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第十話 次なる一手

昨日やっていた『硫黄島からの手紙』を見ました。

やっぱり栗林閣下は偉大な指揮官でした。

それに対してどこぞの牟田口とか服部とか辻とかいうのは.........


 



 1939年10月23日


 ソビエト社会主義共和国連邦 首都 モスクワ


 クレムリン







 冬将軍が迫りつつあり徐々に乾いた風が強くなっているこの共産主義の総本山は、今一人の老練な政治家によって汚されている。

ソ連最高指導者かつソ連共産党書記長ヨシフ・スターリンはソ連軍の余りにも酷い不甲斐なさに憤慨し、遂さっきも参謀総長と中央方面軍の幕僚を処刑する命令を出したばかりだった。


「くそドイツめぇ!!役に立たん奴ばかりだ.....」

スターリンは次のドイツ軍の動きによっては自分の命も危ないと思い、ウラル要塞に退避しようとしていた。


「同志スターリン。ドイツ軍の次の目標が分かりました。」

スターリンの最も忠実な部下であるNKVD (エヌケーヴェーデー)最高責任者のラウレンジー・ベリヤは、自らの組織のその正確な諜報活動で参謀本部の第二段作戦計画を入手していた。


「ほぅ......それで?」


「はい。先ずドイツ軍は北方のレニングラードを落とすそうです。」


「成程。ではレニングラードに直ちに増援を..『既にやっております。』」

スターリンはベリヤに先手を取られムッとした。


「...で?」


「はい。次に奴らはカフカスへと進軍するそうです。」


「詳細は?」


「最終的な戦略目標はバクーですが、奴ら....スターリングラードも目標に入れているそうです。」


「な、何!?」


「はい。ですので、スタフカ(ソ連軍最高司令部)にカフカス地方防衛のためのスターリングラード・バクー方面軍を編成させるように言っておきました。」

ベリヤは編成表をスターリンに見せた。


「.....主力部隊は新型戦車T-34を2000両配備した第8親衛戦車軍、カラチには13万の第6親衛軍、ノヴォローシスクには第95機甲師団、第122突撃兵連隊、第19親衛戦車軍、

スターリングラードには30万の第11親衛軍と第5親衛戦車軍。後方には予備兵力80万か...中々なものだな...」

実にソ連軍恐るべしである。

ソ連軍はカフカスに侵入したドイツ軍を丸々包囲殲滅する作戦「天王星ウラン作戦」を実行しようとしていた。

しかし、ソ連はある一つのことを見落としていた。それはわざと情報が流された可能性。そして自分達の情報が漏れていないかということである。




 ドイツ帝国 ニュルンベルク市 


 ドイツ帝国軍東部戦線戦略会議







 「ふっ。モスクワは今や遂にドイツに一泡吹かせる時が来たと思って、大騒ぎでしょう。」

帝国軍対外情報局アブウェーアの局長ヴィルヘルム・カナリス海軍少将は皮肉混じりに言った。


「はっはっはっ。正にその通りです。」

陸軍総司令官のフランツ・ハルダー上級大将は同じく笑った。


「それで本当の作戦概要は?」


「それについては私が。」

リヒトホーヘンが立って全員に冊子を配り始めた。


「何々?『ツィタデレ』作戦?どういう意味だ。」

レーダー元帥が作戦内容を話すことを求めた。



「はい、モスクワは恐らくほとんどの戦力をレニングラードとカフカスに配置しているでしょうが、我々が攻勢を仕掛けるのは....ここです。」


「成程。ロシア最北の貿易港、ムルマンスクとコラ半島の制圧か...」

レーダー海軍総司令官が腕を組んで考えている。


「そうです。今回の作戦、『ツィタデレ』。つまり、『城塞』作戦はこのソ連の北極海の米国からの援助ルートを遮断。慌ててやってきたソ連軍を徹底的な防御で撃滅。更にフィンランド軍と新設された北方軍集団(グループA軍を再編成したもの)でレニングラードを包囲。砲撃と爆撃でソ連軍を弱らせ、ここで一計を投じます。」


「何だね?」

カイテル参謀総長が言った。


「はい。次に町中に投降を呼びかけるビラをばら撒きます。ドイツ軍は何もしない。敗者への痛め付けは行わないと。それで弱体化させた後に一斉攻勢に出て占領します。」


「よしそれで行こう。」

全員が同意する。


「コラ方面作戦への上陸船団はイギリスのスカパ・フローから11月13日に出航し、護衛は英海軍の本国艦隊とドイツ海軍第8戦隊がします。これが参加兵力一覧です。」




 ~コラ半島・ムルマンスク上陸作戦参加兵力一覧~


 ドイツ帝国陸軍


 第4機甲師団


 第8機甲師団第2連隊


 第18突撃擲弾兵師団


 第35突撃擲弾兵師団


 第41突撃擲弾兵師団


 第3SS特殊部隊群


 第44砲兵連隊


 第42工兵連隊・第33工兵連隊


 第45補給兵連隊・第11補給兵連隊




 ドイツ帝国海軍第8戦隊


 戦艦「ビスマルク」、「ポツダム」


 重巡「ブリンツ・オイゲン」、「アドミラル・ヒッパー」


 軽巡「ケルン」、「フライブルク」


 駆逐艦12隻




 イギリス海軍本国艦隊


 戦艦「デューク・オブ・ヨーク」、「ネルソン」、「ロドネー」、

   「リベンジ」、「ウォースバイト」、「レナウン」、

   「キングジョージⅤ世」、「フッド」

   

