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第十六話 血塗れの新年(前編)

 今回からジャンルを「戦記」から「歴史」に替えましたので、

 よろしくお願いします。

 



 1940年1月3日


 大日本帝国 東京府東京市千代田区霞が関


 首相公邸







 『「明けましてありがとうございます。」』

この日最初の大日本帝国最高戦争指導会議が開かれる首相公邸には、そうそうたる面々が揃っていた。


 大日本帝国政府


 内閣総理大臣 


 石原莞爾


 内務大臣   


 平沼騏一郎

 

 運輸・通商大臣兼中島航空機社長

 

 中島知久平


 外務大臣   


 東郷茂徳


 内大臣    


 木戸幸一


 農林大臣   


 酒井忠正


 大蔵大臣   


 櫻内幸雄


 文部大臣   


 橋田邦彦




 大日本帝国国防省


 国防大臣   


 山本五十六海軍大将


 第一国防次官 


 服部卓四郎陸軍少佐


 陸軍長官   


 梅津美治郎陸軍大将


 海軍長官   

 

 高橋伊望海軍中将


 空軍長官   


 富永恭次空軍大将


 海上護衛総隊長官(1939年7月に創隊した通商護衛任務を主とした部隊で退役軍人を中心にしていた。)


 長谷川清退役海軍大将


 帝国軍航空幕僚本部長 


 大西瀧治郎海軍中将




 大日本帝国国防省統合戦術情報部




 本部長    


 徳村剛太郎特務大佐


 副本部長   

 

 富岡定俊特務少将


 海上戦術部長 


 副本 賢一特務中佐


 陸上作戦部長 


 佐藤房信特務中佐







「諸君、今年はいよいよ戦争も本格化する。米軍の攻撃も激しくなることだろう。だが今日はいつもの重みを忘れて騒いでくれ。では諸君。乾杯!!」

 

『「乾杯!!」』

一同が乾杯し、盃を交わす。


「そういえば佐藤君は南方から戻ってきたんだな。」

山本が言う。


「そりゃないですよ大臣~。こっちは南方の事後処理と馬鹿共を押さえつけてるのに精いっぱいだったんですから....」


「で?泰馬国境地帯のフランス軍はどうなった。」

梅津が問う。


「はい。現在最初は3個師団の大兵力だったフランス軍もすっかり弱って、今や1個連隊になるかどうかってとこでしょう。

明日最後通牒を出して、明後日に攻撃を開始する予定です。」


「そうか....」


「後、連合国軍合同作戦のマダガスカル攻略作戦『盛者必衰の理』作戦も計画段階に入りました。畑閣下も計画策定に大忙しそうでした。」


「うむ。分かった。」

その時徳村が言った。


「では南方の作戦審査は佐藤に一任します。ですが、それでは不公平なので、部の中から何人か引き抜いて行かせます。」


「了解したぞ、徳村~。」

おどけた調子で佐藤が言う。


その後、宴会は進みいつの間にか会議に移行していた。


「国内の食糧生産は順調です。このままいけば今年は安泰ですね。」

酒井は言った。


「だが今後危なくなる可能性もあるな....念のため配給庁の設置を急ぐように。」


「はい。」


「去年の後半期のGNPは9.8%上昇しました。需要と供給のバランスもとれており、貿易も黒字で好調です。」


「大蔵省はどうですか。」


「はい。昭和15年度国家予算原案も完成。各占領地の軍票からの円切替も順調です。日中借款協定も外務省と合同で進めています。

ただ、財源確保の目処が立たなくなってきているので追加の戦争国債の発行も検討しないといけません.......」

櫻内の声が段々小さくなっていく。


「うーん....そうなると石原内閣の公約の『財政健全化』が達成出来なくなりますね...」

平沼も声を詰まらせる。


「まあ仕方ないでしょう。」

石原が言う。


『はい。』


「続いて内務省。」


「はい。」


「国家警察庁と地方警察庁を合併。帝国警察庁を設立します。さらに内務省国家治安部を分離し、国家治安庁を設立。

そして国内の暴動鎮圧専門部隊として陸軍特別警備隊を警察庁に編入。帝国治安維持特殊警備隊として新たにつくります。」


「済みません。」

山本が質問する。


「その......警察庁と国家治安庁はどのような組織なのでしょうか。」


「はい、警察庁は今まで帝都と地方中枢都市が管轄だった国家警察庁とその他の地域が管轄だった地方警察庁と統合。より迅速な部隊展開と広域捜査の重要性を考慮した結果こうなりました。また、国家治安庁は警察庁が対応できないような政治絡み、軍絡み、またテロなどの一級事件に対応する部署です。」


