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ファンタズマキア  作者: 9489
3章「白雪合編」
32/51

踊る天使の凱歌

スノウの一振りで結末を迎えた戦場。



それから3日が経つ。

ベッドの隣で亡霊を眺めるエムナが居た。



亡霊は脹脛から踵にかけて裂傷、腕は火傷により半透明の防護膜で包まれていた。



「ゆっくり休めるってのはいいけどよー、絶対安静って暇なもんだねぇ」

呑気に手をヒラヒラとさせる。



エムナは無言で微笑むと、不思議がる亡霊は

「暇じゃねーの?ずっとここに居ても退屈でしょ」



「いいの、私が助けられなかったからここにいる」

亡霊の戦闘時は庭で白布の兵士達と合間見えていたそうだ。

何処も緊迫した戦いだったそうだ。

大規模な戦争だった爪痕は残っており、H.C.は休業期間となっている。



すると病室に人が入ってきた。

簡素な病院着のスノウと松葉杖をついたグレイだった。



「亡霊、ありがとう」

まだ傷を癒えていない少女の顔は無垢だった。

「いや、こちらこそ。スノウが勇気を出したから俺たちはここにいる」





スノウは触発された。

誰かの為に戦う彼の姿に心を打たれて気付いたら刀を握っていた。

初めて振るった後から、手が震えたままだ。



亡霊は傷ついた手を差し出し、

「周りのみんなはこんな気持ちでスノウの為に戦ってたんだよ、もっと自分に自信を持ってくれ」



誰も私をわかってくれない。

可愛くて美しくて、誰も覗こうとしない心を見透かされた気がした。



「あっ」

気がつくと涙が出ていた。

「ごめんね、なんか変なこと言っちゃったわ。悪気はないんだ」



亡霊は焦りながら頭を掻くと、

その腕を取りながら

「んーん、ありがとう。また今度お話ししましょ」



スノウは体をドアに向けて、外に出て行った。

手を握った後から、手の震えが止まった。

「…ふふふ」

廊下で一人で笑った。







グレイはスノウが出て行ったのを見て、出ようとすると

「グレイ、だっけ。彼処から生き返るとは大した根性だ」



グレイは身体の半分が凍っていた。

スノウがメシアを凍らせた後、脚の間で熱を放って解凍していたそうだ。

目を覚ましたのも昨日らしく、二日間昏睡状態だった。



その間にスノウが笑顔になったことが何故か気に食わなかった。



「…ふん」

自動ドアを出て行くグレイ。

スノウを追っていったようだ。



なにあれ、と指差す亡霊。



でも気持ちは何となくわかるなぁとエムナは口にしなかった。





気持ちを紛らわせたく飲み物買ってくる、とエムナは病室を出た。

すると花束を持ったミスティが歩いていた。



「あっ、亡霊はまだ目を覚まさない?」

「…うん。花束はまた今度でいいよ」



そっか、ごめんね。とミスティは踵を返した。



嘘だ。

先日の金鬼の作戦の時から一緒に行動していた彼女に少し嫉妬してしまっている。



彼女もそんなつもりはないんだろう、でも律儀な性格がエムナの心臓をキュッと縛った。





色んな所に行って、人に興味のない態度を取るわりにボロボロになっていつも誰かの為に戦う人。

「誰が見ても良い人なんだろう、けどさ…」



エムナは独り言を呟きながら手に飲み物を2つ持って廊下を歩いた。



病室にはシックスとエイトが来ているようで笑い声が響いていた。











「もう一人じゃないんだよ、わたしたち」









病院もH.C.のビルにある。ビルの屋上で踊るスノウはそう呟いた。













身体が痛む、全身がfrostbiteだ。

「解凍したって事は頃合いってか」

メシアは体を動かすと、錠剤を手渡されて水と飲み込む。



「やっぱぁ俺一人じゃ駄目だったみたいだぁ、戦いはまだ終わってねぇ」



赤い装甲を着た男、手甲をつけた猛者。

「俺らの為に戦ってもらうぞ」



ヘリポート、白雪合から此処まで運ばれてきたようだ。

ビルが立ち並ぶ中で月がギラついて、そこにある。



「早く腕を治すぞ、長く待てねぇ」

H.C.があるこの街、手を伸ばせばすぐに壊せる。



グレイ、スノウ、ミスティ、亡霊、マジェスタ。

忌々しい奴等だ。

この腕で潰す。

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