003 婚約破棄→魔王妃、えっ、これが自由?
「私は、何もかも捨てて自由に生きたかった。」
セリアはカイゼル・ノアーラの広間で、肩をすくめながら考えた。
「あの時、お前が言ったこと覚えてる?『お前が求めていた自由、それが私の隣にいることだろう』って。」
カイゼルの言葉が心に残った。婚約破棄の瞬間に感じた解放感は間違いなく「自由」そのものだったが、まさかその後、魔王から求婚されるなんて思わなかった。
でも、カイゼルの目を見つめると、不思議と落ち着く自分がいる。確かに自由を愛していたはずなのに、今は魔王城で過ごす時間が案外心地よく感じる。これは一体何なんだろう?
「これが自由なのか?」
セリアは自問しながら、カイゼルの笑顔に心が揺れた。
「どうしてそんなにリラックスしてるんだ?」
カイゼルが問いかける。
「だって、魔王城って自由すぎるじゃない?寝たいときに寝て、お菓子食べて、宝物庫見せてもらって…好きにできるんだよ。」
セリアが答えると、カイゼルが微笑んだ。その笑顔を見て顔が熱くなる自分に気づく。無意識に惹かれている自分が少し怖いが、それもひとつの自由なのかもしれない。
「本当に自由が欲しいのか?」
カイゼルが少し挑戦的に言う。
セリアはふっと笑って答える。
「自由って、誰にも干渉されないことだと思ってた。でも、カイゼルといると、すごく楽だな。これも自由?」
その言葉が自分でも驚くほど心に響く。自由を求めてきたはずなのに、今はどこかで「まあ、いいか」と思っている自分がいる。
セリアはカイゼルが淹れてくれた紅茶を一口すすりながら考えた。こんなに普通の紅茶が美味しいなんて不思議だ。カイゼルの存在が安心感を与えてくれる。
自由って、思ってたのとはちょっと違うのかもしれない。最初は何もかも自由にしたかったけど、今は少し変わった気がする。
「まあ、いいか。」
セリアはふっと笑った。これが新しい自由だろう。
そう思うと、魔王妃になる日も案外すんなり訪れるかもしれないと、セリアはふと感じた。
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