drinking styx.
翌日。
昨晩のうちでマジェスタが戦闘員を送り込んでくれたようだ。
時間が掛かったのは車でまとめて陸路で来たからのようだ。
総勢30人。人口1万人の国のうち、スノウの時代だと5階建の城でトータル100人規模体制での防衛体制だった。
襲撃者が支配してる今だと、人は入れ替わっているはずだ。
襲撃者は強く、軍事的に乗っ取ったので防衛人数が多くない。自分の実力である程度はどうにかなるはずだからだ。
グレイが断言している時点で彼らが沢山兵士を雇っているとも思えない。
顔を隠していた兵士が居たが、街の方には積極的に顔を出していないようで、市民たちは政治不信ではあるが虐げられている訳ではないそうだ。
恐らく70名程度が城にある戦力だ。
マジェスタが信じて送り出した5人の精鋭と、30人の戦士。
そもそも国を取り返すつもりで駒を配置した。万が一に瑕疵は無い。
「やろうどもぉ!攻めるぞ!!!!」
ハームが城の前に叫びながら城に突撃する。
続いて総員が堀に掛かった橋を駆けていく。仰々しい城門をくぐり抜けると庭には先日戦った白い布を被った兵士がぞろぞろと揃っている。
「暴れるぜ!」
勢いよく腕を振るうたびに人が舞う。
ルーキーの名を欲しいがままにする戦士は並び立つものが居ないと言うまでに雄々しく。
ピストルを乱射するハーム。テンションが上がっているようで声をあげながら引き金を弾く。
マジェスタの寄越した兵士は手練れ揃いだった。時間はかかるものの、全員が1人ずつ倒していっている。
すると
「やるじゃん」
空から降ってくる声。
咄嗟に自分を守るように刀を上に構える。
尻尾の刃と激突。
落下を伴った一撃にグレイは顔を顰める。
「遊びに来てくれたんだね、おかえり。グレイ」
先刻の襲撃者。
「…うるさい、メシア」
翻る小柄な男たちは右腕を突き出し、
「覚えてて嬉しいよ、友達だもんね」
爆発と共に再会を洗礼する。
落下の一撃を察知して捌く事に全神経を集中させていたグレイは苦しいほど地面に叩きつけられる。
「おかえり、裏切り者。これからも仲良くしよう」
サンタナは白熊の毛皮を着た巨漢と対峙していた。
「ごめんな、お前に恨みはないけど城を荒らされちゃ困るんだ」
背中から伸びた巨大な腕、それは鰐の口のような二本指で…
気がつくとサンタナの胴体は挟まれ、地面から脚は離れていく。
「これはマズイ…!」
回転、
回転、
地面に高速で頭と脚が叩きつけられる。
回転、
回転、
クローが緩められたころには、サンタナは粘土のように地面に打ち付けられる。
「…こいつは…やばすぎる…」
ハームは背中からイソギンチャクのように触手を出す相手に手も足も出ない。
「撃っても撃ってもあたらねぇ!!!」
自立起動した60本あまりの触手は、脳波を持ってコントロールされている。
美しくもグロテスクな薄ピンクのソレに、翻弄される。
優しく首元に絡まった触手、
力が篭ると次第に赤紫になる顔。
やがてハームの意識が消えた。
兵士たちも伏せていく。
静かになった平野、
戦場にH.C.のものは1人も立っていなかった。




