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ファンタズマキア  作者: 9489
1章「塀の外」
3/51

亜天使ON

いつからそこに居たかわからないが、この状況に天使が舞い降りた。



「こいつらがこの街で暴動を…!」



言葉を止めた。天使の敵意はこっちに向いていた。

街中に設置された監視カメラを見たらわかる。



片腕で人を吊り上げていた。

もう片方の腕でもう一人に攻撃を仕掛けようとしていた事も、今を切り取ると十中八九、自分が悪者であることは間違いない。



そう頭で導き出す前には、自分の脚は駆け出していた。





ハァハァ、吐息が漏れる。

心音が加速する。



天使の銃口はこちらに向いて近づいてくる。即座に手を離し、3階ほどの高さのビルの壁に手を突き刺す。



ギュルルルルル、と勢いよくワイヤーを巻き取り3階の高さに到達する頃には、自分がいた場所に電気が走っていた。スタン銃だ。



(面倒な事になったなぁ)



左右のビルに交互に腕を突き刺し、急いで視界から逃げていく。

何発か撃たれた電気の帯びた弾が端に映る。

そうしていると一発が機械腕に触れた。伝導して皮膚に刺激が走る。



一瞬の硬直を見逃さなかった天使が上から蹴りを入れる。地面に叩きつけられ、砂埃が舞った。



一つ間を置き、砂煙から腕が伸びる。逃走は継続していた。



ふくらはぎからジェット噴射で加速する天使が徐々に感覚を狭めてきている。

やはり秩序の犬である以上、装備は壁の中仕様だ。外の技術とは確実な断絶を感じた。



左のビルの壁を壊し、建物の中に入る。どっちが悪者かわからねぇな、と嘯いた。

左折して天使も近付いてくる。



ジリリリ…ビル内でも警報音が鳴り響く。

建物の中はコンビニだったようだ。缶詰の積まれた什器を蹴り飛ばす。



しかし天使は、御構い無しに什器を破って突撃してきた。

既に建物の外に出て、次の建物に入っていたが、そう時間を取らずに天使は迫ってきていた。

手には、壁を壊した際に30cm代の大きな瓦礫石を拾っていた。



近く天使に投げつけると、天使はそれを横に避ける。お返しと言わんばかりに天使が銃口を向けて発砲。



この融通の効かない感じ。

アンタ、金貰ってるんだろ。抱いた疑惑は口から出る事はなかった。



咄嗟に盾にした片腕で受けるが、電流が走る。

「くっ…!」亡霊の口から苦悶の吐息が漏れた。



また違う建物に逃げる。次は上を目指し走るが窓の外には天使が肉薄していた。割れるガラスを受けるがお構いなしに上を目指す。



右の階段に差し掛かり、後ろから迫る天使に向いて吐いた。

「ここまで話通じないんだったらちょっとやらせてもらうよ」



壁をぶち抜き、天使の右後ろから打撃を入れる。しかし天使は咄嗟に後ろに回し蹴りを入れて弾き返す。



拳を握る天使、次の瞬間には連打を入れていく。

それを片腕で耐えるが、一発が重く、長くは持たない。すぐさま階段を昇って逃走を続ける。



屋上庭園にたどり着くと天使もすぐに現れた。乱射する銃。天使も苛立ちを抑えきれないようだ。更に距離を詰めて肉弾戦に持ち込もうとしてきた。



「しんどいなぁ、技術力が違いすぎる」(何より銃はずるいぜ…)



身体への直撃は避けているが、逃走しながら防戦を続けていた亡霊のダメージは大きかった。もう逃げ場もない。



腹をくくらなくてはいけない、そう下唇を噛んだ。



距離を取って片腕を後ろに引き、超加速した腕をぶち込む。咄嗟に避けられる。



(これは効くんだな…!)



伸びきったワイヤーを鞭のように倒し込み、床に叩きつける。

どっ、と鈍い音。

加速した腕ではないが、初の直撃だった。



しかし砂煙も晴れない内に銃口をが光ったのを確認した瞬間、左の機械腕は撃ち抜かれてしまった。



機能がないわけではないが、70%ほどの損傷。動かす程度の事しか出来ないな、と呟き屋上を逃げ回った。



床に叩きつけたものの、大したダメージとはなっていない。不利な状況は変わらなかった。

「これに賭けるしかない」

息を整え。



ひたすら逃げ回る、

右、

左、

背後、

そして前。

逃げる亡霊を追って攻めてくる。



間一髪で避けていくが、亡霊の息は上がってきている。

じりじりと不利という圧に押しつぶされそうだ。



樹々に隠れて、後ろに引いた左腕を加速させ、パンチを繰り出す。

今度は余裕を持って避けられた。しかし、右腕のワイヤーが逃げる先を張り巡っており、天使を拘束した。



「そのヘルメットで360度透視して、どこから攻撃がくるかとかわかっていたんだろう。けどな、お前が本当の天使ではなく、人間だからこう来るとは思っていた」



全能者だとしたら、力があるなら避けたりしない。



右腕が屋上から飛び降りる。天使を掴んだ腕と一緒に。

「ある程度の質量のある攻撃はそのスーツでも耐えられないはずだ。だから石を避け、俺の加速した拳を避けた」



地面に迫りながら天使の敗因を唱える。



「苛立った時点で人間、操作するのも人間だったら余裕がない奴に勝てないはずもない」



天使は言葉を発せず、落下しながら暴れる。



ワイヤーが離れ、天使だけが堕ちる。

そして引かれた腕を叩きつける。

天使は沈黙した。

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