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ファンタズマキア  作者: 9489
2章「ようこそH.C」
18/51

Once upon a time

目的地の目の前に来たにも関わらず、

隠密隊長のトムがいきなり

「すまん、急用が出来た。後で伝達されるとは思うが、この場は2人でお願いするね…」

といなくなった。



「…」



フードにマスクを付けた無口な人。

『ミスティ』という名前以外は何も知らない。

ちょっと幸先が不安になった。

俺も人と話すの得意じゃないんだよなと亡霊は内心呟いた。




「ごめんくださーい」



ノックして数刻、反応がないみたいだ。

戸をスライドすると奥から大柄の男が近づいてくる。



「おうおうおう、なんだぁ!!来るってんなら全員でかかってこい!!!」

あまりの大声と、胸倉を掴まれた勢いで呆気に取られてしまった。



「よさんか、フジ。銀の野郎どもじゃあねぇようだ」

高身長のスキンヘッドが制止する。

イカついサングラス。恐らく彼が【金ノ鉄鬼】。

「客人だろう、お姉ちゃんもいるようだ。持て成してやれ」



金ノ鉄鬼に言われるまま、和服な造りの家屋を案内される。

「いやぁすまないねぇ。お前さん達もこっちに来たってことはある程度事情通っつーわけだぁ」



居間。囲炉裏となっており、鬼は畳の上で胡座をかいた。

この家屋もそうだが、一部の和テイストの地域そのままのアジトだ。彼らのルーツが何となくわかった。



「銀の組織ってのはわかるよなぁ、いま抗争中でウチの奴等はピリピリしてるんだわ」



横から子分が、すっと淹れたてのお茶を差し出す。

「んでお兄さん達は何しに来たんだい?」



「俺らは」

「私達はこの街を1つにしたく来ました」

ミスティの落ち着きながら力のこもった声。



「私と彼、亡霊というんですがヘレナ・コーポレーションに所属してます」

「あぁ、マジェスタってやつが仕切ってる所ね。最近もあんたらのとこから使いがきてたよ」

はっ、と亡霊とミスティは顔を上げる。



「どんな奴がきてたんすか?」

亡霊が鬼に問いかける。

「舌ったらずの男と、腕っ節の強い坊主が来てたなぁ。あいつらの言う事によるとクソ銀の奴等が俺らに襲撃を企んでるという情報を掴んだとかなんたか」



ハームとサンタナだろうか。

彼らには急遽特務が入ったと先程連絡が来た。


おおよそこの影響で俺たちが"後始末"を任されたのだろう。

この街を統一するには金銀をどうにかする事だがそれ以上の特務とは何だろう。



「そんなわけだ。この街の治安や守らなきゃいけない秩序なんてのはあまり興味ないんだ」



亡霊は素朴な疑問が浮かんだ。

「なんでそんなに敵対をしてるんですか?」

思った言葉と寸分違わぬ事をミスティが聞きだす。











ーーー

ーーーー



「…あいつらは途中まで一緒に行動していた…」

薪がパチッと弾ける中、鬼は語り始めた。



塀の中の外層部分に位置するこの街、バビロンよりも更に内層に近付いた小国家。

塀の中といえど広く、マジェスタが手に入れようとしている街の実質的な支配圏、それを確立している地域はいくつも存在している。



古来のシステムが残った小国家がある。

武に赴きを置き、和城がある国、そこから隣の地域に金鬼ノ虎とSilver windの組員は住んでいた。



Silver windの銀奉行、パークスは金鬼と旧知の仲だった。

小国家「白雪合(はくせつこう)」への玄関口を務めるが、金鬼の出身地は其処への警備につく者が多かった。



そこは姫が統治する国だったが、ある日軍事クーデターが起きた。

三日三晩、都には火が放たれ壊滅状態となったが姫が見つかることは無かった。



混乱する国家だが、姫の影響力も大きく表向きはまだ姫が生きているが火傷で姿を表すことがないと市民には伝えられている。



門番として勤めていた金と銀たち50人は事件の責任を取れと責め立てられた。



「門を見ていたお前たち、本当は姫が逃げたのを見ていたんだろう?」



「見ていませ!!

腰から伸びた細いワイヤーの先端、先端に付けられた50cm程度の鋭利な爪のようなもの。

否定した男の目に突き刺す。



声にならない言葉をあげる。

「誰なんだろうねぇ。責任取らないと君達全員死んじゃうよ〜☆」

丈の長い服を着た小柄な男。目元で流した茶髪の奥は遊戯。



この国を混乱に落とした元凶、そして歴戦の鬼は得物を振りかざし、飛びかかる。

「お前ら逃げろ!!!!」



振り下ろされた金棒。

鬼たる所以。破砕機をそのまま武器にしたような狂気の凶器。



地面を抉る。

つまりは避けられている。思考と同じタイミングで右後ろ45度、死角から迫り来る爪。



「油断するな!!」

銀奉行パークスの鉄剣。刃物というよりは刺又のような代物だがこの世界ではそれを剣と呼ぶ。



銀奉行は手元のグリップのボタンを押す。

眩い光が辺りに響く。



「いまだ!」パークスの声とともに横薙ぎする鬼。

相手は前が見えないはずだ。小僧を傷つけるのは忍びないが、せいぜいスキンを削って肉を少々傷つけるぐらいだ。

クーデターには安いお駄賃だろう。





しかし



「あぶねぇよなぁおっさんたち」

開けた視界、片腕で金棒を掴む少年。



「ヒヤヒヤしたからさぁ」

体を捻らせ、うしろに跳躍。



「これはお返しってことで☆」

腕。スキンがついたままの前腕。

鬼が振り向くと、



「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」







パークスの腕が





亡くなっていた。





足がすくんでいた者共は、何が起きたかわかった瞬間には挑んでいた。



でも次々と散っていく。



ただの制圧じゃない、



命を奪っている。

この男は。





「てっ、撤退だぁ!!!!!」

金の鬼、タムラは叫ぶ。

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