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ファンタズマキア  作者: 9489
3章「白雪合編」
21/51

終わる全てのはじまり

バビロンの一角。街角のワンシーン。

スノウとその親衛隊たちが歩いていた。



スノウの「夜中に散歩がしたい!」というワガママに、率先してついてきた7名。

実際にマジェスタに護衛を任されているのは3名だがそれ以上に惹かれる要素が彼女にはあるようだ。



多いときは15名以上の大所帯になる。

彼女の愛嬌のある目で、見つめられてオチない男の方が珍しいってもんだ。


少しおっちょこちょいで、優しく笑いかける姫。

こういう人は護りたくなるのが男の性というのだろう。





そんな姫のワガママで寝不足が続く彼ら。

変わりない日常、スノウを守るのは特務とされている。

優先度の高い任務。人が掛かれば掛かるほど彼女が安全になる。他所からH.C.に所属した人間は大体彼女に惹かれて護衛をしたがる。

でも、実際には彼女の命は狙われない。

街に住んでいるひとりの女の子。



こんなに楽な仕事はない。

塀に近づいた街は、基本的に流れ者が集う。

この街には純粋な出身者はいない。

都市開発で人口増大を見越して土地を抑えたが結果として人口は増えなかった。



この街に集うのは基本的に弾かれ者、

バビロンを統治する区域根幹コンピューターに組織情報を申請すると一部の土地を貰える。

集団で小規模社会を形成していると見なされれば、善悪抜きにしてバビロンでは生きていける。

だからバビロンの者は群れる。群れることでしか場所を与えられない。



根幹コンピュータによって社会を形成することを決定づけられている。

弾かれる者たちから弾かれたものは、生きていく術がない。



今やこの街の大きな流れを作ったのはH.C.だ。

バラバラになった者達を集めて1つの理想郷を作ろうと奔走している。

マジェスタの政治手腕は眼を見張るものがあり、他区域にも名を轟かせて良好な関係を気付いていっているそうだ。








俺は少人数の組織だったが、H.C.に吸収合併した。

そして可愛い子を護衛してるだけで生きる価値と理由になれる。

男は、







感謝していた。





皮膚が瞬時にして焼け焦げる。さっきまで自分がいた場所が視線の先にあった。



何が起きた、地面に倒れている。

身体を動かそうとするが痛みで動かない。

程なくして爆発に巻き込まれた事を認識した。



他の親衛隊が小柄なコートを着た者と闘っている。

素人目に見てもわかる。コートを着た者は強い。

視認するのがやっとな速度で飛び回り、ひとりひとりを摘んでいく。



「っあ・・・!あっ・・・!」

声にならない声。喉が焼けている。


コートの人の腕から爆発が起きている。義手に爆発機構を搭載しているようだ。

そして腰から伸びるワイヤーと、爪が先端についた尻尾。



加速された其れは、刃物のように周りを斬り裂いていく。近づけば右手の義手で爆発。

隙のない布陣だ。



スノウちゃんはどうだ、と軋む頭を傾ける。

口元を押さえて呆気に取られている。

その視線の先には、実質親衛隊長となっているグレイが刀を振るっていた。

いつもムスっとした顔で腕組んでいるスノウの側を片時も離れない男。



いけ好かないが、任せたぞ。

俺はもう無理そうだ。





ここで彼は事切れた。







騒動の中心の男が、グレイに問いかける。


「裏切り者じゃないかぁ!スノウに着いて行ってヨロシクしてたんじゃない?」

笑顔で攻め立ててくる。嵐のような攻撃を刀で捌くのが精一杯だ。



「…そんなつもりはない」

「抜け駆けして逃げ出した癖によく言うよ☆」

グレイを逆撫でするような声、グレイは表情を変えず一閃。



「殺す気かい?そこまでさせるなんて女って怖いねぇ」

「……うるさいっ!!」

静かに響く怒声。

グレイの額から一筋の汗が流れ、舞うように斬りつける。



手応えを感じた。

胴体を数回斬られたが致命傷じゃないとコートの男は手をかざす。



「これは些細なプレゼントだよ☆」


手のひらをこちらに見せ、

「受け取ってぇ!!!!」

強烈な光と熱。人を飲み込む衝撃。



「!!!」

スノウは泣きながら爆発に飲まれたグレイを見る。

私の為にみんなが戦って人が死んでいる。

ボロボロに傷付いている。


平和だった日々がついに終わりを告げる。

とうとう始まってしまった。

スノウ自身、予期はしていた現実を変えられない無力な自分が許せなかった。





黒い人影、煙が拡散して出てきたのは、煤けた化粧をしたグレイだ。

周りには粉雪が舞う。



一重の眼を見開いたグレイは刀を薙ぐ。

後退りして避けた男は、やはり壊せなかったかと吐き捨てる。


いつか来ると思っていた、ただ今の自分では倒す事が出来ないのか。

グレイは苛立ちを覚える。

そんな矢先。



「グレーーーイ!!!!助けにきたぞーー!!!」



間に入る男。

ここぞというところに現れる、勇気の盾サンタナ。



「おま、はえぇぞぉ!!!」

遅れてハームも現れる。





「さぁ、後半戦。参りましょうか」

サンタナの号令を合図に。


狂乱の男と冷徹な刀使い、勇気の盾、破天荒な乱入者、1vs3の激突は最高潮を迎える。

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