第2章「バージンロード」第38話
いつもありがとうございます!
車で移動して、神社に着いて時、最初に私とマリアちゃんを迎えてくれたのは、
「お待ちしておりました。「楠佐切」と申します。」
後に、この「楪神社」の管長になる「十二家紋」の一人、「執行」を務めている「楠」家の「楠佐切」さんでした。
深緑色の長い髪の毛がとてもきれいで爽やかだった彼女はかつて現役の「オーバークラス」である「十六夜歌劇団」の団長、「東雲朧」さんと共に世界を飛び回って世界を救った、いわば私達の先輩的な存在でした。
他に「有馬花丸」という凄腕の剣士がもう一人いたそうですが、朧さんも、佐切さんもあまり彼女の話はしたくない様子でした。
「はじめまして!「黒江マミ」です!」
「「阿部真理愛」です。」
私とマリアちゃんは簡単に自己紹介をして、
「管長が中でお待ちです。どうぞこちらへ。」
佐切さんの案内でまずここの神社の総責任者である管長にお会いすることにしました。
当時の管長は「十二家紋」の一人、代々神社の自衛と軍事を担当していた「三好」家の「三好凛」さんで、彼女は「楪神社」の巫女たちの安易を保証するために様々な方法を模索していました。
その時、接続してきたのは「帝国」の使節団のやっちゃんでした。
やっちゃんは西の覇者である「楪神社」と協力すればより一層いい世界が作れそうというお兄さんの司さんの言葉に応じて、自ら神社の方に声をかけたのです。
もちろん最初からそんなにすんなりと事がうまく運ばれたのではありません。
実際、管長の三好さんはもちろん、他の「十二家紋」の皆は「帝国」側になにか下心があるに違いないと疑ってましたので、最初の「楪神社」はやっちゃんの声に応じてくれなかったのです。
でも佐切さんは一族を代表してやっちゃんに一度接続を試み、やっちゃんの真剣な気持ちが分かって、「神社」はやっちゃんと話し合うことを決めました。
管長の三好さんに会った私とマリアちゃんは彼女から色んな話を聞かせてもらいました。
そして「楪神社」もまた平和を求めているということが分かって、「帝国」と「楪神社」の今後の良好な関係が期待できました。
私はスタートを切ったばかりにいきなりこんな大物に出会えることに自分でもびっくりでしたが、何より自分の目で彼女たちもまた真剣にこの世の安寧と平和を望んでいたことが分かってそれがとても嬉しかったです。
三好さんもまたより良い世界のために役に立ちたいという私達の気持ちを真剣に思ってくれて、尊重してくれました。
「それでは失礼しますー」
三好さんとの話し合いが終わって、彼女の部屋から出た私達は次に佐切さんと一緒に応接間に場所を移して少しおしゃべりをすることになりました。
当時の佐切さんは普通私のような駆け出しの冒険者がお目通りすることすら許されないほどとても偉い人でしたが、彼女はやっちゃんの時と同じくすんなりと私とマリアちゃんのことを受け入れて、顔を合わせて話し合ってくれました。
彼女は自分もかつて仲間と一緒に世界を回ったことがあって、私達にすごい親密感を感じたと、素性も分からない私のことを快く受け入れてくれました。
でもやっぱり一番驚いたのは、「聖王庁」の異端審問所「クライシスター」の異端審問官であるマリアちゃんのことも警戒することなくそのまま接してくれたところでした。
彼女は自分のこういう懐の深さについて旅の途中に身につけた後天的な性格だと言いましたが、それがいかに大胆なことであるか、私達はあまりにもよく知っていました。
実際、三好さんに会わせられるように彼女に話を通してくれたのも佐切さんだったので、私達は内心佐切さんのことを尊敬していたのです。
それから私達は佐切さんと色んなことを話し合いました。
ここの「楪神社」が目指している世界、そして私達が成し遂げたい世界。
互いに考えと価値観を話し合っているうちに私達の間にはいつの間にか親密感以外にも信頼と友情が生まれたのです。
彼女はもう自分は神社から離れることができなくなったけど、仲間と一緒に一つの目標のために一生懸命になるのはとても素敵なことだと、私達の行く末を心から祝福してくれたのです。
そして彼女はついに私達にある人物を紹介しました。
「花音、入りなさい。」
