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ファンタズマキア  作者: 9489
3章「白雪合編」
27/51

裏切りの三叉路

なぜ、俺の名前を知っている。


自分の魂が抜け落ちた存在、『亡霊』。


早回したビデオテープのような映像、所々無作為に途切れた記憶。



いや、本当は全て覚えている。

何のために歩いて、息を吸うのか。

忘れた事のない存在理由。



「へへ、あってみたかったもんだ…生きてて良かったなぁ」

自分に向けた言葉なのか、亡霊に向けた言葉なのか。


「…今度色々聞かせてくれ」

縋らない懇願、亡霊からそんな声色がした。



……



「職務放棄か、傭兵」

いつからそこに居たのか。


それは少し膨よかな戦士、腕を見るとそれは筋肉から来ている事がわかる見た目をしていた。


「いきなりやってきて『俺を雇ってくれ』だ?」

「ずっと俺はお前を怪しいと思っていたんだよ」


柔和な表情からは底知れぬ圧力が出ていた。


何より亡霊は肌で感じ取っている。

「ここを支配してる首領だ」と。

元々の柔和な表情からは底知れぬ圧力が出ていた。



「お前たちの目的は、俺たちが乗っ取ったこの国を取り返したいんだろう」

一歩、歩みを進めると背後には巨大な鋏。

背中には何かを背負っているようだった。



「悪いけど俺たちにも戦う理由がある。来るんだったら容赦はしない」

また一歩、左手を握りしめた前腕には血管が浮き出ている。



「俺は何より裏切り者ってのが嫌いなんだ。裏切られるのが悲しいわけじゃない、裏切って逃げる心が浅ましいんだ」

一直線に迫り来る鋏。



倒れている傭兵へ最短距離の一撃を、傭兵の前に出た亡霊に寄って阻まれる。


「ぐっ…」

が、勢いを殺せなかった亡霊は地面を転がり回る。



そして再度傭兵へと振り下ろされる鋏。

床に伏せながら両腕を伸ばし、それを阻止する。


「やけに庇うじゃないか、出会ったのもさっきだろ」

「こいつは何か持ってる気がするんだ、聞きたいことがあってな」

立ち上がり、敵へと駆け抜ける。



「こいつは色んな戦場を巡っている戦闘屋だ、実力は折り紙つきだが属した組織を潰してきた過去がある」

鋏を開き、亡霊の片腕を掴むとそれを引き寄せる。



引き寄せられた勢いを利用して一撃を叩き込む亡霊。

衝突する手の痺れ。ワイヤー越しに受ける振動。直立不動の男はこちらを見下げていた。



「面白い奴だ。俺はハーザク、ガルムのリーダーを務める」


白雪合の下層が寄り集まった徒党「ガルム」

メシア、そしてグレイが昔居たチームだ。

戦場を駆ける狼、その男は義侠心を背負う者。



「カフカ、そいつは戦場でメシアがスカウトした男だ。あいつの考える事はよくわからんがあいつがそうしたいのならと許していた」

手応えはある、だがタフすぎる。

返す刀で差し出された横薙ぎを跳んで避ける。



「そいつに加担したら破滅するだろう、それでもいいのか」

腕につけられた小型のアルマの殴打。

大型鋏の尻尾型に、小型のグローブ型。

牽制と連撃、予想以上のやり手だ。



下がり、避けるが次は大薙ぎ。

腕をクロスして防ぐ。

「やけに親切に俺の心配をするじゃん、あんた」


「ねじ曲がったやつは目でわかる。敵ながらお前はそうじゃない」

はっ、それはどうかな。と腕を振るう。



「わかるさ、敵にしておくには惜しいからな」

「すまんがそういう趣味はないんで…ねっ!!!」

傭兵に放った、暴風。

鋏を盾にするそれを削り取るようにぶつける。



「強いな、名は」

死んで忘れてるかもしれないぜ、と悪態をつく。


「いいんだ、気に入った野郎の名前ぐらいは聞いておきたいだろ。倒す記念としてな」

亡霊…

いや、メロウだ。メロウでいい。

ハーザクに何かを感じた。

気のいい男だ。



「だが俺たちは戦わなくてはいけない。お前らのボス、マジェスタだったけか。あいつに戦線布告されたもんでね」


どこからハーザクに連絡をしたかはわからない。

彼はそういう男だと亡霊は知っている。



戦線布告自体は亡霊たちが白雪合に向かってる際にされたようだ。

一言居士、そういうのをやらなくては気が済まない所がマジェスタだった。



そう話しながら激突するふたり。





「メロウ、お前は何の為に戦っている!!」

しゃがみ、避ける。


「んあ?…ハッ、俺はやる事がある。オラッ!!」

仕掛ける攻撃、防がれたり、ぶつかったり。


「グッ…それはなんだ?俺は友の為に戦う!!!」



呼吸が早くなり、痛みが通り過ぎる。

「俺たちガルムはこの街の平民育ちだ。親友がいったんだよ…!!!はっ!!」

「なんだよ、言ってみろよ。ふっ」



闘争の中で語り合う。

頭は真っ白だ、今の俺たちには嘘偽りがない。

「この国のトップになりたい、だってさ。馬鹿げてるよなぁ」



「この国がよくしらねーから何もいえねーけどなぁ!!!」

「スノウ姫、可愛いよなぁ。あいつと結婚しようとしたんだよ。それがトップになれる理由だと思ってさ!!!」



地面に体をぶつけると、すぐに立ち上がり殴りに行く。

それを繰り返しながら口を開く。



「この城を攻めた。反逆罪だよなぁ、大罪人だ。地下牢か」

「しらん、だけど無理矢理結婚て気持ちわりぃなオイ」



言ってやるなよ、と軽く笑い

「だけどスノウ姫を初めて見た時、俺は止まってしまったんだよ」

飛び蹴りで転がるハーザク。



「あんな人がいていいのかって。でも」

と続き、一緒に最上階まで来た仲間も彼女の光に魅せられたようだ。





……





サンタナとバンビは、亡霊と同じ4階に辿り着いた。場所は対角線上の位置にある独房へとやってきた。



「大丈夫かグレイ!!!」

萎びた姿で発見された。


鎖を引きちぎるサンタナ。

彼の腕は緊急充電をして稼働している。もって30分と言った所。



「…ス…スノウ…」

「お前こんな時にもスノウの心配かよ!!もっと自分を大事にしろって!!」



背中を叩くサンタナに、ポシェットから出した医療キットで手当てをしていくバンビ。



昔の仲間たちなんでしょ、と語り

「あなたねぇ、こうなるまで何で寝返らなかったの」呆れた顔でいうバンビ。


「…護りたいものがあるんです。スノウに出会った時から、俺はスノウの為に生きて、スノウの為に死ぬと決めたんです」

誇り高き宣言。絶対に折れることのない芯を見た。



「下の階から見てきたがスノウはきっと最上階にいる。きっと助け出せよ」

サンタナはグレイの背中を見送る。


お前はついてこないのか、と言いたげな後ろ姿。

だが自分で蹴りをつけたい気持ちが強い。

バンビとグレイは一瞥し最上階を目指す。



「俺にはやり残した事があるんでな」

亡霊がきっとやりあっているのはハーザク。

自身を敗北させた実力者。


睨みつける顔つきになると、サンタナは駆け出した。

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