表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
近ごろの魔法使い  作者: 風待月
《魔法使い》の世界事情/コゼット編
47/640

020_1420 手荒い歓迎Ⅵ~Replay attack~


 右の貫手(ぬきて)(のど)に突き刺さった。

 容赦(ようしゃ)ない急所への一撃をカウンターで受けて、のけ()って倒れた襲撃者は悶絶(もんぜつ)する。


 予想とは違う展開に、十路(とおじ)は面食らう。

 とても間に割って入れる距離ではなかった。だから振り降ろされた合金製の警棒に、ナージャは打たれるはずだった。


「あらら。すみません。いつも和真(かずま)くんにやってるので、つい反射的に」


 パーティ会場に雪崩(なだ)れこんだ武装集団のひとりを、十八番(おはこ)の地獄突きで倒した後でも、彼女の態度はいつもと変わらない。キュウリをポリポリしてから、弁明のようなものを口にする。


「それにしても、こんなのでド突こうなんて、無粋な人たちですね?」


 しかも、いつどうやって奪い取ったのか。襲撃者が持っていた警棒が、彼女の手に握られていた。


 更に襲いかかってきた別の襲撃者の一撃を避けると、ナージャは逆に踏みこんで、それを振るう。相手の肩口、脇腹、腰、太腿(ふともも)(ひざ)と。今は流しただけの長い白金髪(プラチナブロンド)をなびかせて、動きの軌跡を作り姿勢を低くし、最後に警棒で足首を払いながら立ち上がり、転倒させる。


「いや~。まさか通信教育で空手習ってたのが、こんなところで役に立つとは」

「通信教育……? しかも空手の……?」


 あんな流れるような連撃は、空手のものとは思えない。少なくとも通信教育で得られる技術ではない。


 ツッコミどころ満載だったが、彼女をかばう必要がなさそうなことに十路は安堵して、とりあえず無視する。他が忙しい。


「部長!」


 クロークに預けていた空間制御コンテナ(アイテムボックス)を回収した樹里が、会場に戻ってきた。しかも交戦しながら。ミニ丈カクテルドレスにも構わずに、追いすがる襲撃者の横面を蹴り飛ばしながら、放り投げる。


 放物線を描くアタッシェケースを受け取ると、コゼットは即座に取り出した装飾杖を構える。


「《サラマンダーおよび霊的媾合についての書/Fairy scroll - Salamander》! 《シルフおよび霊的媾合についての書/Sylph》!」


 そして術式(プログラム)をふたつ同時に複数実行した。


 壁際の襲撃者たちには、構えた突撃銃(アサルトライフル)の表面を覆うように火妖精(サラマンダー)の《魔法回路(EC-Circuit)》が。風妖精(シルフ)の《魔法回路(EC-Circuit)》は全員の口元に発生した。


 すぐさま熱力学制御により高温を与えられて、銃が飴のように曲がる。

 その変化に襲撃者たちは、誰もリアクションできない。大気分子制御によって作られた、低酸素の空気を吸ってしまったから。人間は酸素濃度六パーセント以下の空気を、一度でも吸えば昏倒(こんとう)してしまう。


 あっという間に襲撃者たちは無力化された。

 闖入者たちの乱入に凍りついていた会場の空気は、解凍されて騒然となる。武装した者たちの乱入よりも、《魔法使い(ソーサラー)》の異能を()の当たりにしたために。


(変だな……?)


