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第九話 『タイフーン』作戦

次も欧州で行きます。そろそろ赤い星の王子様を出さないと.......

 



 1939年9月25日


 ベラルーシ ブレスト=リトフスク市


 ドイツ帝国陸軍第3突撃擲弾兵師団司令部





 「タイフーン」作戦において先鋒を切った第3突撃擲弾兵師団は戦車、空軍と連携。結果、ソ連中央方面軍残存兵はドイツ領から撤退。

また最終到達点であるビリニュス→ミンスク→オデッサのラインを結ぶために、モーデル元帥のグループB軍も「青」作戦を開始。60万の兵力が

一斉攻勢によってブジョーンヌイの中央方面軍は包囲、殲滅、または各個撃破という悪循環に入り、現在ウクライナへと順次撤退を始めていた。南部方面軍もオーストリア軍の圧力によりガルパディア山脈に押し込まれ後に「悪夢のバルカン戦」と云われる戦いが始まっていた。西部戦線はフランス第1軍がドイツ国境を突破。軍司令部は戦略的価値の高いケルン占領を目指していたが、フランス共和国最高国務長官兼フレンチ・ルネサンス党総裁のピエール・ヴォードは旧フランス領であるアルザス=ロレーヌ地方を奪うため第1軍、第2軍、第9軍の三個軍に対し攻撃を命令。三個軍は大損害を出しオランダやフランスへと撤退した。そんな不甲斐ない東西戦線とは打って変わって南部戦線は快勝を続けていた。リヒトホーヘンの助言によって作られた「ドイツ帝国軍南部戦線要領」に従い南欧担当のグループE軍はミュンヘンまで引き下がった。これを聞いたイタリア王国陸軍参謀総長ロドルフォ・グラッツィアーニ元帥はオーストリア軍撃滅を最優先とし、アリエテと第5軍がウィーンでの激闘を続ける中(ウィーン攻防戦)、第7軍、第2軍、第35軍団はサラエボとベオグラードの占領へと向かった。これを知ったオーストリア軍は2個機甲師団と5個師団で第6軍を編成。サラエボにて迎え撃った。(サラエボ攻防戦)初期の欧州戦線においてもっとも凄惨な戦闘と云われるこの戦いは2か月後にイタリア第2軍の降伏、第35軍団の壊滅によってイタリア軍が撤退して終結した。そんな混迷極める欧州戦線においてこの師団は目的地のミンスクを目指して前進し続けていた。




「師団長、前方の第35歩兵中隊から伝達です。『敵軍発見。規模ハ一個師団ナリ。』」

参謀長が少し焦っている。


「一個師団か....随分と我々を大部隊とみているようだな。」


「どうしますか?空軍に支援要請しますか?」


「そうだな。後、後方の第21戦車連隊にもだ。」


「分かりました。」

参謀長が通信室へと消えていった。


「........誰一人として死なせない。」

師団長の決意は司令部全体の願いだった。







 ドイツ帝国 東プロイセン


 グループA軍司令部







「元帥閣下。クライスト上級大将から敵攻勢が始まったとのことです。」


「マンシュタイン元帥。ブレスト=リトフスクの第3突撃擲弾兵師団からも敵一個師団が接近中だそうです。」


「分かった。遂に反撃が始まったか。」

マンシュタインは相次ぐ敵軍の攻勢開始の情報を聞いて対策を練っていた。


「参謀長!状況は。」

そういうと参謀長は紙を読み始めた。


「はっ!!航空偵察の結果、ソ連中央方面軍はブレスト=リトフスクに向かって一個師団、二個戦車師団、一個航空団を向かわせたそうです。

更にウクライナのグループB軍も猛烈な反撃に遭っているとのことです。既に一部分は戦闘に突入しており、効果的な遅延戦術でソ連軍を食い止めながら撤退しているそうです。以上です。」

参謀長は直ぐに去って行った。


「海軍は?」

海軍から出向している左官が報告する。


「はっ。海軍は現在2つの任務部隊に分離し、シャルンホルストを旗艦とした第1任務部隊、ビスマルクを中心とした第2任務部隊はダンツィヒで待機中です。」

左官が下がった。


「よしやるぞ。参謀長!!」


「はい。」


「ブレスト=リトフスクの各部隊に連絡。防衛線を構築しろ。更にビャウィストクとリブリンの空軍に連絡し支援爆撃を要請しろ。通信士。」


「はい。」


「第1SS部隊群のスコルツェニー大佐に後方攪乱を指示しろ。」


「はい。」

通信士がキーを叩く。


「後だ.......クライストの第1機甲軍をブレストの周辺に配置させろ。」


「駄目です元帥。現在第1機甲軍はミンスク北部でソ連の3個戦車師団と死闘を続けています。釘付けにされています。」

通信参謀が慌てた様子で言う。


「うーん.....八方塞がりか.....」

マンシュタインは悩んでいた。無理矢理クライスト機甲軍を移動させ、総力決戦にするか、それとも兵力分散配置で各個撃破を狙うか、


「元帥!!参謀本部から通達です!!」

通信参謀が大声で叫ぶ。


「どれ.......ふむ.......よし、これさえあれば勝てるぞ.......」

マンシュタインは口から笑みをこぼさずには居られなかった。


「どうされたのですか?元帥閣下。」

参謀長が尋ねる。


「まあ待て...参謀諸君!!参謀本部から、新設の第5SS降下猟兵師団がついさっきワルシャワ航空基地から発進したそうだ。よって彼らをブレストの防衛に回すことが可能になった。まず敵歩兵師団を殲滅させろ。前線の兵たちにそう通達するんだ。君達は彼らを含めた作戦を練ってくれ。」


