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すくうもの 〜令和怪奇跡〜  作者: ももすけ
第2部 校祭編
38/133

オカルト研究部、実地調査!①



 文化祭まで、あと14日──




 昼休みには、サトルたち3人は部室に集まるのも恒例となっていた。



「さて、今日も練習しようか」



 サトルはイスに深く座り、あくびをかいた。



「まったくやる気を感じられないんだけど」と明璃。



「なんか最近眠れなくてさあ。いや、ちゃんと練習はするよ」



 立ち上がろうとすると、入り口のドアが勢いよく開いた。サトルは直感した、これは小林先生ではないと。



「やっと見つけたぞ、禅院!」



 そこにいたのは、真島悠吾だった。



 サトルは真島にオカ研の子細を伝えていない。カッパのコトも、もちろんバクのコトもだ。



「おお、真島。よくここがわかったな」



「尾けてきたからな。おかげでよ、おれは毎日『ぼっち飯』だぜ?」



「ふつうじゃないか? ぼっち飯」



 そこまで悲しく言うコトだろうかと、サトルには真島の放つ悲壮感がわからなかった。



「んでここには樫見さんもいるし、クラスの違う紫城さんもいる。ここでなにしてんの?」



 真島が明璃に訊いてきた。明璃はサトルに細い目線を送った。このコトを言っていいのか? という目線だ。



 サトルは意図をしっかり理解して、小さくうなずいた。



「実はね――」



 明璃はこのオカ研のコトを話した。サトルの背中のバクや、ゴミ箱に隠れているカッパは伏せながら。



「楽しそうなコトやってんなあ、おれも入れて!」



「軽音部に仮入部してんじゃなかったっけ?」



「あきらめた!」



 真島は元気よく絆創膏を貼られた左手を見せてきた。親指を除く指の腹に貼っているのを見ると大ケガのようだが、真島が笑っているのを見ると、むしろ笑ってくれと言いたげな雰囲気を醸し出している。



「どうしたんそれ」



 サトルはとりあえず理由を訊いた。



「ギターの弦で切った。こう、下にヒュッって動かしたときに」



「ダッサ!」



「言ったなコイツ!」



 真島は笑っている。やはりこれで正解だったようだ。となると、このオカ研に入部できるというコトだ。



「というワケで、おれも入っていい?」



「そうだな……」



 明璃も言っていたが、このオカ研は『禅院サトル被害者の会』と称しても差し支えない。むしろ的を射ている。自己責任という無責任な言葉は使いたくはないが、入りたいというなら腹を据えてもらわなくては。



「言っておくけどマジなオカルトだぜ。後悔しない?」



「しない、しない。紫城さんがいるんだしさ、ある程度マトモだろ」



「あのね、定員割れしてる部活なんてマトモなワケないでしょ」



「じゃあ、なんでいるの?」



「マトモじゃないから、って言ったら?」



「ウッソ、中学のころの紫城さんってそんなキャラだったっけ……。えっ、じゃあ樫見さんは?」



 話題を振られると、樫見は目を逸らし黙りこくってしまった。代わりにサトルがすぐさま答えた。



「オレが誘った。文化祭の出しものを協力してもらう縁でな」



「樫見さん、ここってどんなカンジ!?」



 目を逸らしっぱなしだが、やがてゆっくりと口を開いた。



「カンジ……? えっと……、いいカンジ、です」



「超超超超いいカンジ?」



「は、はい」



 サトルはそれを聞いて心の中で喜んだ。建前でもうれしい。空妖を引きつける呪いによる出会いが樫見さんにとっていいモノになるように、もっとがんばらければ。



「じゃあ間違いないよ、ゼッタイ楽しくなるからおれ入部する!」



「覚悟は決まったんだな?」



「それを示すために、たしかめに行こうぜ。この学校の七不思議を」



「なんて?」



 妙な話になってきた。そんなモノがあるとは。



「もしかして知らん? オカ研なのにぃ~?」



 この手のネタは、人から人に流布していくモノだ。サトルの学校生活は、同じクラスでは樫見と真島しか気兼ねなく話せる相手がいないため、知るよしもない。素直に首を縦に振った。