 ざわめきを気にも()めず、十路は内心で首を傾げる。


 特殊部隊だろうと強盗だろうと、普通ならば『動くな』と命令したり問答無用で発砲するなり、なにかアクションがあるだろう。

 しかし突入してきた者たちは違った。それに警棒で襲いかかった勢力を、十路たちは迎撃したのに、銃を向けていた相手は反応しなかった。


「はいはーい、大丈夫ですよ皆さーん。もう心配はありませーん」

「落ち着いてください。不審者は気絶しましたので、もう大丈夫です」


 ナージャが緊張感の欠片もないホンワカした声で。コゼットは毅然(きぜん)としながらも安心感を抱ける声で。場をなだめ始めたから、そちらは彼女たちに任せて、十路は倒れた襲撃者の身元を確かめる。


 着ている服の素材、靴、そして装備ベルトは、しっかりしたものでレプリカ品とは思えない。

 体格はかなりガッシリしており、鍛えられたものだ。

 ゴーグルと覆面を引き()がして出てきたのは、鼻が高くて彫りの深い、典型的な白色人種(コーカソイド)の顔立ちだ。


 そこまではいい。問題は彼らの持っていた銃だった。


(STG-556……確か重さは三キロ超えてたはず……)


 日本では『ステアーAUG』と称したほうが通りがいいだろうが、現在特許が失効になり、他メーカーがコピー製造しているアサルトライフルだ。機関部後方設置(ブルパップ)式の特徴的な形状で、加えて炭素(C)繊維(F)強化(R)プラスチック(P)のパーツを多用しているため、銃特有の重厚感や威圧感が薄い。

 だから見た目はまだしも、持ってみて軽すぎることに、十路は首をひねる。弾倉(マガジン)を抜くと、ライフル弾が入る構造になっていない。


「それ、モデルガンですか?」

「《魔法》で溶かした時、予想より低いエネルギーで効果が出たから、変だと思ったのですけど……」


 顔を上げると、同じように観察していた樹里とコゼットが、十路同様に得心できない表情をしていた。


(モデルガンで襲撃……? だけど警棒持って襲いかかってきた連中は本気だったぞ? どういうことだ?)


 首筋に手をやり考えた十路は、ふたりに身振りで伝える。まずは唇の前に人差し指を立て、下を示し、耳をすませるように手をかざす。そして鉄棒を握るように両手を前に出し、右手をクイクイッと動かす。

 下――地下駐車場の《バーゲスト》から、なにか連絡が入ってるかと訊いた。声を出さないよう指示したのは、会場の人間が注目している中、言葉に出すのはまずい話題と感じたから。


「……了解です」


 樹里が意を汲んで、《魔法使いの杖(アビスツール)》を取り出し、イクセスと《魔法》の無線を(つな)ぐ。

 しばしの間を置いたAIとの会話のせいか、顔を引き締めた彼女は、手を動かし無言でその内容を伝えてくる。

 下に敵。五人。拳銃で武装と。


 そういうことに無縁そうな樹里が、軍隊でも使われる手信号(ハンドシグナル)を返したのを、十路は意外に思う。


「ハンドシグナルなんて、よく知ってるな?」

「や、お姉ちゃんに覚えさせられたんです」


 樹里に姉がいるのも初耳で、それにしてもどんな姉だと思うが、今はどうでもいい情報なので放置して、視界の隅で十路は周囲を見渡した。


 気づいたのは、護衛(ロジェ)の立ち位置は先ほどまでと全く変わっておらず、王女(クロエ)()()()()に控えていること。

 状況はなんとなく理解できた。

 

