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ファンタズマキア  作者: 9489
4章「さよならH.C」
40/51

fallin'

剣を振るうが、それは幻影。

マジェスタの形をしたそれは斬られたところから揺らいで消えた。



すると背後からくる刺激。

肌を刺すようなその痛み、雷撃に顔を歪める。

銃型アルマ「Guilt/no Guilt」

右手に握られたGuiltはスタンガンのように紫電を放ち、雷撃を纏った銃弾も射出できるスタンガンとスタン銃の複合型。



機械には血液の様に流れている電気。

一瞬にして放たれるヒビ割れた模様は、触れるものの痛覚を撫であげる。



シックスは自分の大剣の切っ先が当たる様に中距離を維持しようとする。





「近付けねぇし、離れたら危ねぇ」



剣を思いっきり背後に引き、回転斬りを繰り出す。

しかし、

「ぐっ…ぁ…」



背後から現れたマジェスタは首元に狙い、紫電を放つ。

頚椎から放射状に伸びる衝動は、シックスの体を内から焼く様なものだった。





マジェスタの左手の銃「no Guilt」

打ち出した丸い弾はプロジェクターとなり、像を映す。

これでマジェスタは自分の幻影を増やしていく。





あくまで虚栄、そうではない。

「所詮は偽物なのはわかる…だけど…」



人間は物理的な痛みにはいずれ慣れていく。

だが皮膚に触れると勝手に反射行動を取るような痛みは、幾ら食らっても慣れる事はない。



「…何も思いつかねぇ」

刺激的な痛みは思考さえ吹き飛ばす。

簡易的なトラウマ、向けられた銃口を見ると一瞬顔が強張る。



その間にはマジェスタは次の攻撃へと移行している。



「ぐあああああああああああああああッッッッーーーーー!!!!」



次は銃弾が肩と掌を撃ち抜く。

肉が抉られる痛みと、中から響く電撃。



「それッ・・・でもッッ・・・!!」

歯を食いしばり、一太刀を入れるために全身するが





太腿から爆ぜた血液は床へと付着すると同時に身体も地面に打ち付けた。



言葉も出ない、

完膚無きまでにシックスはやられていた。



掌を抑えて横たわる彼にマジェスタはゆっくりと近付いていく。





「俺は…お前に聞かなきゃいけねぇ」



「…何故サンタナを守れといった、カムルを殺したのはサンタナだろ」



マジェスタは冷めた目でシックスを見下ろす。

「マジェスタ、お前がカムルを邪魔だと思っていたのは嫌でもわかる」



「でもカムルがいたから勝てた戦いがあったから何もしなかったんだろ」



シックスは疑問を抱いている、そしてそれは確信があるから口から出ようとしていることも。

「俺たちH.C.が開発していた新武器、盗まれたのはもちろん知ってるよな?」



「俺はずっとサンタナが怪しいと思っている。そして」





マジェスタの目が変わる。

銃口を向けて、見下げたシックスを撃つ。



だが、そこに彼はいなかった。

「開けてくれた腕の風穴、そこに爪たてたら痛すぎてびびるどころじゃなかったわ」



横から回り込み風を切る剣。

マジェスタは左腕を盾に受けるが、

腕の装甲から出る火花。そのまま勢いで切りとばすと足は地面から離れる。



吹き飛ばされたマジェスタを追いながら追撃を入れようと近付く。

「お返しだっ!!!!」

シックスが振り下ろした剣はマジェスタの胴体を蹂躙する。



「サンタナの入れ知恵だろ、俺はこう見えて人を選んでるんだ」

シックスの普段の陽気さ、それは道化を演じることで面倒毎から逃れる為。



深く心を開くと、その分人の心は洗脳しやすい。

それが一人で生きていると思っている人間に対しては尚更。



「亡霊にもマジェスタにも仲が良すぎると思ったんだよ」



「警戒心強めのお前らと仲良くなれたこと。それは普通なら奇跡なんだよ」

マジェスタは無言で立ち上がり、電撃を放つが、



