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ファンタズマキア  作者: 9489
1章「塀の外」
5/51

力の所在

牙を剥いた肉食獣は、走って近づき腕を振りかぶる。

亡霊は身を屈めると、自分の居た場所に男の腕が振るわれていた。



「やるじゃないのッ…!」

しゃがんだ顔に膝を入れる。亡霊の顔に綺麗に入る。勢いよく顔は跳ね上がる。



「持って行かせて貰うぜ」

そこから亡霊の胸に連打、連打、連打、連打、連打、連打、連打、連打、連打。



思いっきり拳をぶちこんでいく。



腰を起点とした、上半身を左右に揺らした連打。驚異的な加速は彼の身体を待とうアーマー《双龍(ダブル・ドラゴン)

その能力は、シンプルに拳の強化。

街を暴れている配下を従える強者の力。



「後ろに付いてるスポンサーが違うッての!!」

「さ、お前をボコればインセンティブやべーからなァ」



強力な右ストレートが入り、亡霊は宙に浮き、地面に落ちた。

肋骨が折れたような錯覚、胴体がごっそり吹き飛んだ痛み。相対したオールバックの男は外見だけじゃない強さを持っている。



上体を起こしてすぐに片腕を飛ばすように走らせる。しかしあっさりと弾かれた。

飛び込んでくるような男の蹴りをまともに顔に受け、頭が左に揺さぶられる。



しかし、弾かれた腕は壁に突き刺していた。ワイヤーを巻き取りながら壁に移動する。高速すぎて更に頭がシェイクされる。



「あら、おめータフなんだなぁ。感触はリアルだったぜ」

「あんだけカラダに叩き込んで動けてるって並みの精神じゃねーな」



オールバックの獣はこちらへ駆け出す。

「気に入ったワ、俺はリュージっつーんだ」



「気に入ってても金貰ってる以上は喧嘩で喰わせて貰ってるんやわ。あんま俺の地元荒らしてるとコロさなきゃいけねーんだワ」



拳を握り、

「余所者とはそこんとこの"覚悟"がちげぇ。つーわけでヨロシク!」



気合の込めた一撃は亡霊の腕で防がれた。

「僕も黙ってやられるわけにもいかんのでね」

下からくる機械腕のアッパー。

咄嗟にリュージはバックステップで避ける。



ーー楽しい。楽しいぞ。

リュージはこの街で力でのし上がった。

ここまで心踊る喧嘩は久しぶりだった。

(こいつのタフさは異常だが、強さはそんなんでもねぇ。俺は無敗、いつでも無敗!

俺以外は動くサンドバッグ。負ける喧嘩なんてねぇ!)

いつもこうだったのだから。



空を切った機械腕は天井に刺さった。

そこからワイヤーを巻き取り天井に張り付く。



その体制から下に向けて数発パンチを放つ。

頭上からの攻撃に反応出来ず、リュージは攻撃を食らう。

それでも受けた攻撃はこちらが上。

ダメージレースは亡霊に圧倒的に不利だった。

「そこから落としてやるよザコが!」





覚悟か。

覚悟なんて語り尽くせないほどしてきたよ。



亡霊は心に思う

そうして着地、立ち上がったリュージの胴体に飛び蹴りを入れる。軽く体制を崩すそれの足を機械腕が掴む。



そして壁に投擲。X軸に吹き飛び叩きつけられた森野に待ってたのは容赦ない、もう一撃だった。



人間相手には出力を抑えてるはずだが、普通の対人より力を入れてしまった。正真正銘の一撃。

あー、頭がふらふらするなぁ。首をさすりながらみんなの所に戻ろうとした。



「ま…てよ。俺はまだ負けていねぇ…!」

「俺はこの街をてっぺん取る。クソみてぇな車椅子野郎じゃねぇ…誰にもでかい顔させねぇ…」



リュージが壁から出てくる。満身創痍。彼は気力だけで立っていた。



「だからってこうして関係ない人や街を壊して、傷つけていいのか?」



「うるせェ…この世界はそんなもんだろぅがよ…よぇぇ奴からくたばる…算数も何もかも喧嘩の役にはたたねぇ。」



「盗りてぇから盗る、ムカつくから殴る、俺より偉ぇから消す、ただそれだけだろうが!!!!」



身を乗り出した瞬間、無慈悲にもまた壁に叩きつけられた。



「…」



亡霊は静かにその場を去った。

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