第2章「バージンロード」第35話
お待たせいたしました!無事に新人賞応募ができて今日からまた活動再開です!
時間が足りなくて書いた部分まで送るなどいろいろ残念なところはありましたが、自分なりに最善を尽くしましたので悔いはないと思います。
皆様の応援のおかげでチャレンジすることもできて、本当にありがとうございます!
それでは今日からまた頑張って参りますので、どうぞよろしくお願いいたします!
いつもありがとうございます!
「やっちゃん…?まだ怒ってますか…?」
「…怒ってません。」
家に帰ってからもなかなか機嫌を直してくれなかったやっちゃんに、私はただ部屋の前をウロウロしていただけでした。
自分はどうしてやっちゃんがあんな風に怒っていたのか、今もよく分かりませんが、とにかくやっちゃんはしばらくずっと部屋にこもってその可愛い顔も見せてくれなかったのです。
カトリーナちゃんは、
「絶対マミが悪いですわ。」
って感じで、私の何が悪かったのかも教えてくれませんでしたが、一つ確かなのは私の迂闊な言葉がやっちゃんの機嫌を損なったということで、私は自分のダメなところをやっちゃんにちゃんと謝りたかったのです。
「ごめんなさい、やっちゃん…私のどこがいけなかったのか、よかったら教えてくれませんか…?
私はアホなんですから、やっちゃんを怒らせてしまった理由が分からないんです…」
っと扉の前で一晩中謝り続けた私に、
「…だから怒ってなんかないんですってば…」
ついにドアを開けて顔を見せてくれたやっちゃん。
月の光に照らされて輝く白い金髪。
真っ赤になった可愛いほっぺを照れくさく隠しながら、その透き通った真っ青な目で私のことを見つめていたやっちゃんは、
「…別に先輩のせいじゃないですから。」
私は何も悪くない、ただそれだけははっきり伝えておきたかったと、私にそう言ってたのです。
「勝手に勘違いして一人だけ盛り上がって舞い上がったのがちょっと恥ずかしくなっただけです。」
っと初めて自分の気持ちを素直に話くてくれたやっちゃん。
私はどうしてやっちゃんがあんな気持ちになったのか、本当はちょっと分かりませんでしたが、
「でももう大丈夫ですから。だから顔上げてください、先輩。」
自分はもう気にしないと、やっちゃんはやっと私の話を聞いてくれたのです。
あの夜、私たちはいっぱいお話しました。
マリアちゃんのことや、今後のこと。
無論、
「私はこの世界がもっといいところであって欲しいです。」
自分の気持ちをちゃんとやっちゃんに伝えることも忘れなかったのです。
今は手の届くところが少ないかもしれない。
でもいずれ私たちは私たちの力でより多くの人々と世界を救えると、私は自分が信じている自分の目標と価値をやっちゃんに伝えました。
そしてそのすべてを心から受け止めてくれたやっちゃんは、
「私も先輩と同じ景色が見られるようにお供します。」
っと「バージンロード」活動に協力を惜しまないことを約束してくれました。
学校を卒業したら早速活動開始。
それまで私はなんとかフリーン様に計画のことがバレずに気をつけながら事を進めなければなりませんでしたが、
「マミ、お前、最近おかしいぞ?」
「ギクッ…!」
正直に言って、バレてるんじゃないかってドキッとした時は何度もありました。
「な…なんのことでしょうか…!ミルクが止まらなくなった以外に特になにも…!」
「別にそういう意味じゃ…というかそれだけで十分変だと思うがな…」
「うわぁ…!先輩の胸元、もうこんなにびっしょり…!」
っと嘘が下手くそな自分と違って恐ろしいほど感が鋭いフリーン様に何度もハラハラさせられた私。
そんな私のことをやっちゃんは純真な人だって好きにしてくれましたが、
「でもフリーン様の前ではもう少し自然な表情でいた方がいいと思います。
だって先輩、いつも目が泳いでいるんですもの。
後、ミルク、出しすぎます。」
「ええ…!?」
やっぱり疑われるような行動は避けた方がいいと言ったのです。
「先輩の彼氏さん、本当に大丈夫な人なんですか?
