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ファンタズマキア  作者: 9489
3章「白雪合編」
29/51

凶星たち

何度目の接触だろうか。

刀が舞い、尻尾が迫る。

腕を振り、爆発を避ける



熾烈な姿勢を崩さないメシアに、食らいつくグレイ。

喪失感で怒り狂うメシアと、スノウに恐怖を与えている彼に憤怒するグレイ。

戦闘条件としては充足、首や額に血管を浮かべながら争う様は獣のようだった。



「スノウと俺は結ばれる」

「そうはさせない!!!おれが守り続ける!!!」



「お前だって手元に残して飼い殺ししたいだけだろ、略奪してまでよぉ!!!!」

「違う、スノウはものじゃない!!!!」



「反論になってないな」

弾き飛ばされるグレイ。立ち上がり突きを繰り出すと、







それはスノウの胴体を貫いた。





バンビの後ろにいたスノウだが、メシアの尻尾が引き寄せて盾となってしまった。



痩せ型の彼女の身体は、微かに柔らかく、背中から刃が生えていた。



手に触れる赤い血。

自分が血を流す事にはこんなに躊躇いのないのに、愛する人の血は何故こんなに体を硬ばらせるのか。



刺した、スノウを。

傷つけないと誓ったのに

何故だ何故だ何故だ何故だ



何故だ、紅い、生暖かい、

赤い、

愛していたのに、血だ、



手が動かない、何故だ

ずっと一緒にいるはずだ、紅い

温かい、熱がある、何故だ、

スノウしかいない





グレイは手に感触を感じないが、頭が温かくなる感覚を得ていた。

「動けない…なんでだ」



声も出ない。

長いような時間。周りも真っ暗だ。



横から吹き飛ばされ倒れた時に、やっと時が動き出した。

長い時間のように感じた数秒間で手の力が入っていないみたいだ。

スノウを傷つけたショックで脳が停止し、その事に対する分析を始めていたのだ。



メシアはスノウに突き刺さった刀を抜き取った。



グレイの手には刀はない。

蹲ると嗚咽を上げながら精一杯叫んだ。



「スノウには価値がある。それはこの刀だ」

メシアは刀を振りながら近づく。



「これは政府の最高技術で作られた刀なんだよ、使うものの力に合わせて斬るように調整される。それは今までスノウから貸与されていたお前が一番わかることだろ」



「つまりお前はスノウを傷付けたくて傷付けた。独り占めして、自分だけを見てもらいながら自分だけ傷つける」

詭弁だ、と思いながらもメシアは自分を見透かしたように淡々と続ける。



「親友のそんな姿も面白いとは思うけど、これはそんなもんじゃない。それもお前がわかるはずだ」

バンビが横から捕獲ネットを打ち込むが、メシアの尻尾で両断される。

そして次の瞬間にはバンビは倒れていた。



「冷気を操れる能力、お前がおれの爆風から身を守ったのはこの力だな。しかしこれは本気を出せば周囲5kmを吹雪にすることができる」

近づくメシア。蹴り飛ばされてグレイはみじめったらしく転がった。



「スノウは政治の道具だ。スノウが100m以内にいないとこの刀は能力を発揮できない」



「そしてスノウの危機、血を吸う事でやっと天候兵器として使用可能となる。この雪国を愛した政府の涙ぐましい技術らしいぜ」


白雪合の歴史を存続させる為の力。


身体が冷たくなっていく。悔しさで溢れでたものが眼を凍らせていく。





スノウを見ると、横たわっている。

固まっていく傷口をさすりながら泣いているようだった。












ごめん。

何もできなかった。







メシアを見ると、視線の先。

サンタナと亡霊が並び立つ。



いつもこういう時に現れるなぁサンタナ。

ちょっと寝るからあとは任せたよ















「なんだお前か」

階段で立ち塞がるふたりにメシアは吐き捨てた。



「なんだじゃねーよ、こちとら連戦続きで限界なんだ。面倒なことすんなよ」

元気に噛み付く亡霊。だが脚を引きずっているところを見ると



「ハーザクを倒したのか、やるじゃないか」

「なに偉そうに話してんだよ、おめーよりあいつの方が万倍つえーぜ?」


ガルムのリーダーだ。

確かにそうかもな、と告げた次の言葉は

「さっきまではな」と手に持つ刀を撫でながら睨みつけた。



「あれはグレイのいつも使ってる奴だ」とサンタナ。

しかし装甲が開いて神秘的な光を放つ刀身を見ると、こちらが本当の姿のようだ。





「亡霊、助けに行くの遅れてごめ…ボロボロじゃん!」

後ろからミスティが現れた。



この数日でよく喋るようになったなと感慨深さを感じるが、フードの中の顔から自分の状態を把握した。



「はは、無茶しちゃったけど平気」

「バカいわないで!擦り傷だらけだし、脚はもう・・・!…休んでてよ」



するとメシアが声を掛けた。

「ミスティじゃないか、久しぶりだな」

耳に入るや否や、強張る彼女は臨戦態勢に入った。



「あんたをこうしたのは、もしかしてメシア?」

「残念、こいつらのボスなんだけど最後はサンタナが決めたから実質サンタナの勝ち」



亡霊の方をこづくミスティ、心配してるなら叩くなよ、と小声で呟く。



「暗かったのによく話すようになったな、姫を影から護る一族なのにさ」

「姫を見てみろよ」







目の前の亡霊の傷に気を取られていると、

メシアの周りでは倒れているバンビに凍っているグレイ。

お腹を抑えて蹲るスノウがいた。



「姫!!!!!」

ミスティがスノウに駆け寄る。そこに入る刀。

だがそれは当たらない。







「久々の再会なんだ、邪魔するのは無粋だよなぁ」とサンタナ



「俺たちと踊ってくれよ、クソガキ」刀を阻んだのは亡霊の腕だ。









危なげな男達の激突、

戦いは終盤に達している。

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