にんげん飛ぶ
犬とにんげんは山に向かっていました。
山と言っても一番大きな兄の山ではなく、本物の山です。
そこには狼の体ににんげんの上半身、そして大きな犬も覆い隠してしまうほどの大きな翼を持つ姉が棲んでいるのです。
何故山にわざわざ会いに行くのかといえば、人間が空を飛びたいとだだをこねたからです。
にんげんは月に一度の怪物集会の時に翼狼の姉の狼の背に乗って空を飛んでもらったのを憶えていたのです。
だから今日は犬が人間を乗せて山へ向かって走っているわけです。
そして太陽が真上に来る頃合に、ようやく翼狼の姉の棲む岩山の中腹に辿り着きました。
そこで犬が大きな遠吠えをして、しばらくたつととても大きな羽の音が聞こえてきました。姉の登場です。
姉はにんげんの目的を聞くと最初は仕方の無い子ね、という顔をしていました。
けれどにんげんを背中に乗って飛んだ時のにんげんの嬉しそうな声を好きになっていたのでにんげんを乗せて飛ぶ事を承知しました。
こうしてにんげんはまた空を飛ぶ事になったのですが、犬はその間待ちぼうけです。
一つあくびをするとその場に丸まって眠り始めました。
きゃっきゃっとはしゃぐにんげんの声に尻尾をゆっくりと振りながら。




