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11.どうやって

 ヨシの部屋は立ち入り禁止だ。殺人の可能性が残っているため、見張りの警官もいる。朱鷺弥は、ずっと本棟の廊下を行ったり来たりしていた。

 柱のような正方形の部屋が、縦横に走る廊下に区切られて二列に九つ並ぶ様は、やはり日本家屋としての違和感を禁じ得なかった。

「なんでこんな造りなんだろうな」

「さあ……。悠紀子の三代か四代前のご先祖が自ら設計したらしいけど」

 すべての部屋には二カ所出入り口があるが、普通の座敷のように開け放つと一つの大きな部屋になるような造りではないため、無意味としか思えない。

「若葉、お前向こうにいたんだよな」

「ええ。トイレに行って、戻ろうとしたら話し声が聞こえたの」

「……ちょっと再現してみるか」

「うん」

 月並みだが、情報が限られている以上はしかたがない。

 いったん客間の棟へ戻り、事件当夜の若葉の行動を細かく見てみることにした。

「まず、トイレへ行くでしょ」

 ゆっくりと廊下を歩きながら、若葉は細かく記憶を辿る。

「この辺で話し声が聞こえたのよ」

 今朱鷺弥にあてがわれている客間の前で立ち止まり、ぐるりと周囲を見回した。木枠の格子窓がはまっていて、本棟の同じような窓が見えるようになっている。あのときは暗くてよくわからなかったが。

「おかしくないか? 現場とだいぶ離れてるぞ」

「そういえばそうね」

「大声だったのか?」

「ううん、普通のトーンだったと思う」

 いくら夜が静かだとはいえ、あんな所の声がここまで聞こえるだろうか。

「ちょっと待ってろ」

 朱鷺弥は走っていって、三分ほどで戻ってきた。

「聞こえたか?」

「え、何か言ってたの?」

「やっぱり聞こえないのか」

 昼と夜という違いはあっても、あのときの話し声は囁くような大きさだったから、やはりどんなに静かでもここにいては聞こえないのではないか。朱鷺弥はそう考えているようだった。

 では、あのときの声は空耳だったのだろうか。

「とにかく、続けよう」

 促されて、若葉は走り出した。なるべく当時に忠実に行動するようにいわれているので、全力で駆ける。渡り廊下を曲がって、あとは直線距離だ。

「長く見積もっても、二十秒前後って所だろうな」

 ヨシの部屋の前には、すぐに着いた。ずいぶん長く掛かったような気がしていたが、単純距離ではそれほど遠くないのだ。

「ここに悠紀子が座りこんでて、麗子さんはそこの襖に……」

 そして、夫妻は最後に部屋から出てきたのだ。

「朱鷺弥……」

「できなくはないと思う。やれるだけ実験してみるから、もう一度当夜と同じように行動してみてくれ」

「できなくはないって、何が?」

 朱鷺弥は、視線を転じた。その先には、真っ直ぐな廊下が延びている。

「この建物の造りを利用した、実に単純な方法だ。犯人はそれを使って、誰にも見られないように逃げたんだ」


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