「最新版だぜ。まずはひとつ、保健室のずっと閉まってるカーテン!」



「……それってさあ、樫見さんのコトじゃねーのか、オイ」



「あ? ゴ、ゴメン」



 いかにも学生の陰口らしい。ウチのクラスから出たウワサじゃないといいのだが。



 樫見のほうを見ると、顔を真っ赤にしてうつむいている。恥ずかしがっているのか、はたまた怒っているのか。



「あ、あとはな――」



 真島はバツの悪そうな顔をして続けた。だが、どれもくだらない。聞き流していいモノばかりだ。



「5つめは、4階の女子トイレに――」



「花子さんが出るって?」



「なんだ、わかってんじゃん」



 予測もつくし、友だちにだってなっている。やはり、そんなモノか。



「6つめは、屋上に現れる自殺した女子生徒の幽霊。おまえ、探してたよな?」



「それはもう解決済み」



「は? 解決って?」



「あー、あとで話すよ。入部祝い代わりにな」



 しかし、こんなウワサが出回ったのは、誰かが彼女を視たから広まったのか、ただ面白がってデマだけがひとり歩きしたのか。たしかめようはないが、気になるトコだ。



「そして最後の7つめはな、最近できたやつだ。知ってる? 歩く人体模型のウワサ」



「またそういうのかよ。陳腐も陳腐すぎィ〜」



 さまよう人体模型など、ありきたりな話だ。だが、どんな不可解な現象もすべて空妖のしわざと考えれば合点がいってしまう。いちおうしっかり聞いておこう。



「それを見たヤツらが、驚くほどマジメに勉強するようになったんだと。まるで、人が変わったようにな」



 勉強嫌いがマジメになったと聞くと、悪いイメージは持たないが。



「そいつらが3年生の夏のときに見たんだって。素行も成績も悪かったんだけど、寝る間も惜しんで勉強したみたいだ」



「それで?」



「なんと無事に第一志望に合格。しかも国立」



「……いや、うん。よかったね。立派だ」



 それが人体模型となにか関係があるのか、反応に困る。怖い話とも思えないし、むしろいい話ではないか。



「こっからが本番よ」



 呆れるのがわかっていたかのように、真島は語勢を強めた。



「今日、ダルいからサボるって言ってた3年生のふたりが戻ってこないんだってよ」



 そんなに居心地の良いところなのだろうか、それとも……。



「その先輩たちはどこでサボったんだ?」



「旧校舎。ほら、体育館の裏手にある薄暗いトコ」



 カッパと相撲を取ったところの近くだ。そのときいっしょにいた生徒会長の発言と重ねてみると、『サボっていた生徒が旧校舎から出たら、マジメになって戻ってきた』といった具合だろうか。



 妙なウワサが流れているというのも当てはまる。信憑性は高そうだ。



「じゃあ、オカ研らしく放課後に調査してみるか」



「そうこなくっちゃな!」



「あたしたちも?」



「とりあえず現地集合にしよう。危険かもしれないから、帰ってもいいよ」



 自分で危険とは言うものの、はじめてオカ研らしい活動をするのではないかと思うと、わくわくしていた。



「おれは行くぜ、だから入部ってコトでいい?」



「ああ、いいよ。まだ定員割れしてるから、入部届けはいらないからな」



「やった! 真島悠吾です、今日から新入部員としてがんばります!」



「よろしくねー」



「よ、よろしくお願いします」



 自己紹介をしているから、こちらもやらなくては。背中を向けて。



「はじめましてだな、ユウゴ。ワタシはバクという。他のみんなにはナイショだぞ」



「え、ええ、え。なにコレーッ!?」



 いい反応だ、バクからも楽しい感情が伝わってくる。すぐさまバケツの蓋が宙を舞った。



「んでもってオラはカッパだ。相撲でも取るか?」



「カッパァァーーッ!?」



 こうしてオカ研の洗礼を受けた真島は、午後の授業の内容は全く頭に入らなかったという。



 そして、放課後。



「いくぞ、旧校舎へ!」



 4人になったオカ研は、七不思議のウワサをたしかめるべく旧校舎へと赴いた。



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