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幸せ

 ある日にんげんが犬の背中に乗って森を行くと、遠くになんだか丸くてもこもこしたものが見えました。

にんげんが近くで見たいというと、犬はすぐにその丸くてもこもこしたものに近寄ってくれました。

 犬から降りて、にんげんの腰ほどの大きさの、もこもことして丸く見えたのは兄弟っぽいというのが解りました。

丸く見えた理由の大半はお尻側から見ていたせいですが、回り込んでみてみれば確かに丸じゃない緩い曲線の体つきが見えました。

 にんげんが、「これはなんの兄弟?」と犬に問うと、犬は、「平鼻の兄だ。丸っこい体つきの中で鼻のあたりは平らだろう?だからその名がついた。」と答えました。

そして、にんげんが「寝てるの?」というと、犬は「この距離で何も言わないなら寝ているんだろう。そのままにしてここじゃないところに行こうか。」と言います。

それに頷いた人間は、再び静かに伏せた犬の背中に飛び乗ります。

 そうして静かに静かに平鼻の兄弟の寝ているところから離れた二人、もう声を出してもいいだろうというところでにんげんが、「ねぇ、平鼻の兄ってどんな兄弟なの?」と聞きました。

犬はその問いに、「そうだな、いつも温厚でおっとりして……まぁのんびり屋だな。木の実を好むがいかんせん背が足りない。だからいつも背の高い兄弟か、木に体当たりをして木の実を落とせる兄弟を探しているか、今みたいに寝て過ごしているみたいだぞ。」と答えました。

 にんげんは、「そうなんだ。私と犬とか、狼の兄と駱駝の姉みたいにずっと一緒の相手を見つければいいのに。」といいましたが、犬は尻尾を揺らしながら言いました。

「あのなぁ、俺とお前や、狼の兄と駱駝の姉は特別なんだ。特に狼の兄なんてしつこくなんども駱駝の姉に頭をさげて、他の兄弟から見てもしつこいなっていうくらい頑張ってようやく一緒に居る事になったんだ。そう簡単にはいかないんだよ。」と。

 それを聞いて人間は、「じゃあ、ちっちゃい頃から魚の姉に面倒見てもらって、ずっと犬と一緒の私はずるいのかな?」と言いました。

犬は、「ずるくないさ。どっちかっていうと俺が居なきゃ満足に森も抜けられないし、山にも行けない。そんな弱い奴は可哀想っていう言葉のほうがしっくりくるな。」と言います。

 それはにんげんのお気には召さなかったのか、にんげんは犬の耳を弄りながら「私、可哀想じゃないもん。犬と一緒だから幸せな子だもん!」と言いました。

ソレに対して犬は、「解った解った、にんげんは幸せな奴だ。そして俺も幸せだ。こんなに兄弟に好かれてるんだからな。」と答えました。

 こうしてにんげんと犬はまた一段と仲を深めましたとさ。

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