なんか変な性癖を持っているのではないかと、私、そろそろ心配になってきましたが。」
「ゆうくんは体質だから仕方がないって言ってましたけど…
まあ、たまに困りそうな様子はありましたが…って今、なんでゆうくんのこと?」
っと内心、私のことがすごく心配になったやっちゃんは何としてもフリーン様だけにはバレないように念には念を入れたのです。
それとあまり人前ではミルクを出さないようにとも言いました。
「私はまもなく使節団の仕事でここを発ちます。先輩の卒業式に行ってあげられないのはすごく残念ですが、必ず戻ります。」
っとそろそろ使節団のことで街を出ることを私に知らせるやっちゃんの言葉はなんだかすごく寂しくて、名残惜しいという気分でしたが、やっちゃんは私と一緒によりよい世界を作るために必ずここに戻って来ることを約束してくれました。
「真島さんは同行できませんが、全面的に先輩に協力すると、私にそう約束して、私も彼女のことを心から信頼しています。
もちろんこれはあくまで私の個人の意志でやると決めたことなので、お兄様はなんの力添えもなさらないと思うのですが、そういうの、今更関係ありません。
私は自分の意志で先輩とより良い世界を作りたいと決めましたから。」
と言いながら私に自分の意志を確かめさせてきたやっちゃんのしたたかで堂々とした真っ直ぐな眼差しは今もよく覚えています。
自分の決心になんの疑問も、ためらいも持たないやっちゃんの屈しない意志は今もずっと私のあこがれのままです。
「だから先輩はくれぐれもフリーン様にバレないように気をつけてください。」
そしてやっちゃんは知っていたのです。
「もしフリーン様に見つかったら何としても止めさせようとするはずです。
でもそれはフリーン様が先輩のことをすごく大事にしているからで、決して先輩のことが嫌いってわけではありません。
本当はちゃんとした許可を得るのが一番だと思うのですが、彼女の性格から見ると絶対許してくれないのでしょう。」
私の先生、フリーン様が「バージンロード」活動を猛烈に反対していること、フリーン様にバレたら大変なことになること、そして反対するしかなかったフリーン様の私への親心まで。
そしてそれは自分もそう変わらないと、やっちゃんは先生のことを全面的に弁護しました。
「だから彼女が安心できるように私は全力で先輩を守ります。
生まれて初めて私のことをありのままで受け入れてくれた先輩は私のかけがえのない人ですから。」
皆を守りたい、この世界をもっと良い世界にしたい。
そう思っていた自分のことを初めて分かってくれた私のことをやっちゃんは特別に思ってくれて、私もまたそんなやっちゃんのことを運命と言ってもいいほど特別に感じてました。
でもやっちゃんへの大切さが大きすぎたせいで、いつも自分一人で背負おうとした私は、結局最後までやっちゃんのことを心から信じてあげられず、挙句の果てには消せない傷まで与えてしまったのです。
その思いがやっちゃんが私の傍から離れる原因になって、皆をバラバラにした時は悲しくて、辛くて私はずっと泣き続けました。
それからしばらく経って、やっちゃんは使節団の仕事で次の目的地である西へ向かい、「楪神社」に接続するようになりました。
そこでやっちゃんは今の「帝国」と皇帝のお兄さんの理想とこれからの方針、目指すところを伝えるなど、見事に使節団の務めを果たしまして、「帝国」と「楪神社」の間により友好な関係を築き上げました。
それだけ当時の「帝国」は、皇帝の「皇司」さんは世界の平和に本気だったのです。
そして、
「卒業おめでとう、マミ。」
「おめでとう。」
「ありがとうございます!ゆうくん!マリアちゃん!」
私はめでたく無事に大学の卒業を迎えることができました。
「マミならうまくやれると信じてたよ。」
「えへへ♥もっと褒めてください、ゆうくん♥」
「人の前でイチャイチャしやがって。」
遠路はるばる、私の卒業を祝うために遠い東大陸から西まで来てくれたゆうくんとマリアちゃん。
聖王庁は公式に自分たちが信じている女神「エル」の宗教以外は認めない立場ですが、やっちゃんのお兄さん、つかささんの宥和政策のおかげでマリアちゃんは割と自由に行き来ができたので、マリアちゃんは問題なく私の卒業式に参加できました。
そして「帝国」でテニス選手として活躍していたゆうくんはわざわざ休暇を取って私に会いに来てくれて、私は自分を祝う二人が来てくれたことがたまらないほど嬉しかったのです。
「ご卒業おめでとうございますわ、マミ。」
「カトリーナちゃん!」
そして私の卒業を祝ってくれたもう一人の親友、カトリーナちゃん。
カトリーナちゃんもまた私と一緒に無事に卒業を迎えることができて、私は彼女の卒業を心から祝ってあげたのです。
「カトリーナちゃんも卒業、おめでとうございます♥
後、今まで仲良くしてくれて本当にありがとう♥」
「な…なんですの?そのお別れの挨拶みたいなやつは…」
祝いの言葉と共に今までお礼を言う私にカトリーナちゃんは照れくさい顔でそういうの、止めてちょうだいと言いましたが、
「わたくしの方こそありがとうですわ、マミ。」
恥ずかしながらも最後にはちゃんとその気持ちに応えてくれるカトリーナちゃんでした。
「私、これからもずっとずっとカトリーナちゃんと仲良くなりたいです♥」
「そ…そこまで言うのなら仕方ありませんわね…!
このわたくしと友人であることを誇りに思うことですわ…!」
「真島さん、照れているわね。」
「仲良くて良かったよ。」
「ぐっ…!」
前に私の紹介で何度もカトリーナちゃんに会ったことがあるマリアちゃんとゆうくんはああやってカトリーナちゃんと私の仲を喜んでくれて、
「もう…」
思いっきりほっぺを膨らませたカトリーナちゃんだって内心それが嬉しそうな顔で、ただ不慣れの照れ隠しをするだけだったのです。
前に話した通りに使節団の仕事でやっちゃんは来られませんでしたが、実家の両親と皆が私の卒業を祝ってくれたおかげで、私はとても楽しい時間を過ごしました。
そしてそれは同時に新たな一歩を踏み出すことを意味するということを分かっていた私は期待と心配が混ざりあった気持ちで人生の最後の卒業式を満喫したのです。
でも、
「フリーン様…」
私の先生、フリーン様は結局私の卒業式にも参加せず、どこにも姿を表しませんでした。