第876戦略爆撃航空団が攻撃支援を行っています。」


「それだけしかいないのか?」


「はい。このままだと数で押し切られるのは時間の問題と言っても過言ではありません。」


「うーむ...どうするべきか..」


「...彼がいれば別かもしれません。」


「リヒトホーヘンか...」


「トリポリ上陸前の無線連絡以来連絡は途絶え、音信不通。」


「おまけに守っていた第14突撃擲弾兵師団は壊滅。敵の捕虜になったか、戦死したか...」

参謀長の言ったことにロンメルが反応する。


「それはない。奴は筋金入りのドイツ軍人だ。降伏もしなければ自決もしないだろ。第58機甲師団が救出してくれればいいが...その前に援軍を送らないとだめだな。」


「現在フムスの街を守っている第87戦車師団第4戦車大隊を廻しましょう。」


「その部隊が一番近いな。それにしよう。」


「..もう...祈るしかないですね。」


「..ああ。」

二人はそれ以降黙り込んで話さなくなった。







 同時刻 トリポリ市内







 このトリポリ市内、今再び激戦のにおいが立ち込めていた。

壊滅した第14突撃擲弾兵師団、しかしその撤退援護に即座に近くの幹線道路にいた第58機甲師団がトリポリ市内に突入。

上陸した米軍2個師団相手に善戦していたが、少しずつ押されていっていた。だがこの間にドイツ軍が獲得したものは大きかった。

一気に市内に突入したため、米軍の反撃も受けることなくドイツ軍は敵の捕虜収容所に到達。1個大隊程度の自軍兵を解放し撤退したのである。

しかし、トリポリから脱出出来なかった兵士たちもいた。

そして..........その中にはリヒトホーヘンもいた。


「糞っ!!軍曹っ!!」

MP34を乱射しながら一等兵が近づいてくる。


「どうしたっ!!」


「南の防衛線が破られました!!撤退です!!」


「よし、全員俺に付いてこい!!」

軍曹を先頭に15人程度が一斉に走り出した。


「これでも喰らえっ!!」


「ぐわっ!!」

振り向き様に軍曹がルガーを一発敵兵にぶち込む。




 ~1時間後~


 トリポリ市内のとあるアパート




『「はあ...はあ....」』

軍曹の部隊は命からがら何とか合流地点まで逃げてきた。


「おう、大丈夫か。」

別の防衛線を率いていた大尉が声をかける。


「其方はどうでした?」

軍曹が問う。


「途中までは良かったんだが奴らグレイハウンドを出して来やがった。お陰で30人中16人戦死。散々だったよ。そういえば大佐に報告したか?」


「いえ、まだ。」


「急いだ方がいい。敵はもうすぐそこらしいからな。」


「はい。」

軍曹は2階への階段を上り部屋のドアをノックした。


『入れ。』


「はっ。」

ドアを開けると何人かの左官とリヒトホーヘンが協議していた。


「そうすると南西のルートも塞がれたということですか....」


「ああ若造。今頃奴らは俺達を包囲しようと南東にも回り込もうとしてやがる。」

弾切れのMP40を持った少佐が言う。


「俺たちは奴らの師団主力とぶつかって、文字通り『壊滅』だ。」

マウザーKar98kライフルに弾を込めながら別の部隊の指揮官だった中佐が言う。


「なら今すぐにでも脱出しなければいけませんね...」


「ああ。どうする?この位置が割れれば奴らもすぐ爆撃して周囲500m灰に変わるぞ。」


「待ってください....ん?軍曹どうかしたか?」

リヒトホーヘンが軍曹に用件を尋ねる。


「はっ、北西の防衛線は崩壊しました。生存者は恐らく41名中15名程度です。」


「....分かった。」


「では失礼しまs..『失礼します大佐。』」

軍曹が言い終わる前に通信兵が突然部屋に入ってきた。


「何だ、騒がしいぞ。」


「今スルトに連絡しました。ロンメル将軍も相当安堵していたようですよ大佐、貴方が生き残ってたのが。」


「俺がそんな重宝されてるとは.....」

リヒトホーヘンは少し驚いた。


「それで....司令部は何だと?」

一緒に部屋にいた軍曹が尋ねた。


「直ぐに救援部隊を送るそうです。場所は....ここです。」

通信兵は地図を指差した。


『「何!?」』

その場所に部屋の全員が驚いた。


「....流石ロンメル閣下だ。運のいいことにまだ包囲されていない南東を指定するとは。」

少佐は顎に手を置きながら言った。


「一丁やりますかっ.....」

中佐はマウザーのボルトに弾を込めて言った。


「で?どうされますか大佐。作戦は?」

