蝶よ、花よ、君たちよ
スノウはミスティに声をかけた。
私も戦うから、女の子だけでチーム組もう!と。
ミスティはびっくりとした顔で、ハツラツに話す彼女の勢いにおされ首肯した。
(戦場ではずっと私が守らなきゃ・・・)
彼女が更に使命感を感じていたのを露知らず。
「じゃあ他の仲間見つけなきゃ〜♪」
また後でね〜と鼻歌を歌い消える姫君。
心配だと頭を抱える家臣であった。
……
………
数時間後、ミスティの前にスノウが連れてきたのは。
衛生兵のマルシー、
整備部のサニー、
事務員のフラッフィー
(大丈夫かな、これ…)
冷や汗が流れる。スノウはにこやかにみんなでカフェいこうよ!と先に歩く。
日の当たる席で円になって腰掛ける5人。
ちなみにエムナにも声をかけたそうだが、亡霊が元気になるまでは側にいたいと保留されたようだ。
「で、みんなどんな人?」
ミスティは驚愕した。スノウが仲良くなった人ではなく、これから仲良くなる人たちである事に。
「私、サニー。整備部所属」
セミロングの小柄な女性。作業着の手を腰で巻きつけている。
「主にプログラミングを受け持ったりしてるわ。全部ってわけじゃないけどさ」
その割にタオルを首に掛けているよねとスノウ。
「あぁ、試しに動作するかも私がやってるのよ!マネキンをオラッ!オラッ!ってしばいてる!」
軽くパンチを撃つが、早すぎて破裂音が響く。
(えぇー…)
やばい人だ。目が笑っていない。
半分仕事で、半分ストレス発散だ絶対。
「うん、じゃあ戦える!メインの戦士だね!!」
スノウは元気に答える。
それでいいのか。
次は、と呟くと
「…マルシー」
少し暗めの黒縁眼鏡のおかっぱの子。
「…可愛い女の子がすき。スノにゃんとか、ミセスティーンとか…フフフ」
怖いよ!!!
というかミセスティーンって私?何そのあだ名!!!
「あなたは何ができるの?」
「可愛い女の子を治す…スノウちゃも治した…」
スノウの恩人だった!変なこと思ってごめんなさい!とミスティは内心で反省した。
そして、とスノウが言うと
「私、フラッフィーっていうの、ふふふふ」
雰囲気からわかっていたが、
ふわふわの不思議ちゃんだこの子!!
「バンビの同郷なんだ、戦い方わからないから事務してる!」カシャ
何故、写真撮られた???と写真嫌いのミスティは狼狽える。
「なんかみんなら強そーだから私も戦いたい!」
謎にやる気マンマン。ちょっとこれで大丈夫なのかと白目を剥く。
パシャ
撮るな。
「チーム名なんにするー?」
ケーキを頬張るスノウとマルシー。
「えー、かっこいいのがいいなー!」
「レオンとかどう、かっこよくない??」
「…ありっちゃあり」
「もっと可愛い名前がいいと思う…キャンディポイズンとか…綺麗な毒…」
「うーん、このなんか掛かってるソース好きだからフランボワーズでいいじゃん」
食べているチーズケーキを指差してスノウが答える。
決定だ。
決まったという事でトレーニングいくよ!とスノウはバンビに連絡した。
場所は研究所の一画、VR空間での戦闘訓練となる。
ヘッドギアを皆嵌めて、持っているアルマのデータをインプットする。
H.C.の戦闘員は基本的に実践形式が多いが、こういう施設を利用するのは無いわけではない。
バンビは操作役として外からモニターで監視する役目を担う。
仮想空間の街に降り立つスノウ達。
ターゲットとなる黒いマネキンが現れると、
「私がなんとかする!」と白天華を振りかざすスノウ。
両手で持ち、横薙ぎにすると半径50mが凍りついた。
もちろん、仲間達も。
「あっ、やりすぎた…」
頭を掻くスノウに、服に鱗を忍ばせて上空を浮遊するミスティが居た。
「…嫌な予感がしたから飛んでよかった」
最近得た新技、白兵戦は得意でも空域を支配できるものは少ない。
亡霊の戦闘データが皆に共有された時にこれからは制空権も1つの要素となると告げられた。
そして5体のマネキンに鱗を散弾のように浴びせるとクリア。
倒すと段階があがるのか、と納得した。
ステージが変わる為に暗転が入ると女性陣の声が聞こえて来た。
スノウが凍らせたことを平謝りしているようだった。
順調にクリアしていくとわかったことがある。
スノウが出力の調整が出来るようになったこと。
サニーは操作技術とアルマの調整、最適化で自分に扱いやすい所で維持してるので戦闘力が高いこと。
マルシーは戦いに乗り気ではないが、敵意の察知が早いこと。
フラッフィーは謎だ。適当に散歩してると思えば衝撃波を出したり、相手を爆発させたりしていた。
チグハグではあるが、1日のトレーニングで何とかチームワークを得て来た。
チームワークが無いことがチームワークなのかもしれない。
バンビにお礼をし、5人は研究所を後にした。
最近研究所で物品が紛失する事が多いらしい。
整備部のサニー以外が入るには幹部クラスの権限がないと認められないようだ。
バンビが付きっきりだったのはそういうことだったのかと合点がいった。
スノウは、自分の部屋のある階に辿り着くと、エレベーターの前でグレイが待っていた。
ご飯を作って待っていたらしい。
これから頑張ろうと、笑顔を返した。