「部長。どうやら俺たち、誰かに試されたようですね? 強襲部隊が乱入してきて要人を守れるかって」


 十路は不快げな顔を作り、立ち上がりながら聞こえよがしにコゼットに話しかける。


「誰の発案か知りませんけど、合格点もらえるんでしょうか?」

「……どうなのでしょう? 装備が手元になかったので、その分遅れましたし。守る対象が多すぎて、絞り込むのは難しいです」


 会場の人々は、彼らの一挙一動に注目している。

 不明な十路の意図に戸惑いを出さないように、コゼットはプリンセス・モードのままで話を合わせる。


「《魔法使い》なんて得体の知れない人種を警戒するのも、俺たちみたいな若造が役に立つかって危惧(きぐ)するのも、理解はできますけど……」

「けど、なんです?」

「こういうデモンストレーションに勝手に使われると、不愉快なんですよ」


 そして十路はやさぐれたような態度を見せつつ、入り口へと(きびす)を返す。


「帰りましょう。理事長の頼まれた部活は終わったでしょうし、俺たちがいたら騒ぎになるみたいですし、心配して『迎え』が来る前に帰らないと」


 他の面々にも、十路の意図が伝わったようだった。

 帰りはタクシーを使うよう、つばめに言われているため、迎えが来るはずはない。


「え~? ほとんど食べてないのに帰るんですかぁ?」

「ナージャ先輩! そんなのいいですから!」

「着替えの時間ってあります?」

「ありません!」


 ナージャの背中を押して樹里が続き。


「Au revoir.(ごきげんよう)」


 スカートをつまんだ優雅な一礼を残して、コゼットが最後に退出した。



 △▼△▼△▼△▼



 扉を閉じるバタンという音が、静寂に満ちていた会場に大きく響く。

 そして一瞬の後、無秩序なざわめきが発生する。それは兵器としての《魔法》を初めて生で見た人々の畏怖(いふ)。危険であるという意見、有用であるという意見、それを周囲の人々と話し合ってざわめく中。


「ふふっ……」


 閉じられた扉を見つめ、人を見下したような倣岸(ごうがん)な笑みを浮かべるクロエがいた。

 そして彼女が小さく(うなず)くと、(そば)(ひか)えていたロジェは、小さなマイクを取り出して、小さくなにかを(つぶや)いた。



 △▼△▼△▼△▼



 正装のまま四人はホテルの階段を駆け下りる。その途中、コゼットと十路が声を荒げてぶつけ合う。


「もうちょっと言葉選びなさいな! 騒ぎにしたくない意図はわかりますけど、あの言い方は無差別にケンカ売ってますわよ!」

「俺になに期待してんですか! しゃべくりは部長の役目でしょうが!」

「だったら説明してわたくしに任せろっつーの!」

「そんなヒマないってんだよ!」


 傍から見ると結局まだ喧嘩を続けているのかとも思えるが、一応は状況をわきまえているらしい。ふたりはすぐに表情と内容と雰囲気を切り替えた。


「それよか堤さん。相手の予備戦力に間を与えずに、強行突破する気ですの?」

「無関係の民間人がいるんです。相手の狙いが俺たちなら、迎撃するにも逃げるにも、とっとと離れるべきです」


 地下駐車場へ続く扉を開く前に、十路は立ち止まり、またも唇の前に人差し指を立てた。

 そして樹里に手信号(ハンドシグナル)を送り、彼女も同様に返して、身振りで会話する。


(むっ……)


 その様に、コゼットの心がささくれ立つ。

 突入直前の特殊部隊と同じようなやりとりを、十路たちも行っていると予想できる。だが二人が無言で通じ合い、それをコゼットは理解できないのが、なぜか理由もなく面白くない。


(なにこんな時に変なこと考えてますのよ……)


 思い直し、小さく(かぶり)を振って考えを捨てて。


「へ~。皆さんの部活って、こんな感じ――あいたっ!?」


 相変わらず緊張感のないナージャの頭を、装飾杖でポコンと殴って黙らせる。


 無言の打ち合わせが終わったらしい。十路は振り返り、視線で行動することを伝えてくる。

 指を立ててカウントし、ゼロで勢いよく扉を開け放ち、隙間から樹里が長杖を構えて突入する。


「《雷撃(らいげき)》連続実行!」


 すぐさま《魔法》の射出式スタンガン(テイザー)が乱射され、暗い地下駐車場を白紫色の光が一瞬照らす。イクセスの(カメラ)が捉えた映像を受信しているので、突入直後でも相手を探す必要はなく、狙いは外さない。

