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スピンオフ1

スピンオフ-1



「信、いつもありがとね。」

「こっちに来て、真一は、生き生きしているわ。見る見るうちに逞しくなって。私に、いつも道場でのお話ししてくれるの。楽しそうに。信のことが出ない日は無いくらい。」瀬奈は、くすっと笑う。

由布子も、このごろは歩けるようになって、信、信って回らない口で言いながら、後ろ追いかけてるし。

雅孝の方が、同い年と雖も体は小さく、そんな由布子をハイハイで追いかけ、追いつかなくていつも泣いて瀬奈を呼び、

「どーしたの?」と聞くと、その胸に飛び込んで顔を埋める。


「私の子供にまで、良くしてくれて、いつも、本当にありがとう。

私なんて信からすれば、別に親戚でも何でもないのに。

何かお礼したいわ。欲しいものあったら言って。ねぇ、なにがいい?お菓子作ってさしあげましょうか?水菓子とかお好き?それとも、防寒用の襟でも作ってさしあげましょうか?今年の冬は寒そうですからね。」


「瀬奈様は、そう言って、僕のことをいつも子ども扱いする。年はそんなに変わらないのですよ。1つ下なだけで。」信はそう言って、ちょっと不満げに口を尖らせた。

そんなところは、端正な顔立ちに、少し子供っぽい表情が残る。


「では、何にしましょうか?」にっこりと、瀬奈の問いかけに。

「じゃあ言います。笑わないでくださいね。僕は、瀬奈様が欲しいです。」「へ?」変な声が出た。

な、なななに?ぽかんと瀬奈の口が開く。


「だから、瀬奈様と・・共寝を・・したいと。」信が今度は、少し恥ずかしそうに言った。


「そ、それって。」瀬奈は、焦っていた。まさか弟のように思っている信から、そんな言葉が出るとは。あ、あ、そうか!わかったわかったよ!閃いて、瀬奈は自分の考えに、納得した。


「それって、アレでしょ。添い伏しみたいなもので・・。東宮様とか帝の元服のとき当たり前にされていたこと。そうかぁ・・。

きっと信には好きな人がいるのね。

それでそういう仲になりたいけど、経験がなくて、それを教えてくれるようなそんなのが必要って、そういうことでしょ?私もう二人子供産んでるし。」一気に捲し立てた。


いや・・ちが・・と信は、言いかけたが、瀬奈は、ガン無視で、そんな言葉も遮るように猛烈に、


「でも、そんなのって心配するほどじゃないよ。

本当に好きなら、初めて同士でも、どうにかなるものだし。

私も、融さんと、焦りまくったけど・・・うまく。や、やだ。私、何言ってんの。

だから、ダメよ。こんなおばさんからかっちゃ。ねぇ、信。」


その笑ったり焦ったりの、百面相の顔を見ているうちに、信は、ぶっと吹き出した。


「ごめん。変なこと言って。冗談だよ。忘れて。

そっだよな。こんなに一途な人、からかって悪かったよ。

で、なに?

三途の川渡るとき、そのナントカさんとやら、待ってるつもりなの?」


「うん。離れてからの罪滅ぼしに待っていようと思うの。だって、真一とか由布子のこと話したいじゃない。

共に過ごしてこれなかった日々を謝りたいし、

ああ、そうだ。それに、敦子様とか信さまのことも話しそびれているから、いろいろ伝えたいこともあるし。お世話になったんだよって。それに。あと・・他にもいろいろ。」

夢見る瞳で話しだした。あーあ。


まったく・・ごちそうさま。信は、そう言って、「その上、生まれ変わって今度も楽しく暮らそうなんて約束したって言ってたよね。どんだけ・・しつこいのさ。」ちょっと憎々しげに。

「じゃあ、僕は用があるから・・またね。」

そう言うと、離れて行った。


もぅ、信ったら。冗談キツいんだから・・あーびっくりした。

でもどうなるのかな。来世生まれ代わったら、信とも会えるのかな?敦子さまにも逢いたいな。瀬奈はそんなことを思っていた。




「生まれ代わりって、別に今のままになるわけじゃないよね。

じゃあ、そのナントカさんより僕が、先に出会えることもあるわけだ。瀬奈様より年が上なことも。」

次に賭けてみるかなんて・・愚にもつかないことを考えた自分に、少し笑った信だった。




(了)


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