軍曹が言った。


「うーん.....」

その時、リヒトホーヘンの眼に窓の外で未だ炎が燻っている破壊された戦車の残骸が写った。


「これだっ!!」


『「?」』

部屋にいた全員が首を傾げた。







 ~10時間後~







 10時間前リヒトホーヘンが閃いた作戦はこうだった。

まず日が落ちるのをじっと待ち、落ちると同時に行動を開始。各地に斥候を送り敵部隊の動向・位置を確認。

深夜になるとそれを避けつつ敵の装甲車、または戦車が随伴している警備部隊を襲い、装甲車などを奪い再び合流、戦車で護衛して全力疾走で回収地点まで脱出するものだった。そして戦いは始まった。


「ふあぁ~。どうだ?ジャック。腰抜けのクライツは見えたか?」

戦車のハッチから戦車長が共に警備する伍長に尋ねた。


「いえ。何も。」


「そうか.....なら俺は寝るっ!!」

そういうと戦車長はハッチの中に入って行った。


「ちょっとっ!!....全く、緊張感のかけらもない連中だ。」

伍長は溜息をつきつつ陣地のほうに歩き出した。


「おい、グライス、ポーン。お前らも気を...二人とも何処だ?」

伍長は一緒に警備していた部下二人がいない事に気付いた。


「おーい、何処だー?」

そう言いながら伍長はトンプソンの弾を込める。


「おーい、お『死ね、ヤンキーが。』」

伍長は反射的に後ろに振り返ろうとしたが、次の瞬間ナイフで伍長の首は切られ、彼の意識は途絶えた。




 ~1時間後~




「第4小隊、到着しましたっ!!」


「御苦労。行っていいぞ。」


「はっ!!」

そういうと戦車が通路から出てきて隊列に加わった。


「...ふう。これで全員揃ったな。」

リヒトホーヘンは制帽を取り汗を拭った。


実際作戦は大成功だった。

流石はドイツ軍だけあって、すべての陣地において敵に気付かれず、かつ一人も戦死者を出さずに敵戦車・装甲車を奪うことが出来た。

隊列には、グレイハウンド装甲車2両と更に最新式のM6ワシントン中戦車5両が含まれていた。


「では行きますか大佐。」


「ああ行こう。」

リヒトホーヘンはワシントン戦車の後部に乗っかり脱出作戦は始まった。







 15分後 


 トリポリ市内 アメリカ軍現地司令部







「失礼します。」


「何だ....この遅い時間に....」

現地司令部の司令官は真夜中に叩き起こされて不機嫌だった。


「戦車または装甲車の随伴している警備部隊の殆どが連絡不能です。」


「単に繋がらないだけではないのか?」


「いえ。付近の歩兵だけの警備部隊には通じるのです。また、いくつかの部隊は戦車の駆動音を聞いたと言っています。」


「確認部隊は?」


「つい先程送らせました。敵の奇襲かもしれません。」


「ふんっ、どうだか。」

そう言いながら司令官は副官にコーヒーを入れるよう電話する。


「ああそうだ。砂糖は要らんぞ。.....ミルク?それは淹れてくれ。」


(何て奴だ....後でパットン将軍に報告しないとな。)

連絡役の士官は心の中で密かにそう思った。


「私の眠りを阻害した価値があればいいけどな....」

司令官はパジャマの上から将官用のコートを着て部屋を出ていく。


3分後、二人は少し離れたところにある仮の指令室に着いた。


「諸君っ!!何か情報はあったかな?」

いきなり着くなり司令官は尊大な態度で部下たちに言い放った。


「司令、コーヒーです。」


「おう.....少しぬるいな...」


「す、済みません...」


「まあいい、で?確認はとれたのか?」

指令室が静まり返る。


「なら戻るか..『お待ちくださいっ!!』」


「何だ。」


「はあ.....はあ....大変です司令っ!!」

声をかけたのは確認に向かった部隊の隊長だった。


「何が、だ?」


「確認した所、殆どの部隊で兵たちの死体が発見されました...奴らの攻撃です。」


「何!?」

余りの衝撃に司令官は思わずコーヒーを落とした。


「おまけに戦車や装甲車が見当たらず恐らく奴らに略奪されたかと。」


「どうされますか司令?」

そう聞かれた司令官は答えた。


「奴らを追え!!全員皆殺しにするのだっ!!」


『「はっ!!」』

指令室は一気に騒がしくなった。







 果たしてリヒトホーヘンは辿り着けるのか.....。







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