 目隠しがされたワンボックスカーの側に、五人の男が倒れた。その格好は戦闘服ではなく、作業着だった。拳銃と無線機がなければ、無関係の人間だと思うだろう。


「イクセス!」


 十路の呼びかけに応じて、他の車の陰に隠れていたオートバイが、無人のままで駆け寄り、彼の前でターンを決めて停車した。


「二手に分かれる。木次はナージャを守って逃げろ。無線回線は開けたままにしておけ」

「了解っ」


 普段の野良犬加減は鳴りを潜めた、毅然(きぜん)とした十路の指示に、樹里は《重力制御》を実行し、ナージャの腰を掴んで放り出した長杖に飛び乗る。


「うひゃっ!?」

「大人しくしててください!」


 かなり強引にナージャを連れ去り、駐車場から飛び出していった。


「失礼っ」

「ちょっと!」


 十路はコゼットのドレスのスカートをまとめあげて、有無を言わさず横抱きに抱え上げる。彼女をリアシートには乗せず、ハンドルを握る腕の輪の中に入れるようにして、自身もオートバイに(またが)る。


「どうしてこんな乗せ方ですのよ!?」

「スカート巻き込むからですよ!」

「つーか、わたくしも飛べる――きゃっ!」


 これ以上の非難には耳を貸さないと急発進したため、前に横座りしたコゼットは、慣性に悲鳴を上げて十路の首にしがみついた。



 △▼△▼△▼△▼



 地上へのスロープを駆け抜けて、夜の街に飛び出してから、イクセスが風に負けない音量で話しかける。


【怪しげな連中がいたから、早めに警告したかったのですけど……無線機くらい持っててくださいよ】

「それは反省する……俺たちの立場を考えると、どこでも気を抜いちゃいけないな」

【過去形にするには、まだ早いみたいですよ?】


 十路がサイドミラーに目をやると、別の場所で待機していたのか、大型バイク三台が猛スピードで接近してくるのが見えた。ライトの逆光でよく見えないが、乗っている者たちが身に着ているのは戦闘服ではない。フルフェイスヘルメットとライダースーツだから、通りすがりのライダーと思えなくもない。

 しかし手にした短機関銃(サブマシンガン)と思える物体が、予想を裏切ってくれる。


【この事態を想定してたから、コゼットを同乗させたのではないのですか?】

「あぁ、そーゆーことでしたのね……」


 突出した一台が並走し、片手運転で十路たちに銃口を向けてきた。

 殺意を向けられても顔色を変えることなく、十路はコゼットに指示を出す。


「防御を!」

「了解!」


 応じて三次元物質形状制御(クレイトロニクス)術式(プログラム)《ピグミーおよび霊的媾合についての書/Fairy scroll - Pygmy》が実行されると、オートバイの真横に、高さ幅ともに一メートルほどの壁が隆起する。走行中なのですぐにその陰から出てしまうが、同じ《魔法》を連続実行することで、絶え間なく遮蔽(しゃへい)物を作り、連射される弾丸を受け止め、すぐさま元の道路へと戻す。

 そして連射が途切れた瞬間に、コゼットは術式(プログラム)のパラメータと座標を換えて、別の形で実行する。


「街中でブッ放すなボケ!」


 相手の進路上のアスファルトが隆起し、高さ五〇センチほどの出っ張りが作られた。

 そんな非常識かつ唐突な変化に対応できず、オートバイは衝突してつんのめり、乗っていた人間は車体から投げ出される。


【あまり派手なことしたら、後で面倒になるのでは?】

「あの程度なら死にゃしねーでしょうし、ごまかし効くでしょう!? つーか、文句はあっちに言え!」


 イクセスとコゼットの会話に、十路は渋い顔をして、頭の中で整理する。

 衆目のある街中で戦闘を行うのは、正体を暴露する可能性を高めるリスクがある。なのに相手はお構いなしに発砲してきた。だから警察が介入してくる前に、撤収(てっしゅう)の用意も万端なのだろうと予測される。

 となると、一般人に被害が出た時、責任を押し付けられるのが、交戦している十路たち。

 しかも正当防衛が成り立つ状況とはいえ、《魔法》を武器にしてるのを披露して目立つのは、部が社会実験チームであることを考えるとあまりよくない。実情がどうであれ、一般人に《魔法使い(ソーサラー)》が人間兵器だと印象づけてしまう。


(俺たちの立場、面倒くさっ……!)