「はい。」
彼女の呼びに部屋に入ってきた小柄の少女。
「「月島花音」です。よろしくお願いします。」
私達がここにいる間、私達の面倒を見てくれる人だと佐切さんが紹介したその少女は自分の「月島花音」という可愛いお名前を私達に教えてくれたのです。
オレンジ色の髪の毛とつんした表情がまるで赤狐のように可愛かった若い巫女さん。
紫色の瞳の中には気高い精神と優しさがいっぱい詰まっていて、
「この巫女さんがやっちゃんが言ってたー…」
私は一目で彼女こそやっちゃんに勧められた逸材であることが分かったのです。
「お茶を入れ直してまいります。」
でも短い自己紹介だけを済ましてカノンちゃんはすぐ部屋から出てしまって、そんなカノンちゃんのことを佐切さんは少し心配そうな目で見ていたのです。
「すみません。あまり人と付き合おうとしない子で。」
っとあの時のカノンちゃんの澄ました態度について変わりに謝る佐切さん。
私達は全然気にしないと伝えましたが、
「むっつりところはありますが、根はとても優しい子なんです。
誤解されることが多くて心配です。」
佐切さんはもし彼女のそっけない態度に私達が彼女のことを誤解したらと、ずっと気にかけていました。
カノンちゃんはオーガに拾われて、そのまま佐切さんに託されてここ「楪神社」で育って戦争孤児です。
当時、佐切さんに森で拾ったカノンちゃんを託した彼女の知り合いのオーガ夫婦はこう言ったそうです。
「人間の子は人間の社会で生きるべきです。
今の時代、それもオーガと共に生きられる人間なんていませんから。」
そう言ったそのオーガの夫婦は二度とカノンちゃんの前に現れませんでした。
そして幼いカノンちゃんを引き取った佐切さんもまたその夫婦に会いに行かなかったそうです。
無論カノンちゃんも拾ってくれた里親を探しに行かなかったのです。
でもカノンちゃんは自分の素性をそのまま受け入れて、この世界をもっといい場所にしていこうと心を決めました。
自分のような悲しい思いをする子がもういないようにと。
そしてそんな中でカノンちゃんが選んだ方法が、
「歌…ですか?」
歌で世界を紡ぐということでした。
「ええ。あの子、歌がとても上手でして。」
っとカノンちゃんには他の人にはないカノンちゃんだけの武器があって、それはカノンちゃんの特技である歌ということを、佐切さんは私達に教えてくれました。
「ああ見えても歌うことが大好きでして、それは神社の皆も認めています。
でも先話した通りに人付き合いが苦手な子で、お祭りとかではない限り、あまり人前では歌ってもらえないんです。」
カノンちゃんは神に舞楽を捧げる「神楽」の巫女で、その歌声と舞は美して華やかだと評判がいい。
何よりその歌声には皆と世界の安寧を祈る真剣な思いがいっぱい詰まっていて、皆を一つにつなぐ力があると、佐切さんはカノンちゃんの歌への自分の鑑賞をそう素直に話しました。
「だからあの子にはもっと広い世界に出て、たくさんの人々の前で歌って欲しい。
というのが今の私のちょっとした望みです。」
その時、私とマリアちゃんは本当は彼女だってやっちゃんと同じ思いをしていることに気づきました。
佐切さんは最後まで私達に一度カノンちゃんの本音を聞いて欲しいとは言わなかったのですが、
「任せてください、楠さん。私達は最初からそのつもりでしたから。」
私達はなんとか彼女の心に開いてみせると、彼女に約束したのです。
「私はこの件はマミに任せた方がいいと思うわ。」
「私もマリア先輩と同じ意見です。」
でもマリアちゃんとやっちゃんはカノンちゃんの件は私に任せると、私にそう言いました。
「丸投げとかではないわ。ただこういうのってマミに向いていると思うから。」
「その通りだと思います。」
「そ…そうなんですか?」
二人は私にこう言ってくれました。
「マミには人の心に寄り添える力があるの。
実際、私とやちよの時がそうだったから。」
「まあ、確かにそうですね。」
私には人の心に寄り添える温かさがあって、真正面から真剣に見てくれる優しさがあると。
「でもいきなりミルクを勧めたりするのは控えてくださいね。
絶対警戒されますから。」
「うぐっ…」
もちろん物事には限度があるということも忘れずに教えてくれたのです。