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琥珀

 にんげんが犬と並んで森の中の小川を歩いていると、小石でごろごろした道の先になんだかどっしりしたものがありました。

「ねぇ、犬。あれなぁに?」とにんげんが犬の毛皮を引っ張ると、犬は答えます。

「あれは…陸亀の兄かな。後ろを向いてるんだ。ようく見ろ、尻尾が鼠みたいに細長いだろう?」と。

 そういわれて改めてみてみると、確かにどっしりとした丸く膨れたつるつるしたものを支える四本の足の真ん中で、細長いものがゆっくりと動いています。

「あ、ほんとだ。何してるのかなぁ。」というにんげんに、犬は、「話してみるか?」と言いました。

にんげんは勿論と言わんばかりに元気に「うん!陸亀の兄とお話する!」と言って駆け出しました。

 駆け寄ったら、「ねぇねぇ、陸亀の兄。なにしてるの?」と言いながら、つるつる光る、良く見ると薄っすら中が透けて見える薄茶色の物をてしてしと叩いてみたにんげん。

それに応えて陸亀の兄がゆっくりと首をもたげてにんげんの方を向きました。

陸亀の兄は、大層整った顔にタンポポ色の髪を生やして太く長い首の上に備えた人面亀でした。

「あれ、君にんげんだね?僕が何をしてるかって?甲羅干しだよ。じっくり太陽の光を浴びて身体を暖めてるのさ。気持ちいいよ。」と、見た目のどっしり感とは裏腹に軽快な様子で陸亀の兄は口早に答えました。

「こうら…星?こうらのお星さま?」というにんげんに、「違うよ。甲羅っていうのは僕がしょってる琥珀色のぽっこり丸く膨らんだ奴さ。ぼしはお星様のぼしじゃなくて、太陽に当てて乾かすのをほす、から変ってぼし、ともいうんだ。」と教えてあげる陸亀の兄。

にんげんは、「へぇ、なんだか難しいんだね。ところで陸亀の兄、首痛くない?ずっとぐんにょり曲がってる。」と解っているのかいないのか、微妙な顔で陸亀の兄の首を心配し始めました。

「大丈夫。僕の首って結構自由に動くように出来てるから…お、犬も来たね。君達はいつも一緒って本当かい?」と明るくにんげんを心配させる陸亀の兄に犬は、「いつもではないかな。俺が全力で駆けたい時にはにんげんを置いていくし。でも、大体一緒だ。」と返しました。

「そうかそうか、仲が良いのは良いことだ。ところでにんげん、僕の甲羅がどうかした?じっとみてるけど。」

 じっと陸亀の兄の甲羅の部分に目を向ける人間、聞かれてもどこか上の空で、「なんか中でぴくぴくしてる。これなに?」とにんげんは返事しました。

すると陸亀の兄は「ああ、それね。筋肉っていってね、身体を動かすのに必要なものだって母さんが言ってた。勿論、にんげん、君の身体にもあるんじゃないかな?例えば皮の下とかに。」と言いました。

それに対してにんげんは、「そうなのかな?皮剥けば解る?」などと恐ろしい事を言いました。

するとすかさず犬が、「やめておけにんげん。強く引っ張られると痛いだろう?皮を剥くなんてもっと強く引っ張らなきゃ駄目なんだ。きっととっても痛いぞ。」と脅しをかけました。

 これには普段無邪気なにんげんも心底震えあがりました。

にんげんは色々過保護に育てられたので痛いという経験にあまり慣れが無く、とても怖いのです。

「い、痛いならいい!皮剥かない!」と言って犬の脚の毛に抱きついて、怖さを紛らわすように顔を埋めてしまいました。

陸亀の兄は「あんまり怖がらせちゃあいけないよ犬。」と言いましたが、犬は、「にんげんははっきり言ってやらないと時々無茶をするからな。怖がらせるくらいで丁度いい。」と言いました。

 その後も「皮剥き怖いよぅ。」と愚図るにんげんを、「皆で一緒に甲羅干ししよう。気持ちいいぞ。」と犬がなだめて皆で甲羅干しという名の日向ぼっこをしました。

こうして陸亀の兄はにんげんの中で「痛くないのにきんにくが見える凄い兄」と認識されたのでした。

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