 ウンザリしながらも、面倒を最小で切り抜ける策を考え、彼は動く。


「目立たぬように、っと」

「ちょ、ちょっと……!」


 十路はコゼットの頭を押さえつける。彼女は横座りしているタンク部分に、へばりつくような姿勢を取らされる。


「低くなって、振り落とされないようハンドル握ってください」

「なにやる気ですのよ!?」

「説明してるヒマないんで、掴まっててください」

【本気ですか……?】


 彼は走るオートバイの上に立つ。不自然な姿勢で低くなったコゼットをまたいで、ハンドルポールに足を置き、タイミングを見計らってイクセスに指示を出す。


「飛ばせ!」


 走りながら前輪を垂直まで跳ね上げ後輪走行(ウィリー)すると、(さお)立ちした《バーゲスト》から、十路の体は後ろに撃ち出された。


 タイミングを間違えれば自爆する、そんな荒業は予想もしなかっただろう。背中からの体当たりを、追跡者は正面から食らうことになった。追跡する大型バイクに十路が飛び乗ると同時に、ビリヤードのように乗っていた者は車体から押し出されて転がり落ちる。


 十路は奪ったオートバイを操作して、残る最後の一台へと体当たりする勢いで近づき並走する。

 相手は銃口を向けてきたが、腕を叩いて射線をそらす。続いて裏拳で放つが、銃を手放して反応してきた。


 近すぎて逆に銃が当たらない格闘距離で、そのまま手離し運転で手技を応酬(おうしゅう)しあう。オートバイに(またが)ったままでは腰の入った打撃を放てないが、これで倒せると思っていないので十路は気にしない。


「前方不注意だ」


 不意に十路がハンドルを動かし、間合いを開く。

 平坦な声は風に流れて届かなかっただろうし、仮に聞こえたとしても日本語なので、外国人かもしれない相手が理解できたか不明だが、いずれにせよ追跡者が気付いた時には遅い。


 派手な音と共に、路肩に駐車されていた乗用車に突っ込んだ。



 △▼△▼△▼△▼



 ()()()()現場から離れて、追跡がないことを確認してから、十路は人気(ひとけ)のない路肩にオートバイを駐車した。すると後続の《バーゲスト》も(ゆる)やかに減速して停まる。


「貴方、相変わらずムチャクチャですわね……」


 装飾杖とアイテムボックスを抱えて、片手でハンドルを握っていたコゼットが、遅まきながら十路の離れ業に(あき)れる。


「《使い魔》乗りはあれくらいできて当然」

【《魔法》なしでやる豪傑(バカ)は、トージだけだと思いますけど?】


 顔があればジト目を向けているだろう、イクセスの言葉を聞き流し、十路はオートバイを降りる。誰の物とも知れないこの車体は、ここに乗り捨てる。


【ちなみにジュリたちは、追撃もなく安全に離脱したようです】

「飛んで逃げることを想定して、ヘリまで用意してるってことはなかったか……」

【これからどうするか、無線で訊いてますけど?】

「あー……そうだな。理事長と相談するから、待てって伝えてくれ」


 荒事があったことを感じさせない無気力な態度で、十路はタキシードのスラックスから携帯電話を取り出す。


「部長。この襲撃、なにが目的だと思います?」


 耳につけてコール音を聞く間、片手で蝶ネクタイを外しつつ、コゼットに問う。


「俺たちを狙ったものなのか。それとも俺たちの()()を狙ったものなのか」

「……わかりませんわ」


 言葉とは裏腹に、予感めいたものがあるのかもしれない。

 コゼットは唇を噛み、両手で装飾杖を握り締めた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