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人を呪わば穴いくつ?  作者: 蒼井茜


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友人AB

「ちわー、冬香に誘われた彩音です! 今日は介護と宅飲み楽しみに来ました!」


「水樹です……あの、初対面なのにお泊りとかいいんですか?」


 ふむ、冬香の友達。

 まず彩音という方は冬香と同じ距離感バグ系の女の子だよね。

 一方の水樹とやらは私と仲良くなれそう。

 ソーシャルディスタンスをわきまえているタイプだ。

 あまりぐいぐい来られるとこちらも怖いのだよ。


「春奈です。ごめんね、急にお願いすることになっちゃって。お泊りとかは気にしないでいいから。学校からも近いからしばらくいてくれてもいいよ? あ、でも和室だけは入らないでね」


「うっす!」


「はい……えっと、失礼かもしれませんが何かあるんですか?」


「あー、えっと……」


 どう説明したものか。

 素直に曰く付き物件と答えるべきか、それとも適当な嘘で誤魔化すべきか……。

 あー、いいや。


「ちょっと曰く付きの物件でね。和室が特に酷いの。だから人が入ったら危ないってことでちょっとしたおまじないをしてもらっててね」


「まじすか! 心霊物件! 超楽しみ!」


「……私、怖いの苦手なので絶対に入らないです!」


 お、おぉ……彩音はちょっと心配だな。

 まぁ目を光らせておけば大丈夫だと思うけど……やらかさないよね?


「ちなみに和室以外でもちょいちょい霊障あるから気を付けてね」


「ほほう? どんなのっすか?」


「えーと、蛇口から髪の毛出てくるのは当たり前で……と言っても数分放置すればいいから水道代気にしなければ問題ないかな。あ、排水溝が詰まるのがちょっと困るくらい。あと人形が動くけど害はないから無視すればいいと思う。それとラップ音って言うのかな。あれがちょくちょくするけど、これも無害だから放置していいと思うよ。あと直近だとお風呂場の電気が勝手に消えたとか、帰ったら家電がフルで動いてて滅茶苦茶部屋が寒くなってたとかそんなくらい」


「……かなりヘビーじゃないっすか?」


「もうすでに怖いです……」


「先輩それが原因でやつれてるわけじゃないですよね?」


 三者三葉のジト目をこちらに向けてきた。

 呆れと、怯えと、心配の視線。


「エレベーターが普通に壊れてそのせいで階段の昇降が辛いだけよ。電気代と水道代が気になるけど、基本的に話聞いたうえで交渉してその辺は大家さん持ちになったから」


 そう、最初のうちはいいかなと思っていたけど流石に……となったので交渉したらあっさりOKされたのだ。

 大家さん、いい人である。


「そういえば先輩そういうバイトしてるんでしたね……」


「え? なになに? 心霊物件に住むって言う都市伝説的なバイト!?」


「す、すごいです」


「いや違いうから。そういう仕事が回ってくるようなのは本当に凄い人達であって、私みたいな木っ端者には来ないよ」


 その手の仕事が受けられるのはまず不動産屋か霊能者業界に伝手のある人物だけだ。

 中には両方と伝手を持つが、本人はなんの力もないっていう人もいる。

 そして瑕疵物件……えーと、霊現象に関わる場合は心理的瑕疵物件だったかな?

 そういう所に住んで安全確認や、霊の排除を行って収益を得るというのが基本だ。

 大抵の場合地縛霊になっているので相応の力がないと死ぬことになる。

 千秋さんなんかもその手の仕事は基本的に拒否しているらしく、曰くどんなヤバいのがいるかわからないのにほいほい受けられるほどの熟練度じゃないとのこと。


「木っ端者……?」


「あー、その、今の部屋に引っ越したのもお仕事の伝手でね? ちょっとしたアルバイトしているの。俗にいう心霊関係の相談所みたいな?」


「すげー! かっけー!」


「あまり口外しないでね? ……いや、この場合噂程度でも広まった方が千秋さんの収入になっていいのか? でもあの人学生からの仕事は嫌うからな……とはいえ財政難は続いているし……噂程度なら広めてもらって大丈夫だけど、明言は避けてもらえると嬉しいかな」


「わっかりました! それとなく酒の席で話のネタにさせてもらいます!」


「えと、私はあまりその……友達が……」


「大丈夫、私なんか友人0のまま大学生活送ってるから。というか歳とると友人なんていなくなるらしいよ。希薄になった関係性がそのまま消えるとか、お金の無心で消えるとか、物理的に死亡するとかで」


 千秋さんだけじゃない、色々な同業者に会ってきたが大抵の場合友人と呼べる存在はいないとのこと。

 まぁ業界的にもそういう間柄ではないのだろうけれど、縁を結べば呪いが辿るなどという言葉が跋扈している業界だ。

 縁者を作りたくないというのも事実だろう。

 とはいえ脱サラしてこの業界に来た人もいるので、そういう人曰くそんな感じらしい。

 やはり幽霊より怖いのは人間だなと実感するわ。


「あ、一応聞いておくけど2人とも20歳過ぎてるよね。冬香はまだだったと思うけど」


「ばっちしっす!」


「一応は……」


 そう言って学生証を見せてきた二人。

 うん、問題なさそう。

 じゃあ今日は食材以外にもお酒を買って帰りますか!

 今後の事も考えて多めにね!

 あ、ただし日本酒は除く。

 あの後試したけど持って帰ってすぐに飲んでも味が変わってたから。

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