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ファンタズマキア  作者: 9489
1章「塀の外」
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全国制覇

街の不良達は、自分が負けた事を紛らわす様に今日も暴れていた。



気にくわない事が多すぎる。

ウチとソトがなんなのかわからない。

元気も持て余している。

勉強もしたくない。

生き方もオモチャの使い方も難しくてわからない。

でも俺たちが集まればきっとなんでも出来て最強で無敵なんだ。



キボー隊とかうぜー大人は居るけどアイツらも無表情で得体がしれない。毎月入る小遣いも月の終わりには使い果たすから誰か殴ってカツアゲ。

ストレスも発散して、お金貰えるなんてサイコーでしょ。



あのメガネも俺らの遊び場でたまに来てダーツしてて目障りだった。

あんな何でも知ってますみたいな雰囲気を出す奴がホントにダセェ。

それなのに横から入った変な奴に邪魔された事もあって怒りが収まらない。



俺のこの街で我が物顔で歩く余所者の癖に。先パイに連絡したら見つけ次第半殺ししてくれるって言ってた。頼もしいわ。

この街の情報網舐めんなよ。ゼッテー見つけ出して全殺しするわ。



柄の悪いスーツの男が耳につけた無線で誰かとやり取りをしていた。

「この街全体に人配置しましたよ。後はやるだけやっていいんですよね?」



向こう側からは聞き覚えのある声で

「イイぞ。この街に入り込んだ異物を探せ。手段は選ばん。」

「オレらやり方荒いっスよ?街ボロボロにしてもイイっスよね?」

「構わんよ、金稼ぎに人を殺してもイイ。略奪、レイプでも好きにするとイイよ」

「ついでに新しい実験動物も売らなきゃいけないから、何人か半殺しで持って帰ってきてよ」



イかれてるなぁ、金を持ったスポンサーさんは怖いと内心鼻で笑いながら、柄の悪い男は街に配備された人々に一言、暴れろと指示を出した。



静かな街にガラスの割れる音が聞こえ始める。市民の日常が壊れ始めた。

ツナギやジャージを着た若者達が夜の街で破壊活動を開始した。



ユウジは心が踊りながらこの祭りに参加していた。

オレの一言でこの街の裏がこんな動いている!

この街の恐怖や支配、暴力が肌に感じ取れて鳥肌が立つ。

先パイはスゲェ。「最高の暴走(まつり)になるから参加しろ!!!」と仲良いダチにも声を掛けた。



最高だ。建物を殴る。



強化ガラスを割る。床を打ち砕く。



人を襲う。



オレたちが今、サ イ キ ョ ウ な ん だ


サイレンの出所がわからないほど街は混乱に陥っていた。

機防隊が出動しているかもわからない。目の前には煙火が上がっていた。



ーーーーー



街には血塗れの市民。

男は遊び感覚で殴られて、女は逃げ惑っていた。何かに保護されていると理性のタガが外れる。



廃墟の男はそれを監視カメラで見ながら、にやけてる。



「人間の本質は悪と欲だよ、楽しむ為に生きる。でも法がそれをさせてくれない。」

「でも法を消すほどの力があれば、自分が誰にも何をされないという守護があれば、愚民どもはやりたいように奪い、傷付け、身を貪る」

「なんでキモチイイことをして生きてちゃあダメなんだろうなぁ??」



気味の悪い笑い声が、暗い部屋でこだまする。



ーーーーー



この街はどうなってるんだ、いきなり色んなところで暴動が起きてるようだ。

でも暴れてるのはみんな、ヤンキースタイルな若者だけだった。



視界の端に逃げ惑う老夫婦が居た。



ワイヤーが射出されると機械の手首は老夫婦と暴徒の間に割って入った。高速で巻き取る音に牽引されながら瞬時に手首の主も割って現れた。



「何が起きてるかわからないけど、こういうのはダメなんじゃない?」

揃いも揃って戦闘用アーマーを見にまとった暴徒だ。腕、脚、暴力の簡素化された姿をしている。正面から襲いかかってきた彼らのアーマーを瞬時に砕いた。



そうするとアーマーを無くした無力だけが残されていた。

「なんかお前らみたいなのが暴れてるようだけど、なんのつもりなの?」



地面に唾を吐きながら、威嚇する悪ガキ。

「うるせぇ!オレたちの楽しい祭りを邪魔するなよ!」



瞬時、言葉を吐いた首を機械腕で掴み、地面から持ち上げる。

「じゃあ悪い遊びで痛い目見ればいい(死ねばいい)」



グググ…と首に力を込めていく。

「おろせよ!!!てめぇぶっ殺してやる!!!!!」

首に締まっている機械腕に自分のアーマーで殴打する、が宙吊りで首が絞まっている状態。

思うように力が入らない。

窒息の苦しさが、体の奥から迫り上がる



自力で脱出出来ないことを悟ったユウジは、涙目になっていた。

「オレたちはただ、ダチや先パイからオモチャ貸すから街で暴れろっていわれただけなんだよ!!悪かったから見逃してくれよ!!!」



何が善悪かわからないうちに、ただ溢れる感情で暴れてるんだと感じた。



「今まで何人手にかけた?」

「なっ…知らないよ…!」



首を締める手に力が篭る。



「アッ!!!ごめんなさい!!!ごめんなさい!!!!今日はまだ4人しかやってないです!!!!4人をボコりました!!!!」



そうして手を緩めると、ユウジは地面に落ちる。

「まだ全然暴れてないのに何でこうなるんだよぉ!!!」

なんで俺だけ、なんで俺だけが・・・。





無責任な遊びに乗って誰かの平和を脅かす。その行為がボロ布の亡霊は許せなかった。

奪う奴は奪われる。

それが自然の摂理。

わからないのなら理解させてあげよう。

もう片方の腕のクローが開いたまま近付けていく。





しかし、その手は止まった。



無機質な機械音。

それは警告のような。





全身を白いパワードスーツを纏った秩序の機械、希望の天使が顕現した。

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