001 勇者? いいえ、踏み台です
王宮の間。闇の王が待つ広間に、四人の勇者パーティーが足を踏み入れる。
かつて、同じ村で生まれ育った四人。
共に剣を振るい、魔法を学び、夢を語り合った。
王都へと旅立ち、選ばれし勇者の仲間として、肩を並べて戦ってきた。
幼いころは、ただ強くなることだけが目的だった。
だが――今、この瞬間、彼らの視線は交わらない。
「ついに、ここまで来たな」
セリアは剣を握る手に力を込めた。
「ふん、よくぞ来た。勇者よ」
魔王は玉座の前に立ち、嘲笑を浮かべる。
セリアは駆けた。魔王へ向け、一直線に。
「行くぞ!」
鋼がきらめく。だが、魔王は微動だにしない。
「愚かだな」
すると――
背後で、魔法使いのアレンが水晶を高く掲げた。光が走る。戦士のガルド、僧侶のミレイも動かず、それを見つめている。
「な…っ」
セリアの足が止まる。
幼いころ、アレンは魔法の才能を褒められたかった。
ガルドは村一番の剣士と呼ばれたかった。
ミレイは皆の心の支えになりたかった。
だが、勇者に選ばれたのは、いつもセリアだった。
アレンが冷ややかに笑う。
「お前ばっかり目立って、楽しかったか?」
ミレイが続く。
「ずるいよ。いつも、いつも……私たちと違う」
ガルドが剣を構えた。
「お前がいなければ、俺たちが英雄だった」
セリアの喉が震える。
「嘘だろ……?」
「現実を受け入れろ」
魔王の声が響く。
光が降り注ぐ。
魔王と勇者を包み込む破壊の閃光。
セリアは最後に、かつての幼なじみたちを見た。
幼いころ、共に見た未来の姿は、こんな結末ではなかったはずなのに。
「そんなの、あんまりだ……」
魔王は微笑んだ。
「人間とは、面白い」
光が広間を焼き尽くした。
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