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スワロフスキー

作者: 豆腐

以前何処かで上げたものを思い出して。


実話には沿ってますw

22時、今日も1日が終わる。

今まで感じていた息苦しさが更に増したようで、煙草に火を付ける。


指が震えて煙草ケースを落としたり、シルバーのライターに中々火がつかなかったけれども、やっと付けた紫煙を吸い込む度に息苦しさと胸の締め付けが楽になる気がした。


今日が終わるまで後2時間。


私はベッドに座り、せっかくセットした髪が崩れないように気を付けて頭を振った。

想像だけが頭を駆け巡り、鬱々とした気分は払拭されない。

充電器に差したままの携帯を見る。


着信もメールも知らせる画面は表示されない。


きっとあの人は仕事が忙しい。


自分に言い聞かせ、携帯を放り投げる。

あの人にもらった、お揃いだというクッションに沈む。


こんな辛い思いをするのなら、今すぐキッチンにある全ての酒を飲み干して寝てしまいたい。


そんな想像をすぐさまに否定する。


連絡が着たら、直ぐに家を出たい。だから、寝てしまってはダメだ。

私が連絡を返さないと、今日も会えないかもしれない。


会えないかもしれないという、自分勝手な思いで鼓動がまた早くなる。

せめてお水を。


キッチンでグラスにミネラルウォーターを注ぎ一気に飲み干す。

スカルプチュアに施されたスワロフスキーがバカラのグラスに反射してキラキラと光る。



綺麗な物や可愛い物を見ると心が落ち着く。

綺麗にアートされた爪、整えられた髪、メイクや服や鞄。


自分の顔に自信がある訳ではないが、鏡に映った私はまさに綺麗に整えられていて少し心が安らいだ。



23時30分


携帯が光る。


あの人からの連絡だと、胸が踊って自然と口角が上がる。


期待は一瞬で打ち砕かれた。

ディスプレイに表示されたのはあの人の名前ではなく、何故このタイミングで配信するのかと文句を言いたくなるメールマガジン。


イライラを抑えきれず、煙草に火を付けすぐに消す。

一口吸っても期待を裏切られた絶望感は楽にならなかったからだ。


動機と不快感で胃液がせり上がってくる感覚を覚えた。



23時50分


あと10分で今日が終わる。

バカラのグラスに付いたリップを拭い、嫌な予感を覚えた。

動機は止まらず、寧ろ激しさを増す。


なんで、約束したのに。


あの人を責めそうになる自分の感情を抑え、携帯を見る。

連絡なし。


今日一日で本数の増えた煙草に火を付けた。


23時57分


あの人からの着信。


先程までとは違う胸の高鳴りを抑え通話を押す。


「もしもしー」


久しぶりに聞いた気がするあの人の声。

責めたい気持ちも一瞬で消え去った。


「久しぶり、今日はどうするの?」


嬉しいくせに平静を装う、私の悪い癖。

もう少し嬉しそうな素振りを見せれたら可愛くみられるかもしれないのに。


「え、今日?約束してたっけ?」



落ちて、心臓が早鐘を打った。

気を張らないと涙が零れて声が震えそうで。


「一応ね、忘れてたの?」


いつも通り、興味の内容な平静を保って絞りだした。

いつもは周りが賑やかなこの新宿の家で、一切の音が聞こえなくなった。


「本当に?ごめんね、忘れてた…

今度埋め合わせはするからさ」


「忙しいんでしょ、大丈夫だよ。

私、今から出掛けようと思ってたからそろそろ行くね」


待ち焦がれた電話のはずなのに早く切りたくて嘘をついた。


「解った、また連絡するね」


解ったのか解ってないのか、電話は切れた。



午前0時3分、私の誕生日は終わった。


携帯を放り投げ、シャワーを浴びる。

覚えてて欲しいと思うのは面倒臭がられるのか。

自己主張をすれば良かったのか。

そもそも私は本当にあの人に好かれているのか。



涙は出ず、座り込んだ。

動機が辛い。


これは、私があの人を好きな間続くのだろう。



何処かに当たったのかスカルプチュアのスワロフスキーが一粒なくなっていた。



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