進化論
「こら、シンジ。お前もそろそろ進化しないと、生活できなくなるぞ。毎日、目的も無く回遊しよって」
まただ。最近、親父の小声がやかましい。良いんだよ。俺は魚類のままで。大体地上に上がるなんてダルいじゃないか。親父も、上司魚に尾びれを振ってなんとかやっている魚類じゃないか。
「お姉ちゃんは、とっくに両生類に進化していい人を見つけたのよ。あんたも私達を安心させて。ほら、お姉ちゃんの卵の写真をみなさい。可愛らしい卵じゃない。」
母さんも、こう言う。姉ちゃんの卵の写真なんか見ないでいいよ。あんたらは良いよな。あんたらがバブルの頃は海ばっかりだったから。あんたらが沢山産んだ卵から、たまたま大人になれたのが俺だっただけだよ? あんたらの都合で進化を押し付けないでくれよ。
母さんの愚痴は続いた。
「いとこの、タカオミくんなんて魚類から爬虫類、それから鳥類に大進化したんだから。始祖鳥っていうの? あんな派手な格好をして皆が心配していたけれど今では立派な鳥類になって、世界中を飛び回っているのよ。あんたもね。せめて、安定した哺乳類になって母さん達を安心させて」
あーあ。魚類なんかじゃなくて虫に産まれていれば良かったな。そうしたら、進化の心配なんてしなくてもよかったのに。
そう思いながら、俺は母さんの用意してくれたオヤツの羽虫をパクパクと食べるのだった。