 空母「アークロイヤル」、「グローリアス」、「フューリアス」、

   「イラストリアス」、「インドミタブル」、「フォーミダブル」、    「イーグル」、「ユニコーン」、「アーガス」、

   「ヴィクトリアス」、「ハーミーズ」、「カレイジャス」


 重巡「ヨーク」、「エクセター」、「ロンドン」、「デヴォンジャー」、   「サセックス」「コーンウォール」、「ドーセットシャー」


 軽巡「ブリストル」、「グラスゴー」、「グラスター」、

   「リヴァプール」、「ニューキャッスル」、「マンチェスター」、    「チャタム」、「ダブリン」、「サウサンプトン」、

   「バーミンガム」、「アデレード」


 駆逐艦34隻




 イギリス陸軍


 第22歩兵連隊


 第11戦車連隊


 独立混成第32旅団


 第94砲兵連隊


 第4補給兵連隊


 英独連合軍輸送船95隻


 総兵力14万人


 陸上戦力総司令官 ゴットハルト・ハインリツィドイツ陸軍上級大将 


 海上戦力総司令官 ジョン・ハーヴィー大将本国艦隊司令長官




 全員がその戦力に驚いた。何しろイギリス海軍は本国艦隊の全力だからだった。

航空戦力は空母でカバー。更に充実すぎる陸上戦力。誰もがいけると確信できる戦力だった。


「残りの海軍はどうするのかね?」

レーダー元帥が問う。


「はい。残りはレニングラードで砲撃支援に徹したり、改装や修理を行ってください。そこはレーダー閣下にお任せします。」


「分かった。」

レーダーは一礼して会議室を出ていった。


「空軍はレニングラード、コラ半島に部隊を派遣。制空権奪取に努めてください。」


「了解した。」

ウーデットも出ていった。


「ではこれで会議を終了します。皆さんそれぞれの準備にかかってください。」

残った全員も慌しく部屋を出ていった。


「ふう...よしやるぞ。」

リヒトホーヘンは一人呟いて最後に部屋を出ていった。







 1939年10月22日


 大日本帝国領極東州 北都県 北都市つゆ


 帝国空軍北都基地第3滑走路







 北都市。1884~1885年に満州の利権を巡って行われた日露戦争によって割譲された極東州第3の都市。人口は67万人を突破し、1923年に区制が敷かれた。現在は軍民一貫となって北方の重要な拠点として発展している。そんな街に徳村は北方戦線の指揮官達との作戦会議に来ていた。結果として来年の1月5日にアリューシャン列島制圧作戦「亜」号作戦を開始することを決定。帝都経由で佐藤の待つシンガポールに向かおうとしていた。


「いや~寒い!!」

徳村は同伴している少尉に対して言った。


「そりゃそうですよ。部長。何しろ冬は零下三十度の都市ですから。よくもまあ70万も住めるもんだなぁ.....」

少尉も少し呆れていた。


「はっはっは。こんなもんまだまだ楽な方だよ。」

どこからか人の声が聞こえると、自分達が乗る筈の輸送機から一人の将官が降りてきた。


「こ、これは!?大西閣下!?」

二人は慌てて敬礼をする。なぜなら前にいる方は帝国海軍航空隊、さらに空軍の育ての親だからだ。


「まあ入れ。」

大西瀧治郎海軍中将。史実の神風特攻隊の生みの親であるこの男はこの世界では海空両方の航空機全般を取り締まる帝国軍航空幕僚本部長として

各地を飛び回り、飛行場や航空戦略、新型航空機の制作など、航空機について日本で右に出る者はいないとまで云われる人なのである。


「しかし驚きましたな...何故閣下がこのような場所に?」


「ああ。今度コラ半島に連合軍が上陸するだろ?」

徳村の耳にもその作戦内容は入っていた。


「はい。ですが何故?」


「実はな.....英国軍機と独軍機が北極海でも稼働するか調査してほしいと外交ルートで要請が来たらしい。」


「成程。なんでこっちなのでしょう?フィンランドやノルウェーでやればいいのに...」

徳村はいろいろ考える。


「何でもあっちの北極海側の飛行場は管理が杜撰らしい。だからだ。」


「で?結果は?」


「ああ。独軍機は艦戦、艦攻、艦爆すべて異常は無かったが....英軍機はどれも舵の動きが鈍くなる。偵察機はどっちも良かったがな。」


「そうでしたか。」


「全く...我が軍も将来的にはそんな場所でするかもしれないからな。色々統計はとらせてもらったよ。」


「それで閣下は帝都へいかれるのですか?」


「いや...千歳で降りて札幌で古い友人と会ってくる。海軍のいわゆる退役軍人って奴だよ。」


「お気をつけて。」


「ああ、そうするよ。」

二人を乗せた輸送機は遥か北海道へ向けて飛び立っていった。




 











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