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ファンタズマキア  作者: 9489
2章「ようこそH.C」
19/51

鬼哭。空の左手

恐ろしい。



躊躇いもなく人を殺すやつがいる。





後ろから聞こえるさっきまでの友たちの声。

もう帰ることはない。



逃げる、どこへ。

タムラについて来ている奴らもいるが、諦めて少年に挑むものも。



やめてくれ、やめてくれ。

走りながら涙が溢れていく。















どれくらい駆け回ったかわからない。

森に入り、追っかけてくる気配が無くなって腰を下ろす。



背中にはパークスを背負っていた。





付いてきた仲間は63人。

タムラを逃がすために命を賭したものが多く、63人の皆もタムラとパークスの為に散っても良い覚悟で護衛した。





パークスの止血もして、負傷者は傷の手当てを行うと、パークスが意識を取り戻した。





「ここは…」

パークスはすぐに身体の異変に気付いた。

左手がずっと痛い。そして体から血が抜けている感覚が襲う。





綺麗な森だが天国ではない。

それはみんなの顔を見てわかる。

「地獄、にきちまったか」



「違う、俺たちは死んでいない。生き残っちまったんだ」とタムラ。

パークスは改めて辺りを見渡すと涙を溜めているものばかりだ。



「やっぱ、地獄じゃねぇか」







このまま森に居ても生きていけない。

他の街を探そうと皆で歩いた。

幸い錠剤食料を分け合ったり、野郎ばかりということで苦しくともサバイバルは出来た。



タムラはたまにキャンプをしていた事が功を奏した。

野うさぎや野鳥の肉を血が足りていないパークスに譲るが、応急処置程度のそれでは焼け石に水だった。



6日目でやっと街についた。電子通貨は使えたようでひとまず宿に泊まり、パークスの腕の様子を見た。

調べたところ、塀の外はこの世界と隔絶されている。そこまでいけば追っ手は来なくなると踏んだ。



2ヶ月後、その頃には団体組織としての申請を出して、街の美化作業などに参加してなけなしの銭を稼ぐ生活をしていた。



最果ての街『バビロン』に移動し、頃合いを見てトンネルから外の世界に脱出する事。

それが彼らの目的となった。



バビロンで準備をする毎日。

やっと支部を作った頃。



「ーーやっぱり俺たちで帰ろう」

パークスだった。タムラは驚き怒鳴る。

「なんのつもりだてめぇら!!!!ふざけるのも大概にしろ!!!!」



「いんや、それはタムさんの方だ。俺は片腕を失って仲間を犠牲にしてここまできた」

「でもよぉ、それで良いのかって思っちまってよ。逃げるなんてあいつらに顔向け出来ねぇ」



「勝てねぇぞ」

タムラは冷たく放つ。



「やりもしねぇで逃げるのが男なのかよ???」

パークスはタムラの机を蹴る。



「何もわかんねーのか??腕落としただけじゃ足りねーのか???」

脅威に打ちひしがれたタムラは叫ぶ。

敵は圧倒的すぎた、逃げるだけでも命懸けだった。


「本気で挑んだか??逃げてるから負けたんじゃないのか???戦って死ぬなら本望だよ!!!!」



「…腕と一緒に脳みそまで落としたってのかよ!!!!」



右腕でタムラの胸ぐらを掴むと、

「これを機に俺たちは互いの道行きましょ、いつか国には帰るしあんたについていく腰抜け共に国を跨がせたくない」



「おい、お前ら後悔するぞ。さっさと出ていけや。明日から抗争だ…アホンダラ」



そういうとパークスは手を離し、

荷物をまとめて出て行った。パークスの思想に感化された仲間たちも彼についていった。



タムラより少しパークスは若い。

パークスとついていった奴らはチームの中でも若い衆だった。



「…いってきかねぇならわからせるしかねぇ」

「あいつらには勝てねぇんだって事を」




タムラは拳を震わせて呟いた。






ーーーー

ーー




亡霊は重い口を開き、

「なるほど、それでタムさんは銀の奴らにも無駄死にして欲しくないんだね」



「ばっ…!

んなもんじゃあねぇよ。俺はあいつが許せねぇってだけさ」



「でもタムさん、悪い人じゃなさそうだからなんとかしてあげたいね」

亡霊の顔を覗き込むミスティ。



「ばかいうんじゃねぇよお嬢ちゃん。あいつらがそれで黙ってくれるかってもんよ」


勝てない敵と戦ってパークス達が死ぬくらいなら、喧嘩というお遊びでパークスの時間と戦力を割き続ける遅延行為。


優しくて、素直じゃない人だ。



「じゃあ私達でなんとかしよう!」

元気な声で呼びかけた。眼前でいう彼女に亡霊は頷いてしまった。



惚れてまうよお嬢ちゃん、とタムラは鼻の下を人差し指でさすった。









一方、Silver windのアジトへ向かうシックスとエイト。

「銀色の風、彼ら中々血の気がさかんらしいすよ」

「ふーん、女の子いねぇのかー」



「あっ、ここみたいすよ」

エイトはインターホンに呼びかける。



「はい、いかがなさいました」

落ち着いた男性の声。

「あの、ヘレナコーポレーションといいまして、その挨拶に」



「あっ、先日はどうも。お上りください」

案内されるがままに広間にたどり着く。

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