「分かりました。」


「では統作本から報告を。徳村君。」

石原が言った。


「は。現在我が帝国の支配領域は東はハワイ諸島、西は東インドまでです。しかしライン諸島からは毎日のように米軍の爆撃機が来ます。

更に、先日ギルバート諸島の船団が空襲を受け死傷者三百人の大惨事となりました。また、サンディエゴの海軍基地に大機動艦隊が配備されたという報告も来ています。おまけにバタビアの収容所からマッカーサー元帥が脱走してフィジー・ニューカレドニアが要塞化されているという情報も聞いています。

米軍も南米戦線に参戦したお陰でエクアドル以北が奪取できません。そのせいでパナマ運河破壊作戦も白紙。コロンビアに米軍の海軍基地が作られたそうです。」


「うーむ......通商破壊も一定の成果はだしているのだがな.....カリブ海が確保されたお陰で太平洋封鎖が出来なくなったからな....手詰まりだな。」

あの山本でさえも音を上げていた。


「はい。我々としましては明後日始まる『亜』号作戦に第二機動艦隊を廻したため、今度の第二次ライン諸島攻撃作戦、第二次『羅』号作戦には修理が終わった赤城・土佐を飛龍・天城と組ませて第一機動艦隊でやらせようと思います。」


「だが、ジザはどうする。更迭か?」


「いえ。あの失敗は我々の責任でもあります。よってこのままでいきます。」


「うむ、そうか。」

山本も納得したようだった。


「まったく四方敵ばかりですね........」

服部が言う。


「そういえば、昨日満州から電報が届きました。またソ連軍の国境侵犯があったそうです。」

梅津がまたといわんばかりに言った。


「またか......いいかげんにしてもらいたいものだな。」

石原が言った。


「私のほうも掴んだので、明日ソ連大使を呼び出して抗議します。」

東郷がまるで事務処理かのごとく言った。


「そのうちひょっとしたらソ連と戦うかもしれんな.......」

梅津が言う。


「それは困りますぞ長官。現在シベリア方面の防備はがら空き。攻め込むならまだしも守るのならカムチャツカ半島と幻京州(旧ハバロフスク州)まで下がらないといけませんしな。」


「そうなったら徹底的にやるまでです。長官。」

ソ連嫌いの副本が口を開く。


「はははっ。まあそうなったら頼むよ。」

梅津は笑いながら言った。


「そういえば、やっと雲龍型空母一番艦『雲龍』が竣工したとか。」


「はい。また呉と横須賀では二番艦『蒼龍』、三番艦『鳳龍』が建造中です。」

高橋が言った。


「それより例の計画はどうですか中島さん。」


「はい。実は発動機に重大な欠陥が見つかりまして、実戦配備は半年ほど遅れそうです.....」


「仕方があるまい....何しろあんな計画を進めれていること自体凄いもんだよ。」

大西が言った。


「そういえば、空海軍の新型戦闘機の件は?」

富岡が中島に問う。


「はい。先日決まった『鉄風』という名前で詳細計画を纏めています。」


「二式艦上戦闘機、『鉄風』か.........」

山本が呟いた。


「後アフリカ戦線は?」

石原が言う。


「はい。アフリカ戦線はドイツ軍の『サンドストーム』作戦が成功しトリポリが陥落。しかし、現在東からフランス軍とアメリカ軍が迫っているとのことです。」


「アメリカ軍の司令官は恐らくパットン将軍でしょう。稀代の戦略家です。気を付けた方がいいでしょう。」

佐藤が言った。


「分かった。現地の栗林君にも言っておこう。」


いつの間にか時刻は16時を過ぎていた。


「おっと、そろそろですか。」


「では。」

それぞれが帰宅する。


「そういえば徳村君。」

山本が帰る直前の徳村を止める。


「はい、何ですか?」


「マル5計画だが.....」


「ああ、既に承認しておきましたが......閣下も信濃級空母をもう二隻作るとはお人が悪い....」

徳村が頭を掻く。


「私はあいにく博打好きでな。」

そういうと二人も首相公邸から出ていった。







 1940年1月5日


 アリューシャン列島 ウナラスカ島南300km







 『亜』号作戦のために第二機動艦隊は集結していた。ハワイ沖海戦の教訓を実践し、一群三隻の空母任務群を編成。20kmおきに配置することで全滅を防ぎ、更に第二艦隊から重巡三隻、第一艦隊から「長門」・「相模」・「陸奥」を借り防衛につけた。


