strangers
ハームにマジェスタを討とうと提案されたミスティ。
「オデはマジェスタの首をとる自信がある!」
まさかの謀反。しかし何故ハームだけが捕まっていないのか。
「私はいいわ、他のみんなに会わせて」
「じゃどうなっても知らないよ〜!」
背後から六発、自動で防御した鱗で判断した。
「あら、やるじゃない」
背後から触手を繰り出した新手、
派手なペイズリー柄のスーツを着た男は其処に立っていた。
「ハームはボクらの仲間になってくれたようだ、もともと君達の組織に忠誠心は無かったようだねぇ」
うねり、波のように襲いかかる触手。
咄嗟に防御はするが衝撃を殺しきれず少し宙に浮く。
(まずい…数では厳しい)
ハームも調子づいたようでトリガーを引く。
一発、顔に撃たれたそれを咄嗟に避けるがミスティの頰を掠めた。
この世界では銃弾に鉛弾を使う際は、弾の大きさがある程度必要となる。
通電して相手を痺れさせる電磁弾はこれに当たる。
塀の外の天使が使っていたが塀の中では流通してはいないものの、少し大層な施設で作れば手に入るものだ。
威力を上げる為にはゴム弾が採用される事が多い。
ゴム弾といえど十分な加速があれば貫通する。直接的な死を招きづらいが肉体的なダメージを与えるためには簡単な代物だ。
脳波を利用するアルマの使用は、ある程度の集中力と空間認識能力が必要とされる。
実際に脳波でアルマを遠隔操作をすると、快適度も上がり、有線じゃないぶん奇襲性やセオリーとは違う戦いが期待できる。
腕で操作しない新世代のアルマは腰や肩にマウントし、脳波で操作する。
両腕が不自由ではないので腕にナックル式のアルマをつければ手数が増える。
ミスティは空間認識能力が長けていたが、応用力を持たせるために操作自体がシンプルな六角形の鉄片を自分のものとした。
集中力をあまり使わないように周囲に配置したり、普段は自分のイメージしやすい蛇の形で保持したりしている。
そんな中、ハームの高速で飛ばされる銃弾はオートガードできるが触手の男、チワワは脳波で操作するが背中についた50本の触手を変幻自在に操り攻めてくる。
(…非常にやりづらいわね)
チワワも触手による意識の外からの攻撃、上下左右の不規則な連撃を得てとしていた。
圧倒的な力ではなく、自由に美しく勝つ。
戦いを1つの踊りだと思っているチワワも攻めあぐねているようだ。
決定打のない攻防が続く。
『ミスティ、生きてるか?』
耳に入る無線、声の主は亡霊。
「そこそこってとこかな。ハームが寝返ったのと幹部が1人」
『まじか、ごめんな。でも大丈夫』
『そっちにバカ1号を向かわせた!』
「話は聞いたぜぇ!!」
特攻バカ一代、エイトが現れた。
いつも背中に背負っている十字架、
それを剣の様に振ると、咄嗟の判断に遅れたチワワはくの字に吹き飛んだ。
……
………
「さてと、俺もどうにかしなきゃなぁ」
メシアと熾烈にぶつかっていた。
「通信をしながら戦うなんて俺を舐めてるよねぇ」
「いんや、お前は強いさ」
doxaのワイヤーが伸び縮み、縦横無尽に降り注ぐ。
「俺の苦手な自分の事可愛いと思ってる系男子だからつい力も入っちゃうなーってだけ」
「はっ、なにそれ」
連鎖する爆発。すでに亡霊は居ない。
音、ほぼ勘で避けた頭上には腕が通り過ぎていた。
「現場を任されたけど、今回司令塔がいないみたいだからプレイヤーと監督両方しなきゃいけねーって話。
そういうことで頭半分で戦ってるわけだ」
煽るように吐き捨てる亡霊。
「なーんだ、それはつまらないなぁ」
メシアは後ろを向いた。
隙のある姿。
しかし亡霊は襲わない。
亡霊、本当に俺のことはあまり興味ないわけね
無視された相手には長居しない。
「俺はメシアっていうんだ。また会おうね⭐︎」
引っ掻き回す救世主。
世界は彼の玩具であるべきだ。
「快楽殺人者か、厄介だがああいうタイプは自分の立ち位置はよくわかっている」
だからこそなにかを表現したい。
空虚を埋める為に戦う、そんな人間に興味が無いので亡霊は見逃した。
ーーー
ーー
「あの男、存外つまらない。ずっと気になっていたんだけどなぁ」
自分に向いていない目線。全てを見透かすような冷めた目。
抜けた魂、それが亡霊なのだろう。
「でも誰かを気にかけるほどの情熱を灯してきてるじゃん…いつかは面白くなりそうだ」
さてと、俺は戦場をかき乱す。
襲撃、乱入、撤退、これを無差別に繰り返してると相手はこちらの力を計りかねる。
戦場とは常に流動的、必勝などはない。
必勝足り得る行動を積み重ねていく事。
流れを作るとそれを瓦解されないようにする事。
流れを読んで戦いのリズムを崩す事。
好きで戦場にいる奴は少ない。
みんなどこかで小さなストレスを蓄積している。それをどう増大させていくか。
それが救世主の役目だ。
「目を覚ましたか!サンタナ!」
「…バンビさん、俺・・・」
冷たい石牢、目の前には格子がある。
他の仲間たちも同じ牢にいる。キャパは10人程度のようだ。
向かいや斜め前にも仲間が。
「お前は敵と戦って三日眼を覚まさなかった」
「私達は負けて捕らえられたんだ。ハームは寝返って檻の外にいるみたい」
事情が少し読み込めてきた。
「ハームは、頼めば出してくれるんじゃ…!」
「あいつは私達を助ける気はさらさらないよ。というか私はムリ!」
寝ている間に何かあったんだろう。
態度を見ると酷い目にはあってないみたいだが、嫌な言葉を投げかけられたようだ。
「グレイとスノウは…」
「連れてかれたわよ、スノウちゃんに手荒なことしたら許さないっては言ったけど…」
すると上の階から騒がしい音。
看守たちがその場から壁に叩きつけられる。
「みんな無事!?」
本人が思っている以上に大きな声。
いつもつけているマスクは其処にはなく、クールな顔立ちの女性がいた。
「ミスティ…ちゃん!!」
バンビが嬉々として声をあげる。
檻の鍵を開く。旧時代からの施設の為にアナログの鍵だった。
「とりあえず上の階にみんなのアルマがあるので取りに行きましょう、あとは道中で話します!」
廊下を抜け、階段を皆で駆け上る。
地下牢には強力な妨害電波が貼られていたようで連絡が取れなくなっていた。
「おっ、聞こえる!」
「インカムのGPS信号が消えた事でマジェスタさんが気付いたそうです」
「さっき亡霊がマジェスタさんに連絡して聞いたところスノウとグレイ君の反応だけは死んでなかったらしいのでまだみんなが生きてる可能性があると」
「亡霊も来てるのか!!」
サンタナは笑顔で問いかける。
「私と一緒に来たわ、そしで今エイトが一人で敵の幹部とハームと戦ってるわ」
横から割って入るバンビが流れを察したようで
「んでミスティちゃんはこの後エイト君の加勢に戻るってことね、そうなると私達は充電タイムってことよね」
「お願いします、亡霊が上の階で戦ってるみたいですが先程から音信不通なんです」
「任せろ、復活したらすぐに上の階にいく」
亡霊、待ってろよとサンタナは呟いた。




