自分のしたい事
ある日にんげんと犬が熊猫の兄に呼び止められて、森の木を保つのに協力して欲しいと言われたときの事です。
にんげんが、「協力ってどうするの?」と聞いたら熊猫の兄がぽっこりしたお腹の袋に手を入れて、中から果物の種を取り出して、「木が少ない所にこれを一つずつ植えて、いい塩梅にしてくれればいい。だからさ、頼むよ。」と言います。
でもにんげんは、「でも熊猫の兄、私達熊猫の兄みたいにお腹に種入れられないからそんな沢山持てないよ。それに片手でも塞がると犬に乗りにくくなるし。」と答えます。
それを聞くと熊猫の兄は「袋、ないのか?」と言います、犬もにんげんも「ないよ。」と答えます。
すると熊猫の兄はがっかりして、「そうか、それじゃ頼めないなぁ。」と言って落ち込んでしまいました。
だからにんげんは森が開けている場所があったら犬と一緒に果物を運んで種を落とす約束を熊猫の兄と交わしました。
すると熊猫の兄は頭を手で押さえて掻き毟るように動かしながらぐねぐねと動き回って喜びを露わにしました。
そして、「そうか、じゃあ頼んだぞ。今回は特別にこの甘い実が生る木の種をやろう。」と言って種をにんげんに向かって投げました。
にんげんは、「あ、ちょっと待って!あーー!」と言って種を取り落としました。
すると種は見る見る木になって犬のわき腹を掠めるように高く伸びていきました。
熊猫の兄は、「あー!ちゃんと取らなきゃ駄目じゃないか!」と言っていますが、にんげんは、「急に投げるからだよ!あと、空き地を見つけたら果物探して埋めて置くとは言ったけど、空き地を探すとは言ってないからね!」と返しました。
そういわれると熊猫の兄は、「え、積極的に探してくれるんじゃないのか……」とちょっと傷ついた様子を見せました。
にんげんはちょっと可哀想かな、と思いましたが、犬と遊ぶ時間を勝手に取られるのは嫌だったので、「うん、運よく見つけたらだよ。自分から探したりはしないよ。」と言いました。
それを聞くと熊猫の兄は「そうか……」と言ってしょんぼりしたまま去っていってしまいました。
にんげんはちょっと悪いことをしたかな、と思いましたが、なんでも人のいう事を聞いてたらやりたい事できないし、と思いました。
犬も時々自分を置いて早駆けに行くし、たまには自分の好きなようにしていいよね、と思うにんげんでした。




