夜明けへと消えていくまで
ビルの壁の後ろに隠れると、サイレンとともに機防隊が3人現れた。
通報なのか、監視カメラなのかはわからないが派手に暴れてたから仕方がない。
この死角も、奴らの索敵範囲の外なのだろう。
ざっと200m、恐ろしい範囲だ。
「お前らすげぇな、機防隊とあんなバチバチやりあってさ。でもアンタ危なかったね」
「なんで止めた!!!!」
亡霊が静かに叫ぶ。
「確かに凄い戦いだったよ、だけもあそこでやりあっても何も得れないように見えてな」
「あいつは俺たちの!!」
「だから今死ぬべきではないんだよ、俺たちと一緒に来てくれ」
身に纏っているひょうきんな雰囲気から一転、鋭い眼光の奥にある暖かさで告げた。
ーーー
ーー
ー
男はエイトと名乗った。
歳は全員同じの23歳。
塀の中は、塀の外とは違い
集団で徒党を組む事が多い。
塀の近くということもあり、治安が良いとは言えないが、機防隊もいる。
また自衛手段しても、何処かに属する事で自己防衛に繋がる。
また縄張りや、派閥に分かれているそうだが
「俺たちはこのエリア12をまとめて争いを無くそうと思っているんだ」
その自分たちが徒党を組んでいるなら、その一端を担っているのではないか。と口から出かけて辞めた。
サンタナは羨望の眼差しをしている。
「エイトも良い奴だし、俺たちには行くあてがない。傷を癒す意味でも仲間になったらいいんじゃないか?」
まだ会って時間も浅いだろ。
そうこう呟くとビルの中へ案内された。
エレベーターから外の姿が見える。
この街は暗い上に青緑のライトしかなく、サイバー調ではあるがどこか鬱屈とした空気を感じた。
そして案内されたビルの最上階。
偉そう奴は最上階に座りがちだという気持ちは口の中に押し込んだ。
「ようこそ、エイトから聞いてるよ。君たちが新しい仲間かな?」
高そうな1人用のソファで脚を組むの男。
「俺はまだ」と言いかけたところでサンタナに静止される。
「俺たち塀の外からやってきたばかりで、行くあてもないので話を聞かせてください」
とサンタナが問いかける。
「我々もエイトから活きのいい奴がいると聞いたんで心待ちにしてたよ」
「まぁこんな遅い時間だ、今日はホテルを取ったからそこで休むといい」
「明日の夜、皆が集う。美味しいものを振る舞うから楽しみにしててくれ」
やけに主導権を握る男だ。そう思いながらも空は明るくなってきていた。
好意はそのまま受け取ろうと促され、エイトの案内でホテルに辿り着く。
各々8階の個室を案内された。
身体をベッドに沈める。柔らかい寝具で寝るのはいつぶりだろうとふと思った。
疲れと痛みがぶり返し、動けなくなる。
先程、ヒルコとタニタさんを失った。
塀の中に来た事、襲撃者と戦った事、個室にいるとここまでずっと誰かと接してきていたからこそ更に感傷を深める。
「なんで俺はいつも…」
亡霊は悔しさを抑えきれず一人で呻いた。
だからここまで独りだったのだ。