『「分かりました!!」』

参謀達が作戦を話し合い始めた。


「参謀長。敵軍は後何時間で来ると思う?」


「はい。今のペースとスコルツェニー部隊群の力があれば後7時間は稼げます。」


「頑張ってくれ。ここを破られるとドイツは危ないぞ......」







 フランス共和国 エクス・アン・プロヴァンス市郊外


 最高国務長官官邸







 『「フランスに栄光あれ!!フランスに栄光あれ!!」』

十数名の人間が突然叫び始めたかと思えば、中央に座る男が手を下げるとピタリと止んだ。


「諸君!!遂に我がフランスは蘇った!!全ての国民は憎きドイツを討てと言っている!!我がフランスは負けん!!」


『「その通りであります!!!」』


「だが!!ドーバー海峡を渡った先にはあの裏切り者であるジョンブル共がいる!!しかし!!ジョンブルなど...,..」


『「恐れるに足らず!!!」』


「その通り!!ではドイツにとどめを刺そうではないか、諸君!!」


『「はっ!!!」』


「ドゴール参謀総長、ドイツの戦況は?」

史実と違い、1922年の『パリ進軍』の時からピエールの側近であるシャルル・ド・ゴール参謀総長は言った。


「はっ。我がフランス軍は......アルザス=ロレーヌ地方の奪取に失敗。現在第1軍はマジノ線まで後退。第2軍はオランダに撤退。第9軍は....

壊滅し、降伏しました。」


「なにぃ!?どういうことだ、ドゴール?何故ドイツ軍如きに壊滅したのだ?おいっっっっっっ!!!」

ピエールは鉛筆を床に叩きつけた。


「も、申し訳ありません!!よってベルギー、オランダ国境に現在第3軍、第4軍、第13軍を配備。一気にハンブルクまで侵攻します。」

ドゴールが冷や汗を掻きながらおどおどと言った。


「......分かった。では貴様が陣頭指揮を取れ。明後日に作戦を開始しろ。撤退は許さん!最後の一兵まで戦え!!」


「了解しました.....」

ドゴールは会議室を出ていく。


「さてと...今日はこれまでだ。」

ピエールは会議を切り上げ、自室に戻って行った。







 ベラルーシ ブレスト=リトフスク市西約160kmの森








 「ふっふっふ。そろそろイワン共にお灸を据えるぞ。」

 第21戦車連隊長のミハイル・ヴィットマン中佐は愛車のⅣ号戦車(75口径75mm戦車砲搭載D型)のキューポラからソ連軍の一個戦車中隊を覗いていた。


「駄目ですよ連隊長......ソ連軍の狙撃兵にやられますよ?」

砲手が注意する。


「馬鹿め、イワン如きにやられるほど俺は柔じゃない。..........よし第1戦車中隊と第2戦車中隊は全車エンジン発動。砲を向けろ。」


「了解。」

Ⅳ号戦車の砲がソ連軍に向けられる。


「待てよ........まだだぞ.......全車発射!!」

40両の戦車から75mm砲弾が一挙にソ連軍戦車中隊に放たれた。


「どうですか?連隊長?」

砲手が聞いてくる。


「待て.....奴等相当慌てふためいてるな。全車個別射撃に変更!!イワン共を火炙りにしてやれ!!」


『「了解しました!!」』

ドンドンと鈍い音が響き次々と残った戦車が炎上する。


「連隊長敵戦車中隊全滅しました。」


「分かった。全車撤退!!直ぐに奴等が来るぞ!!」

ぞろぞろと第21戦車連隊は次の地点へと移動し始めた。




「ツァイケーホルン師団長。後5時間です。」


「分かった。全員警戒配置。何時敵が来るかわからんぞ!」

司令部がざわつき始めた。


「師団長、これを。」

参謀長が紙を渡す。


「何だ?これは?」


「A軍司令部の作戦書です。相当なもんですよ。」


「ふむふむ......成程。元帥閣下もよく考えられたものだな。全部隊にこれを伝えるんだ。急げ。」


「はっ。」

参謀長が走っていった。




 ~5時間半後~


 ブレスト郊外の第24歩兵連隊第2中隊の陣地




 「くそイワンめ!!ぞろぞろと湧いて来やがる!!」

古参の軍曹が愛銃のMP-40を乱射しながら愚痴を吐く。


「駄目です軍曹!!もう、これ以j......」

近くにいた伍長が言い終わる前に航空機の爆音が聞こえてきた。


「何だ?」


「見てください、あれ!!」

空を見上げると黒十字が書いている輸送機から敵後方陣地に何百ものパラシュートが覆いかぶさっていた。


「ルフトヴァッフェだ!!援軍だぞ!よし全員押せ!押しまくれ!!」


『「おう!!!」』

周りの兵士が活気づく。


「全く.....すげ~なぁ......」

軍曹は暫くその景色に見入っていた。







1939年9月30日、ソ連軍の反撃は失敗。更に予備戦力をもつぎ込んでしまったため、後方の『モスクワへの道』ががら空きになった。

しかし、ドイツ軍も後方の督戦隊の残党を警戒して戦略ラインを結ぶと一旦一週間の猶予をソ連軍に与えてしまった。10月15日にドイツ軍はウクライナ東端の町ロストフを占領。グループA軍もフィンランド軍と協同でエストニアの首都タリンを占領。対ソ戦はヨーロッパ・ロシアの3分の1を開戦1ヶ月で占領した。そんな中、リヒトホーヘンはベルリンで第二段階の作戦を協議していた。その戦略目標の中には因縁の都市「スターリングラード」が含まれていた............
















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