crack out
男の2つの拳がぶつかった瞬間に、現れた炎の渦。
その技に呆気にとられていた暴漢ふたりは正気を戻した。
「うるせぇ!!死ね死ね!!!」
前に駆け出す男、横から瓶を投げてくる男。
どっちを取るとどっちかに当たるのだろうか。
答えは不動。
瓶は熱せられて形を変えて床に砕けた。
挑んだ男は、かざした手から出る灼熱に身を焼かれた。
悶え転がる男を尻目に、瓶を投げた男に近寄る。
小さい跳躍から顎を捉えるように出た右足。
視界がブレる衝撃を受けながら、ゆっくりと地面に倒れていった。
「一瞬で2人を…」
この男、出来る。
悶えてた男は消火した身体をはたき、スノウに向かう。
スノウを人質にするつもりだろうか。
「スノウ!」
亡霊から投げて渡される刀。
鞘から抜き出し、迫る男の眼前に突き出す。
「…俺が悪かったよぉ、見逃してくれよなぁ」
暴漢が止まらなかったら彼の顔面に突き刺さっていた所だ。
勢いのある女だ、と亡霊は思った。
「おぉ、君も戦えるんだねぇ」
逃げていく暴漢たちを尻目に炎の曲芸師が話しかけてきた。
「君は彼氏?一緒にいるなら守ってあげなきゃいかんよ」
でもこんな強いんならいいか、と笑う陽気な男。
「君たち名前なんていうの?」
重ねて聞いてきた。2人の自己紹介をすると
「俺はバーンアウト、バーンでいい。よろしくな」
するとスノウが
「バーン君ね、よろしく。私たちの仲間にならない?」
相変わらず勢いが凄い子だ。先ほどまで残るか残らないかの話だったろうに。
また彼もスノウが姫君ということを知らないぞーと亡霊は口を押さえる。
「仲間?なにそれ」
「私たち、H.C.って会社?チーム?なの。そこに入らない?」
「H.C.?どこかで聞いたことあるような…」
離れた街にも名は知れ渡っているのか?と疑問を感じた亡霊だったが、残りは説明した。
壊滅して立て直しをしている同志達がいること、戦力になる人を集めていること。
幸い流浪の旅人だったバーンはその日の飯はその日の内に主義だったこともあり入団する事となった。
廃アパートに戻ると入り口でぼーっとしていたエイトが気付いた。
「ふたりでどこいってたんだよー!俺も行きたかったなー !って新入り?よろしく!!!」
相変わらず元気な男。バーンも握手に応じた。
あっ、思い出したとバーンが大声を出した。
「ハなんとかってやつが過去に行った街で暴れていたなぁ」と
「それって俺達?」エイトが言うと、
「H.C.って名乗ってた気がする。最近幹部?かなんかになったんじゃないっけ?」
「誰だっけそいつ?」と真顔で考えるエイトをよそに
「あぁ、ハームだろう。あいつはうちのメンバーからだいぶ前に抜けたよ」と亡霊が言う。
「あれ?少し噛み合わないなぁ」
とバーンは頭を悩ませたが、亡霊が嘘を吐く人ではないと直感で悟っていたので言及するのをやめた。
場所は変わり、違う区画。
大雨が降っている中で街は爆炎に包まれていた。
「ふははははは!!オデがここも支配してやるよ!!!」
濃い顔の男、ハームが侵略していた。
後ろには無数の機械兵。見た目からすると天使たちのようだ。
熱気で陰影のついた顔、口角が上にあがるとこういった。
「オデたち、H.C.がな」
ハームの名乗った組織、そしてトムを囲み新体制で始まるH.C.
ここで2つのH.C.が生まれてしまった。