「あいつらの精神的支柱となったサンタナは怪しい」

剣を床に突き刺すと、纏った雷は地面を走っていった。







本来彼らは強くない。

彼らは強くなろうと現実に抗った者たちだ。

現実の辛さに傷つき、些細な事でも苦しんで生きた先。



そこで自分を守るために、理想の自分を演じて無傷なふりをする。



「亡霊と名乗っているやつと、幻影を使って頭脳で戦うお前らは似てる」



純粋さと程遠い擦れ方をしている二人。

だからこそ肩の力が入りすぎて、意外に変な所で脚を掬われるとずっと見てきた。





剣を握る男は呟いた。

「ガルムのメシアが攻めてきた」

「俺はこれは仕組まれた戦いだと思っている」



「この階まで上がってきたがサンタナを一度も見ていない」

「あいつは天使が攻めてくる事を見越して逃げたんだよ」



怒りが頂点に達するマジェスタ。



「黙って聞いてれば何故そう言える」

後ろに飛び、シックスと距離をとると幻影を生み出す銃弾を打ち出す。



その数5つ。



「お前やバンビみたいなバカばかりの中であいつだけは俺の気持ちをわかってくれた…!」

人を率いる王故の孤独、些細な事だが人の依存は緩く人を縛り上げる。



マジェスタならできる。

マジェスタがいれば安心だ。



従っている人間達は嫌々従っているわけではない。



少しだけ強大な存在を祭り上げて、その傘の下にいれば雨に濡れる事はない。



マジェスタをここまで大きくしたのは味方達でもあるが、依存し切った部下達に嫌気がさしていた。












しかしそんな思惑を知らず、誰よりも近くで寄り添っていたと自負する声は、悲壮な叫声と共に。

「なんで…!!!!」



バンビ、マジェスタの秘書を務める女性。



「私だってわかってるわよ、わかろうとしてる!!!!」





「貴方のために何でもしようと頑張った、でも貴方は私を見てくれなかった!!!!」





一途な愛、自分の全てを投げ打ってでもマジェスタに認められたい彼女の感情はなによりも真っ直ぐだ。



故に

「俺がたまたま気の迷いで拾ってあげた命だろ」

「俺のお陰で今があるのに、それを投げ捨ててもそれは俺に帰ってくるだけだ」

「そもそもお前の承認欲求の為に俺がいるわけではない」



右腕から放たれた小さな鉄の弾は、バンビの胴体を貫いた。







「おま…ふざけるなよ!!!!」

声より先に駆け出していた剣士は、左右に振るが大振りなそれは冷静なマジェスタは最小限の動きですり抜けていく。





「シックス、お前はたしかに友と言える男だった」

やはり女は感情的で理解ができないな、と吐き捨てるように後ろに下がると、

シックスの背後から電気をまとった分身が続けて襲いかかる。





「…ぐっ、避けきれなかったか」

歯を食いしばり、身を焼く稲妻を耐える。



握り込んだ剣、液晶パネルを埋め込んだ刃の樋を操作する。

電力を大幅に消費し、推力を持って加速する剣となる。



加速度を持った其れから放たれる断の流星は一撃必殺とも言える威力を持つ。



しかしその手の内は既にバレている。

何せ組織のボス、情報掌握に長けている男。

シックスの動きはある程度読まれて当然だった。



「マジェスタ、聞かせてくれ」

嫌々目線を向けたそれは、話せと促しているようだった。



「新兵器、奪ったのサンタナだろ」

H.C.の新兵器、天使の槍を昔回収したがらそれを改造して出来たもの。

そしてそのコンセプトはスノウの力に匹敵せんと近付いたもの。



放たれた銃弾を持って返答とされる。

しかし其処には既にシックスはいない。



加速した剣は音と土煙だけを巻き上げてマジェスタの左後ろにいた。



「!!」



初めてのマジェスタの焦燥、

「ごめんな、反省してくれ」



疾風迅雷、無防備な背中に高速で突撃した。

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