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ファンタズマキア  作者: 9489
4章「さよならH.C」
43/51

受胎の大樹

それをみたエムナが一番驚いていた。

痛みとシェイクされた頭が落ち着いた頃、サンタナの腕には大樹が生えていた。



触るとボロボロと装甲が剥がれていく。



大きな木で腕を思うように振れない。



トムの能力は酸で溶かした装甲に水銀を当てて化学反応で出来る大樹。





アルマの行動を阻害し、破壊する。

顔に張り付いた仮面も相まって、次にどんな手が来るかはわからない。



そう呆気にとられていると、トムが眼前に近付いていた。

彼の長身から飛び出た脚は、想像以上のリーチを伴いサンタナの右のアルマを粉砕した。

半壊し、床に散らばるそれを見て感じる。



強すぎる、勝ち方がわからない。

顔も見えないし、底も見えない。

水銀と酸、応用力がありすぎる。



光る小型のシャボンの上に乗り、移動している時点である程度の操作も可能。





「でもよぉ!!!」

サンタナは諦めない。

トムの弱点、それは殺意がない事。

あくまで行動阻害に力を入れている以上、逆に殺害しないような手ごころがある。



実の真実、サンタナは誰よりも欲深い漢である。

自分が一番に見られたいが、それをハームのように前面には押し出さない。

自然に自分を崇拝してほしい、とだけ思っている。



また、他人が持っているものが気になる。

その為に沢山危ない橋を渡ってきた。

金、心、道具、夢。

沢山のものを奪っても満たされない彼は、やがてこの星を欲した。



「いつか俺がこの国を手に入れ、そしてこの星の支配者になりたい」



しかしこの世はそう簡単に他者を抜くことを許してはくれない。

だから人の顔色を伺い、タダである優しさを振りまき見返りとして何かを受け取る。



ユティという女の腕は確かだった。

手元にずっと置いておこうと思った。



マジェスタの地位が欲しかったが、

マジェスタが欲しいわけではなかった。



スノウとグレイは仲間に引き入れるには手間だと感じた。だがグレイはまだ光るものがあると感じた。



頑固に突き進む亡霊の精神を奪いたかったが、後々の邪魔になると悟った。



ハームは目立ちすぎるから、いい隠れ蓑だと思った。

メシアとは目指す先が違うが、馬があった。



エムナの献身的な姿、それは性的な目で欲しかった。



ユティとH.C.を出るときに着いてくるものだと思った。

しかし亡霊と長く居過ぎた。







亡 霊 と い う ウ イ ル ス を 仕 込 ま れ た の だ。



「…」

そしてトムという想定外。







「ははは…」



気がつけば上がっている口角。



「何がおかしいのよ!!」

エムナは叫ぶ。

「あなたはもう負けよ、もう亡霊もくるから、罪は償いなさい」





「何を言っているんだ?」

顔を抑えるサンタナ。

「俺はいつからひとりと言った?」







同刻、やっと亡霊が追いついたようだ。



「んだよ、俺をこんな所に呼び出し・・・」

遠くに3人の人影。



恐らく右前方に居るのがエムナだろうか。







数秒の事だった。

次の瞬間にはエムナは地上にいない。



元いた場所から5mほど上空か。

胸の谷間から貫いた真っ直ぐなソレから生温かい液体が溢れ出た。



「え、」

亡霊は目の前から消えた彼女を、周りを見渡し探した。







「!!!!!」



亡霊とトムはそれを見て気付いた。

紅に染め上げられた天使が背後にくっ付いたまま、槍を突き刺して吊るしていることを。





脚を使って、汚いものを捨てるかのように貫いた槍からエムナの肉体を地面に落とした。







「うあああああああああああああああああああああああああ!!!!!」



地面に肉がぶつかる音と同じく、既に《紅い悪魔》に向かって腕が飛ぶ。

獲物を狙う蛇のような奔流に悪魔は無感情に避けていく。





「…亡霊」

トムが、亡霊の冷静さを取り戻すように声を掛ける。

指をさす先、其処には笑う同胞。

いや、同胞だったもの。





「サンタナ・・・テメェェェェ!!!!!!!!」



サンタナに向かって飛び出す亡霊、しかし上空から槍をこちらに向けて降り注ぐ悪魔。



「おい、殺すのはやりすぎだって。まだ価値あったのに」

心の底から残念がる声。しかしそれは咎めるだけで瀕死の彼女を労わるものではない。





亡霊がサンタナに辿り着く前に

無言で遮ってくる悪魔。

「てめぇ、邪魔なんだよ!!!!」



亡霊の怒り任せに振る腕と、槍とぶつかり火花を散らす。

赤くなった装甲と黒い角を追加したそれを見て、つい出てしまった声。



「お前、前に俺に挑んできた奴か?」

返答であるように攻撃で返される。



「いまお前と遊んでる暇はねぇんだよ、後でお前もスクラップにしてやるからサンタナとやらせろ!!!!!」



エムナの出血量、胴体を貫通している。

長くないのは明らかだ。

本当なら、介抱する事が正しいのかもしれない。



でもそうではない。

こんな目に合わせた奴らは始末しなきゃいけない。

ここで逃したら、抵抗しなかったら次は自分が被害者となる。



復讐を人生の道として既に選んだ亡霊は、仇討ちが何よりの救済だと考えている。





だが、それを見透かすように



「亡霊、お前の理論で行くとそいつには勝てないぜ」



サンタナの声が耳に響いた時、悪魔に蹴り飛ばされて吹き飛んだ。















何故ならそいつは











お前を殺す為に全てを捨てた男だからだ。

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