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ファンタズマキア  作者: 9489
1章「塀の外」
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陰謀論

被っていたボロ布をそこに捨てた。

これで晴れて秩序への反逆者である。



左腕は20%前後の稼働率、右腕も60%を切っており戦果としては痛いものだった。

(ただ面白いものは手に入ったが)

腰には、白い装甲に鈍色の筒が付いていた。



ボロボロの身体を動かしながら大通りに合流する。



若い男女3人が、暴徒に取り囲まれていた。



(そういえばこんな状況だったけか…めんどくせぇ!」

最後の方は、言葉となり発せられ、暴徒に突撃した。



男女は呆気に取られていたがひとりふたりと投げ捨てた。男はすぐに状況を理解し、暴徒に応戦した。















ーーーーー・・・





撃退後、男は声をかけてきた。

「助けてくれてありがとう。いきなり俺たちは襲われたんだ。俺はサンタナだ。よろしくな」



少々筋肉質の男は快活にそういった。

黒髪のすらっとした女性をユティ、ボブの女性らしい佇まいをエムナと名乗った。

「俺たちはいつも3人で行動しててな。こうして俺が一人で戦わなきゃいけない場面もあって大変なんだよ」

「もし良ければ、この騒ぎが収まるまで共に行動しないか?」



いま天使に敵対している上に、暴徒を幾ら何でも倒し過ぎた。

今回の暴動は、一見悪ガキどもの単なる悪ふざけのようでそうではない。



ある時間を境に一斉に暴れ出している。

そして悪ガキにしては、殺傷力のあるマキナを与えられている。

秩序の犬も、秩序を乱す暴徒ではなく亡霊をターゲットに定めて攻撃をしてきた。



つまり計画性のある暴動であり、その後ろについている主犯は莫大な資産家である。

機防隊は塀の中の技術を持っている以上、塀の中と何かしら繋がりがあるものが敵である。

つまりこいつらを巻き込むわけには…

「見た感じ、マキナの損傷も酷そうだな、じゃあ決定で!」

「いや、待ってくれ。俺といたら危険だから…!」

「じゃあ尚更ひとりでいない方がいい。足は引っ張らないからさ」



無理やり押し切られた、しかし腕も全快ではない以上、今は彼らと行動した方が良いと判断した。



サンタナのアームは前腕を覆った大きなものだった。

筋力のあるものが使える、汎用に多少の戦闘能力を加えたものだ。

マキナの品質的にも、先ほどの戦闘する姿でも背中を預けても問題はない、と感じた。







そうして1時間、隠れる先を探しながら当てもなく街で戦闘を繰り返した。

疲労もピークを迎えたので食糧をコンビニで手に入れて目立たない雑居ビルに隠れた。



「ユティはアームのリペアがうまいんだよ!俺たちみんなの整備してくれてな!」

彼女は頰を赤らめて軽く否定する。恥ずかしがる子なんだろう。



しかしユティは続けて

「私で良かったらその腕、治すよ」

断る理由がなかったので修理を依頼した。



朝が近づいており、軽くご飯も食べたら睡魔が来た。

「こんな状況下だから仕方がない。ユティと俺で起きて見張りをしておくよ。エムナと君は寝ときな」

「いや、でもいつ誰が来るかわからないし、まだ街では暴徒が!」

「こんな腕じゃあ仕方ないでしょ?私治しておくから、逆に今度は守ってほしいの」

ユティの言葉にやられて聞き入れた。









すっかり眠ってしまってたみたいだ。ユティはそれに気付き、修理が終わった事を告げてくれた。

油やサビ落とし、簡易的に出来る範囲でやってくれたようだ。



この間に暴徒の突撃はなかったそうだ。次は代わりにエムナと二人で見張り番になった。

エムナは少し距離を置きながらこちらを見てきた。昨日の今日で知らない人と二人で起きてるというのも心地よいものではないだろう。



この時間で自分のアルマの動作確認をする。予想以上にパフォーマンスが上がっている。良いメカニックだ。3人のアルマがよく調整が効いてるのは彼女の力の賜物だろう。



そうしていると階段を上がる下卑た声が聞こえた。視界に俺らを捉えた暴徒は下衆な笑顔をした。



エムナに迫る暴徒。ひとりで床に寝ているユティの安全に目をやった、誰も近づいていない

「エムナ!」叫んだ頃には足のアルマを稼働させて半月蹴りを繰り出していた。



そこから蹴り上げた右足を腰の勢いで回しながら地につけ、それを支点とした左回し蹴りを放った。暴徒は不意打ちの攻撃に呆気に取られて一歩下がった。



「この子は強い」そう確信した。



しかし暴徒も負けておらず、距離を保ちながら大層なグローブ型アルマを打ち込んでいく。やはり暴徒といえど、破壊を愉しむ為に"祭り"に参加した身、一筋縄で戦える相手ではなかった。





互角の打ち合いが繰り広げられていた。





本来、脚部用アルマは戦闘には向いていない。面積が縦に長い以上、機能が最低限しか積めない事、耐久性に難があること、そして 下手に作ると殺傷力が上がってしまう事だった。



あくまでアルマの破壊が主な喧嘩とされている中で、全身に着込むパワードスーツ以外ではほぼ足技は使わないものだった。



しかし女性ならではの股関節の柔軟性、基礎的な足の筋力は腕の筋力の数倍ある事などを含め、今拮抗してる理由はそこにあった。

(なによりストリートファイトでは足技使う人が稀だからやりづらいだろうな…)



亡霊は筋力の低さを高耐久の装甲、ワイヤーなどの拡張性、そして卓越した操作性で力のある相手の優位に立った。

自分と違うやり方で"暴"をいなしている姿に驚きを覚えた。



目の前でぶつかり合う打撃音。

「まるで格闘技の試合を見てる感覚だな」

自然と感嘆の声が漏れる。



お互い決定打はないがダメージは蓄積している。相手がここまでのやり手ではなかったら決着はついている頃だった。



「エムナは強いだろ、俺ほどではないが十分な戦力だ。ユティはみんなの為にメンテナンスをしてくれる、自分も何かしたいと自ら俺に戦い方を志願してきたんだ」

何処かに行っていたサンタナが気がつけば側にいた。今までどこに居たんだ。



そうしてエムナは右足を後ろに引きずる。溜めがあった後に右足から機械仕掛けの加速音が唸る。本日最速の一撃が炸裂した。



しかし左腕のグローブで耐えられていた。半壊したそれは小さく意図しない電気が流れている。

「これで終わりだ」男の右拳が出るより早く、男は壁に叩きつけられた。しかし



「残念だがこれは試合じゃないからね」



亡霊の腕がそこまで伸びていた。

男は勢いよく壁に叩きつけられ、ピクピクと痙攣している。



「全く、同感だよ」

咄嗟に体を庇った片方の腕から、衝撃が伝わり横に吹き飛ばされる。



壁に打ち付けられるが、着地する。



「なんのつもりだい?」亡霊が睨みつける。

「お前もやった様に、俺も同じことをしたまでだ。俺の仲間をよくもやってくれたなぁ」

気だるそうに柄の悪い男が立っていた。



「この街で余所者が入ってきた所為でスポンサーがお怒りなンだわ」



危険な肉食獣が、牙を剥いた。

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