表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Over The Quartz「オーバーディクォーツ」  作者: 松長慎敦
1巻目:「luminance」
1/2

序章 「帰還」

更新速度はあちらより遅めです。首を長くして待つか身の回りの掃除を十分にして飲み物とお菓子と持参して待つことを推奨します。

Over The Quartz 序章「いつも通りの」



俺は目の前にあるモニターを見ていた。

しかし、自分のいる場所がどこなのか、目的地まであとどれくらいか、予想時刻は何時なのか、大体俺はそれぐらいしか見ていなかった。

眠気に勝つために体を動かしていると、

「これより西墨基地への着艦準備を行います。衝撃及び物や機器の破損に注意してください。これより―――」

と若い女性のアナウンスが流れていた。「ちょっと長かったですね、隊長。」と右側にいた隊員が話しかける。

「長かったか?まあ異常がないときと比べれば一週間は違うかもな。」と安易に返すと「長く地上に降りてないと気分が悪くなるの、早いんです…」と本格的な回答が来てしまった。

彼女、松下凜(まつしたりん)は最近配属されたばかりの新人である。人体装着型飛行兵器の適正も無く、秘書として勤務している。

優しいめの茶色いセミロングに黒い目、唇は淡色のピンクと言ったところか…本人の性格もあって部隊にすぐ馴染んでくれて良かった。

ちなみに以前いた秘書は別の隊に異動した。問題は起こしていないが態度が悪かったとかの理由らしい。


「隊長、今回はいつまで休めますか?」

期待している顔で聞いてきた。正直に答えづらいが嘘は言えない。

「長く見繕ってせいぜい一週間程度だ。もう前いた部隊のようにはならないぞ。」と答えると、やっぱり…と落胆した表情を見せた。

「配属されてからどれくらい経った?」

「そこまで経ってないかと。」

「確かに。でも秘書として隊員として、ここの規則には1分とまでは言わないが早めに慣れてほしい。」


「分かっています。これでも頑張っているほうなんです。」

少しばかり硬い会話をするのは苦手だが、一中隊の隊長として甘いことは言ってられないか…

「着艦作業終了です。搭乗中の部隊員は艦を降り正面ゲートから基地に入ってください。繰り返します―――」

若干の揺れがあったが大した異常は無かった。

乗艦していた部隊員が嬉しそうに艦から出る。まだまだやることは残っているのに、早い奴らだ。

「隊長、早く降りないとまた連れ出されますよ?今回はケガしている訳でもないんですから。」

ちゃんとするように言ってるのは分かっているんだが、数日寝ていない故の重さが今になってきている。「体調不良もしくは睡眠不足と言えば問題ないだろあいつだって―――」

言っている途中なのに睡魔が襲ってきた。

「隊長でしょ?しかもこの艦に乗って何年経つんですか?」

「2年…」眠気が勝って寝てしまった。


次に目が覚めたのは医務室でも部隊室でもなく会議室だった。

「潮崎大尉、自らの体を気にせず勤務するのはあまり好ましくないと思うが、今回の戦闘に至っては良い活躍をしてくれた。一応ではあるが報酬を用意してある。」

複数集まっている中、秋崗あきおか中佐は俺に評価を下した。が、俺ははっきりとした意識を持っていなかった。

「やはり若すぎるな。それに意識が明確にあるのか分からねばつまみ出す方法も―――」それだけはまずい。急激に体を目覚めさせ起立してこう言った。

「だっ、第17中隊隊長潮崎紀路大尉!任務完了の報告をいたします!」完全に空回りだった。

そこにいた上官のほとんどが笑っていて中には呆れた表情もしていた。

「反応だけは良い。だがちゃんと体調管理もせねばこの先あるかもしれん戦いに備えられんぞ。」

「はい…」笑いながら指摘されると自分が情けなく思う。

その後は基地の状況、新兵の人員配置、新型兵器の開発具合、そして―――

「やはりメイヅェグは敵対視するべきか結論に悩むな…」やはりこの話に入った。

メイヅェグ―――今世界各地でも話が絶えない人型生命体。見た目は区別できないほど似ており意志の疎通もできる。

詳しい誕生の経緯は知らないが昔は人間と似た遺伝子を持っていたとかで色々言われていたが重要視されていなかった。最近になって騒がれていたが今の時世、そのような生物に対しての偏見は無く普通に受け入れられてしまっている…

そこまでなら軍部の人間も安心していられるのだが、一番厄介な時期がある。

メイヅェグが暴走して都市や地形を破壊してしまう時期だ。これを「急速活動期」と呼んでいて、今回の任務も警備かつ急速活動期になったメイヅェグの迎撃が主要だった。

「いつまた隣国で発生した事態になるか分かりませんぞ。ここはやはり――」「いや、そのようなことをしては国民の反感をかってしまい、そうなれば国が滅びます。」結論の出ない会議。何ヶ月議論したか覚えていない。

