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ヘレナ・コーポレーション ビル
30階建
1階 バー
2階 ラウンジ
3階 事務室
4階ー10階 倉庫
11階ー15階 兵士居住区
16階 研究所
17階 レクリエーションルーム
18階 病院窓口
19ー23階 病室
24ー26階 幹部居住区
27階 管理室
28階テラス、会議室
29階 社長室
30階 屋上
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[28階 管理室]
「凍傷ってわかるかい?冷たさに耐えられなくて皮膚が熱を持って焼けるんだよ」
いやーつらかった、と高らかに謳う。
スノウに氷漬けにされた狂気の男、メシアだ。
足から血を流し倒れるバンビ、立ち込める硝煙の香りから察するに脚を爆破されたのだろう。
抵抗はした、だがこの男は強すぎる。
性別が関係なく躊躇しない所は戦士としては有能な証。
悪魔的な性格に、その魂を授けた神こそ憎らしい。
「さぁお姉さん、ここらでドロップアウトっつーことで」
バンビは女だった。
強くありたく、認められたい。その為に人より動き、人より考え、人より努力したことを自負している。
戦争孤児はバビロンでは沢山いる。
女という事で命の危険に脅かされる事が多く、逃げるように裏の世界に浸った。
そんな生活が続くある日、光が射した。
「こんな所にいるのはもったいないな、俺の側にいろ」
今から5年前、まだ何も持たないマジェスタだった。
捨て猫のような私を拾ってくれた、必要としてくれた。
それだけでいい。
ただ退屈な夜に、呼び出して頭を撫でてくれるだけでいいの。
あなたの光を得るだけで、私も少し輝ける。
でも…
どこかで歯車が狂ってしまった。
それはいつからかはわからない。
1つになった時?
すれ違った時?
2人じゃなくなった時?
あなたに出会った時?
何かを抱えていくたび、何かが膨れ上がっていってく気がした。
何かを成し遂げた時、何かに打ち負けた時。
マジェスタと私の間に何かが入るたびに、広がっていく気がした。
世界も、距離も。
綺麗な子が入ってきた。
故郷から出てきたとは聞いたけど、生まれつきひとりじゃなかった。
2人の従者がいて、其処には男もいた。
なんでH.C.に入ってきたかはわからないけど、胸が苦しくなった。
私も私で部下が増えた。
存在をアピールするように率先して動いたけど、それを采配した私じゃなく彼女たちが評価された。
ルーキーはいい子達ばかりなのは知っているけど、無意識だからこそ其れもモヤモヤした。
何で"男"と"女"っているんだろう。
そんなものがなかったら、私もきっと…
バンビはそう思った時にはバズーカの引き金を引いていた。
ここで死んだらもう逢えないかもしれない。
まだ側にいたい、側に…!
打ち終えたバズーカを投擲するが、弾き返され地面を滑っていく。
「じゃあどうすればいいの!!!」
心の叫び。何でこんな時にも側にいてくれないのか。誰に対する怒りなのか。
メシアは冷めた目でこちらを見ている。
「何だその攻撃、ダサい事するなよ」
5mほどの距離を詰めず、片腕の先を爆発させると爆風でバンビはメインコンソールに叩きつけられた。
彼は管理室を出た。
最上階でも向かうか、と首を鳴らすメシアの目が変わった。
「これはこれは、H.C.最強候補であるシックスさんじゃん」
片腕を前に腕を構える。
快進撃に王手をかける。
[22階 廊下]
まだ戦いは終わっていなかった。
瓦礫を投げたりしたが無傷なところを見て亡霊は動くのをやめた。
ワッチもヘイトを稼ぐような動きをするが、機械天使には感情がないようだ。
「中身人間のはずなんすけどねぇ」
間抜けな顔をするワッチ。ほぼ4体を捌いているのはミスティだ。
「・・・」
表情を変えずに手を忙しなく動かしている所を見ると、集中しているのが伝わる。
すると
「おーーーい!!!ぼうれーーーーー!!!」
聞き覚えのある声、勢いよく現れたのは十字剣の宣教師、エイトだ。
それは天使たちの後ろから現れ、こちらに一直線。
飛びかかり、身の丈以上の十字剣を振り回すとボウリングのピンのように天使が吹き飛ぶ。
「助けにきたよ!!!」
亡霊が戦えない事を知って、ずっと探し回っていたそうだ。
「うわぁ!エイトさんも揃った!!!」
ワッチも声を上げるが、
「誰?君?」と返すとワッチな隅でシクシク泣いていた。
ごめんごめんと肩を叩くと
「…エイト、助けてくれないかな」
起き上がった天使からの攻撃を、ミスティは鱗の壁を作り防いでいた。
あぁ、今やる!と返し後ろに大薙ぎすると装甲が砕けた。
ミスティの鱗でごく僅かな亀裂が入っていたようで、そこにぶつけた剣は天使の鎧を殺すには十分だった。
さらに流れるように3人は攻撃を入れて天使たちは沈黙した。
一呼吸おいて、亡霊は
「頼む、俺を研究所まで連れて行ってくれ」
頭を下げた。すると
「らしくねぇが亡霊が頭下げてるならやるしかねーよ!」
エイトに続き、ミスティは
「亡霊が戦えるなら、私達のチームも研究所いるからそこまでは一緒ね」
「俺もいきます!勉強なるんで!」
ワッチは大きく腕を振り回す。
「お前、そもそも補充するまで戦力ならんだろ」
「へへへ〜〜そんなこと言わんといてくださいよ〜」
階段に向かう4人、研究所の16階へ急ぐ。
[30階 屋上]
「…サンタナ」
マジェスタの向く視線の先、
「すみません、ドジって機防隊に見つかっちゃいました」
「ここまでみんなを巻き込んだのは申し訳ないんで、俺ここ辞めます」
サンタナの決意は固い。
信念を抱えた眼をしている。
「認められんな、お前はH.C.には必要だ」
必要なものは手にいれてきたマジェスタ。
それほどまでに彼は。