「長官。第一次攻撃隊発進準備完了しました。」

寺岡参謀長が言う。


「分かった。全艦に再度確認し、良ければ発進。第二次攻撃隊発進準備にかかれ。」


「はっ。」

参謀長が通信士に言う。


「そういえば先日サンディエゴの海軍基地から大艦隊が出航したそうですが....」


「ああ。あれは、まだ慣熟訓練の途中だろう。対外諜報局の話だと108機収容できる大型空母がもう十隻も配備されてるらしい。」


「加賀クラスが十隻ですか....米国もさすがといったところですかね。」


「確かにな。此方も各地で空母を建造する計画、マル五計画だったかな。雲龍型空母八隻・信濃級空母二隻・伊401から十隻の新型伊号潜水艦建造。

こっちもすごいが何しろ資源の輸送に手間がかかってるからな........」


「そうですね.....んっ?分かった。長官、第一次攻撃隊が発進しました。」


「よし、直ちに第二次攻撃隊の発進準備を開始せよ!!」


『「はっ!!」』

遂に1940年最初の戦いが始まろうとしていた。







 1940年1月17日 

  

 ライン諸島 クリスマス島


 クリスマス米海軍基地 第1応対室







「そういうことだ、よろしくなジョージ!!」


「ちょ、ちょっとハルゼー閣下っ!!」

そういうとドアは閉まりハルゼーは応対室を出た。


何故こんなことになっているかというと、大晦日にニミッツは5月初旬に南方戦線において連合軍の一大航空拠点ポートモレスビー攻撃をハルゼーに伝えた。

するとハルゼーは「じゃあ近くにいないとな」と新設された合衆国太平洋機動艦隊、通称「大艦隊ジャイアントフリート」を自分の独断でライン諸島に動かし、自分は旗艦「エセックス」で来航。今停泊許可を貰ったばかりだった。


「しかしあちーなぁ.......」

ハルゼーは制帽を取り汗を拭った。


「長官、こちらです。」


「おおすまんな。」

部下の持ってきた車に乗りハルゼーはエセックスへと戻っていく。


「そういえばカーニー。鈍足のワイルドキャットから変わる新型戦闘機が届いたらしいな?」


「はい、最高速度550km、航続距離は2倍。機体名は........F6F『ヘルキャット』だそうです。」


「よし、その機体でジャップをぶち殺せるな。」


「もう本当にそれだけですか長官.....」


「あっためーよカーニー!!俺はジャップを殺すために生まれ、ジャップを殺すために戦い、ジャップを殺して死ぬんだからな!!!」

ハルゼーは鼓膜が破れるくらい大きな声で言った。


「いっ!?.....はい、そうですか......」


「はははっ!!じゃあエセックスに戻るぞカーニー!!」


「その為に迎えに来たんですよ.....」

そんな会話を繰り返しながら二人は自分たちの艦へと戻って行った。







 1940年1月5日


 アメリカ合衆国 アリューシャン列島


 ウナラスカ島 ダッチハーバー







 このダッチハーバーは4か月前に第二艦隊の攻撃を受け港湾機能を失い廃墟と化していた。

しかし、ルーズベルトはこのダッチハーバーの修繕を命令。結果として2万の人々の手で僅か2か月で修繕したのである。

そしてアダック島に飛行場を建設。絶えず攻撃を続ける源田航空団を押し返しつつあった。

しかし今その防衛も第二機動艦隊と源田航空団・寺本航空団によって打ち砕かれようとしていた。


「このダッチハーバーもやっと復活したな....」

前回の戦いで屈辱的敗北を喫した基地司令官が言う。


「はい、ここがあればジャップを常に釘付けにできますからね。」

副官が言う。


「はははっ。真にそうだな。」

この二人もまさか占領しに来るとは思っていなかった。


「しかしホワイトハウスもいきなり空母を3隻も配備するとは......」


「無茶ですよね本当に。」

二人が言うのは、1週間後に行われるカムチャツカ半島攻略作戦のための空母「イントレピッド」・

「フランクリン」・「インディペンデンス」の2隻のエセックス級空母・

1隻のインディペンデンス型軽空母のことだった。


「まあとにかく我々の本気を見せようじゃないか。」


「そうですね。」

その時扉から兵士が入ってきた。


「た、大変です!!司令!アダック島の飛行場が100機以上の攻撃を受けて基地機能が使用不能になったそうです.....」


「何.....糞、折角これからだというのにっ.....」

司令は唇を噛み締めた。


「取り敢えず、空母を急いで湾外に出せ!!後、護衛に駆逐艦も出せ!!とにかくその順番で全て艦を湾外に出せ!!」


『「はっ!!」』

副官たちが急いで走っていく。


「くそジャップめ!!」

司令は窓から顔を出して言った。







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