「このような話をしても結論を出すのはアルブィン総司令一人。我々は与えられた役割をしていれば…のはずですが。」白衣を着た見た目科学者の奴がしゃべった。

西田設計局長―――戦闘用人体装着型飛行兵器の開発をしている「HEWA」の局長をしているのだが…今の時間はまだ改良途中のはずである。

「西田さん。今回の会議には参加表明していないと聞きましたが?」

上官の一人が聞く。「JLDの二型が完成しました所で、つい暇だから来たんです。」軽々と言う。

これ以上話が深刻化する前に終わらせたい。というより早く休憩して寝たい。

「その他報告はこの後の定時通達で言ってください。私は隊員達に通達しないといけない事が多くあるので、早急に終了したい。」

「分かった分かった。確かに潮崎大尉の言う通りだ。閉会時間を過ぎてしまっては後の事でも問題になる。更に昼飯を食べていない者もここにはいる状況ではな。」そう言う人の大半は自分だったりする。

周囲がざわつき始めたところで秋崗中佐が「ならば今回の議会はこれにて終了する。他に言いたい者がいるなら午後の定時通達にて発表するように。以上。」と締めた。


会議後は部隊員全員を集めて今後の方針を発表、再出発までの間の一週間弱を存分に楽しむために食事した。

昼飯後の定時通達を過ごせば休暇が入る。しかし中隊長として書類報告や艦の破損箇所及び必要補給物の要請まで他の隊員と作業しないとちゃんとした休暇が入らない。

「今回の通達は1時間だと推測される。内容もそれなりに重要な話らしい。しかも全員を集めてのことだから場所も第三ホールだ。」上層部から伝達された情報を隊員にも言う。

「あのでかい場所ですか?」

「座席はどこになるんですか?」

「我々が直接発表することないですよね?」

隊員の疑問が雨のように流れてくる。がそこで怯んでいるわけにもいかない。

「俺達が直接話すことはない。ただし話題になるのは確かだ。任務中に4体のメイヅェグを1隻で撃破したからな。」

と説明すると隊員達は安心した表情を見せる。しかし俺は誰かいないことに気がつく。

「…松下凜はどこに行ったか知っている者、ここにいるか?」と質問するとざわついた。

話し合っているのは分かるが、期待するような答えは出そうにもない。

「まあいい。どっかで休んでいるか、上官に呼ばれたか他の理由があるだろう。…ん?もうこんな時間か、各隊員は第三ホールに集合するように。」場所の確認をする。

「2階C部分の4番目からが着席場所だ。間違ったら総隊長直々の公開処刑付きだ。どれだけ酷いか分かっているだろうな。」この処罰は俺自身も受けたこともある。

その時に受けた処罰は執事だった。一週間の短い期間ではあったがかなりこき使われた。

そのことを隊員たちに自慢しながら第三ホールに向かった。

すでに1・2階部分はほぼ満席になっており、来るのが遅かったような感覚を感じさせる。全員を着席させた後、今いる隊員の数を数える。192。医務室で現在世話になっている5人を除くと3人足りない。集計係に通達すると、

「分かった。残りは調査後、公開処刑の申請を済ませておく。それにしても――」と聞きたくない話を続けそうな気がしたので「他の部隊の集計取らなくていいのか?」と話を切ると、

「―――あ?あぁいいんだ。残り僅か、次回公開処刑の人数の計算も済んでる。」そこは人間の欲だろうか気になる。

「何人だ?」

「32人。全員集結するのは久々だからこれぐらいと見るべきだと思うぞ。」思ったよりはまあ結構いるじゃないか。次回が楽しみではあるんだが、その中に自分の隊員がいるとなると少し苦しいな。まあ罪は償うべきではあるのも事実だが…


「よし、そろそろ時間になる。ちゃんとタイミングを合わせるように。」

必ずされるであろう起立に備えるように言った。

「それで―――」隊員の一人が発言する。

「どうかしたか?」

「何であんな場所に松下さんがいるんですかね?ほら、あそこ…」

舞台を指しながら言っている。その先に目を向けるとそこにはちゃんと部隊服を着ている(普段からちゃんと着ているが)松下凜の姿があった。

そうだ。自分は忘れていたのだった。自分は疲れたから今回の報告は松下に任せていたのを…やらかしたという罪が一気に襲い、顔を手で隠してしまった。

「(またやっちまったか…)また今回も俺の休暇は減りそうだ。司令官に伝えてくれ、また過ちを繰り返してしまったと…」

もう受け入れる覚悟はできている。隊員にそう言うと、「…分かりました。」と険しい顔で返事をした。彼なりに今の状況を把握してくれたのだろうか。

時間は2時に入ろうとしている、が何故か始まらない。何の通達も入っておらず他の隊員もざわつき始めた。

それから2分程経っただろうか、会場内の照明が全部消えた。「おいどうなってるんだ!」と野次を飛ばす奴まで出てきた。それもそのはずである。いつもの定時通達とは違う始まり方だ。普段ならば最初からステージに人がいる状態で通達が始まる。しかしこのような始まり方は何か特別な事があった時ぐらいしか行われない。

「俺達の功績でここまでするはずはないな。他に何かあるのか?」

「知りません!だってそこまで連絡が入ってないんですから!」

隊員も思い当たる節はなく、動揺し続けたままだった…

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