frostbite
白雪合の一件から1週間。
亡霊はまだ完治していなかった。
「おっす、元気か」
サンタナ。ルーキーの中でも敵のボスであるハーザクを撃破した功績が認められ、幹部昇進したらしい。
「ぼちぼちな、ってか久しぶりだな」
亡霊も返事を返す。ユティが残骸となった亡霊のアルマを治す為についてきたようだ。
「ま、お熱いようでおふたりさん」
「もう!亡霊も変な事言わないでよ!」
ユティは顔を真っ赤にする。ガッハッハと大口を開けるサンタナ。
ユティは惚けた顔を元に戻し、
「パーツはミスティさんが全部回収してたみたい。一応いまリペア中だよ」
後でお礼言わなきゃなぁ、と亡霊。
耳のインカムはわざと置いてきたことを思い出した。
「治ったらお礼いうよ、ユティもありがとうね」
にこやかに返すと、サンタナが用事があるとの事で病室を後にした。
ーーー
ーー
「というわけでお忙しいところごめんな諸君!」
幹部会議。マジェスタは皆の顔を眺める。
「まずはバンビ、新入りたちの中で立ち回ってくれた事、感謝する」
頬を赤らめるバンビ、彼女にも弱いものはあったようだ。
映し出された画面を追うと、トムは電磁シールドの解体を行なっていたそうだ。
どうにもならなかった時にヘリコプターでマジェスタを通す為に。
3人小隊で解体作業をやっていたらしい。
トムはH.C.の裏、隠密機動隊隊長である。
少数精鋭で表に出る事をあまり良しとしない。
ガスマスクの裏ではどんな顔をしているか、サンタナにはわからなかった。
幹部役員はマジェスタを含めて7人、
会の進行役のバンビ。
マジェスタの秘書で軽度な医療とメンタルケアが主な役割を持つ。
疲労が絶えない社長を裏で補助しながら、表立って指揮を取る一面もある。
何よりH.C.の中核に位置する女性だけあり、女性からの支持率が高い。
社長の護衛を務めていたシックスだが、この度自分の部隊を持つ事となった。
今回配属となったSilver windの所有権を主張した事もあり、彼らを含めて特攻部隊となった【Silver wind】の首領を務める事となった。
メインの主力部隊を率いる金と黒のツートンヘア、カムルガはマジェスタに噛み付いた。
「入ったばかりの新入りを役員にするのはどうかと思うが?」
彼は古参の戦闘員であり、戦闘員の中で評価が高く成り上がった経緯がある。
戦場の厳しさと、組織の厳しさを知っているからこそマジェスタの判断に懐疑的だった。
何より彼が任された6つの主力部隊の内、3つがサンタナが上に立つ。
サンタナは更にルーキー達のリーダーも兼ねる事となった。
カムルガの言葉に対し、社長は
「実力だ実力、いつまでも言われたことしかできないなら評価は下がるものだが?」
カムルガは保守的だ。街の抗争鎮圧にも積極的ではない。自分達の属するこの組織さえ守れればいいいいのだ。
「…オイラはあんたのために戦ってねぇ」
舌打ちと共に吐き捨てた言葉、
カムルガの上司達はマジェスタが昨年起こした大規模な抗争で命を落とした。
すると、
バンビはマジェスタの頭を軽くはたき
「はいはい、やめなさい。今こんなとこで揉めても仕方ないでしょ」
腕を組んで椅子の背に力を込める姿に、kmが納得していないのは伝わった。
「あとスキンの新型が実装された。服に関しても白雪合の技術で耐刃機能を大幅に高めている」
業務連絡として伝えられる装備の充実。
話としては一度着て各々調整しろ、との事だった。
最後の席に座るはスノウ。
白雪合の姫にして、噂の実験児。
「白雪合を手に入れたということで、国中にスノウの顔出しで放送を行った。この街の敵も居ないということで俺たちは一企業だが俗国という扱いになっている」
「当分は政治活動と付近の街との関係の調整に入る。つかの間の平和を感じていたまえ」
そう告げるとマジェスタは会の終了を宣言した。
部屋から出ると、バンビは外で待ち構えていたスノウに声をかけられた。
「いきなり役員にしてごめんねスノウちゃん。怪我は治った?」
「はい、お陰様で!」笑顔のスノウ。処置を終えて寝たら元気になったそうだ。
「そっか、よかった」微笑み返し、バンビは離れようとすると
「私、自分のチームを持ちたいんです!!!」
そうかそうか、頑張ってねと返すバンビ。
数歩歩いて元の位置へ戻り、
「え、どゆこと???」
先日の戦いで無力だった自分が始めて戦ったこと、みんなの背中を見てた中で必死に戦うみんなの気持ちをわかったこと。
そこで女だけを集めた部隊を作りたい!との事だった。
(おもしろいけど、いみわからない子だなぁ)と頬を掻くと、
「バンビさんは強くてカッコ可愛いから手伝ってほしいです!!!」とスノウ。
掴まれた腕を振り解くわけにもいかない、苦笑するバンビは頷いた。するとブンブン腕を上下にされた。
(あー、いいのかなぁこれ。大変そうだあ)
彼女が何を思うか、姫は知らない。




