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異世界アイスクリームおばさん  作者: フクキタル
第2章「バージンロード」
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第2章「バージンロード」第34話

いつもありがとうございます!

それからやっちゃんはしばらく合唱部の練習を見学していくことにしました。

皆、最初はすごく緊張していましたが、


「練習通りにすればいいですわ。ほら、肩の力を抜いてくださいまし。」


皆に発破をかけるカトリーナちゃんの言葉にやっちゃんのことを歓迎するという意味の歌を歌い始めました。

豊かな自然、そして人々の結束を称える南大陸で最も愛される愛唱歌「あぁ、青い空」。

私達は私達のことをもっとやっちゃんに知ってもらうために、そしてこの出会いに感謝しながら心を込めて一生懸命歌を歌って、私達の歌に感動したやっちゃんは、


「ありがとうございます。とても素敵な歌でした。」


歌が終わった後、今自分にできる精一杯のお礼を伝えたのです。


そしてカトリーナちゃんは合唱部を代表して記念品を贈呈し、やっちゃんも使節団代表として合唱部の皆に親愛のプレゼントを贈り、感謝の気持ちを伝えました。


「では皆さん、またお会いしましょう。」


その後、やっちゃんと私は先を急ぐため、皆に別れの挨拶をして部室から出てきましたが、


「わたくしもお供して差し上げますわ。」


どうやらカトリーナちゃんはまだまだ私達とお話がしたかったようです。


そうやってカトリーナちゃんも合流して一段と賑わった私達。

たまにやっちゃんから、


「真島さんって野暮ですね。」

「おっほほ!よく言われますわ!」


ってカトリーナちゃんへの不満そうな文句は出てきたのですが、それも含めて私はとても楽しい時間を過ごせたのです。


「はい、先輩。あーんしてください。」

「ちょっ…!マミ!わたしくのもどうぞ!」

「ありがとう、二人共ーでも私のだって一口も食べてませんからー」


3人でスイーツカフェで一緒にパフェを食べたり、


「この時計塔からは街中の景色が見られます。」

「素敵な景色ですね。」


この街の有名な観光スポットである時計塔に登って一緒に景色を見たり、とても、とても楽しい時間でした。

私は一緒に遊ぶことでやっちゃんとの距離が縮まったような気がしてこれからももっともっと仲良くできると、そう感じたのです。


だからいつやっちゃんにあのことを言えばいいのか少し迷っていました。

もし自分の気持ちが伝わらなかったらどうしようと心のどこかでためらいを感じていましたから。


「卒業したらマミはどうするつもりですの?」


でもカトリーナちゃんから今後のことを聞かれて、


「私は世界を救いたいです。」


私は思いを切ってずっと抱え込んできた自分の気持ちを二人にぶつけた時、


「マミらしいですわ。」

「先輩が誇らしいです。」


二人はありのままの私のことを受け入れてくれました。


「やっぱり雄一郎さんと結婚ですの?」

「ええーゆうくん、プロポーズしてくれるのかな。」

「ムッ。」


っとカトリーナちゃんは卒業したらやっぱりゆうくんのお嫁さんになるんですかと聞きました、あの時、私達にはそれぞれの夢がありましたから。

ゆうくんにはプロのテニス選手としてのレベルを上げてもっとすごい選手になる夢が、そして私にはずっと思っていたよりよい世界のための夢があってお互いに夢に夢中になっていた頃でしたから結婚の話はもう少し先のことだと思っていました。

もちろん私はずっとお嫁さんになりたいなって思ってましたし、ゆうくんだって私と結婚するために頑張ってましたからそんなに関係ない話ではなかったかも知れませんね。

実際、「バージンロード」の活動の後、故郷に戻ったら、


「僕と結婚してくれる?マミ。」


ゆうくんは子供の頃、よく遊んでいた風車が建っているあの夕暮れの坂で私にプロポーズしてくれました。


海が見えるきれいな岬。

あそこでゆうくんと生涯を一緒に歩いていくことにした私はゆうくんのお嫁さんになったのです。


町中の皆の祝福の中で行われた盛大な結婚式。

でもマリアちゃんとカトリーナちゃんを除いた他の「バージンロード」の子は誰も参加してくれなかった少し寂しい結婚式でした。


「私は絶対反対です。」


あの時、やっちゃんは確かにこう言って私とゆうくんの結婚を反対しました。


「先輩は女の子だから伴侶としては同じ性別の女の子の方が絶対いいです。」

「そ…そうなんですか?」


思いっきりほっぺを膨らませて私達の結婚に不満を表していたやっちゃん。

やっちゃんのそのような反応は少しだけ私を困らせたりもしましたが、それだけ私のことが好きだった証拠だと、私はやっちゃんのゆうくんへの可愛い妬ましさも心から愛していました。


「確かにあの時の環さんとあなたの仲は良かったのですわ。」


カトリーナちゃんも覚えているあの頃のやっちゃん。

堂々として真っすぐで直向きに自分の心をぶつけてくるやっちゃんは自分に少し似た不器用な人だったとカトリーナちゃんはそう言いました。


「「バージンロード」の解散はあなたの選択。

あなたのことです。きっとなにか理由があったのでしょう。

でもそのきっかけとなった環さんの「バージンロード」脱退もまた環さんの選択。

お互いの理由が必ずしも一致するとは限らない。それだけのことですわ。」


私の放浪時代、私の生活を支えてくれたカトリーナちゃんは「バージンロード」の解散も、やっちゃんの「バージンロード」脱退も、全部私だけの責任ではないと言ってくれました。


同じ境遇を背負っているからこそ分かり合えるお互いの気持ち。

それでもカトリーナちゃんは私にこう言ったのです。


「でも、マミ。

あなたはあなたの優しさが時には他人を傷つけることもあることを知っておかなければいけませんわ。」


良かれと思ったことが必ずしも報われるとは限らない。

それはもう一度自分の行動を振り返り、その意味を他人の立場から考えてみなさいというカトリーナちゃんなりの心遣いだったのです。


やっちゃんが「バージンロード」から抜けた時、最後に残した私への一言。

それはあまりにも苦しくて胸が張り裂けそうに痛かったのですが、私はやっちゃんとの再会のために今も胸のそこにその最後の一言を大事にしまっておきました。


「結局あなたは自分の自己満足のために動いていただけ。

あなたは一度も私達のことを信じてくれなかった。

私はあんな自分勝手なあなたの偽善が大嫌いです。」


私のことを誇りに思うとまで言ってくれたやっちゃん。

そんなやっちゃんが私のことを偽善者と呼んで嫌悪するようになった。

それがどれだけ私に大きな傷になったかはあえて言うまでもありません。

それでも私がそのことを忘れないようにしているのは、次に会った時、私がもう一度やっちゃんの手を取って誤解を解いて、もう一度あの時のような仲良しに戻るためです。


あの日、私達が最後に寄ったのは観光スポットとして有名な中央広場の時計塔。

そこで私はカトリーナちゃんとやっちゃんにこれからも自分の夢、そして目標を打ち明けました。


「より良い世界のために。」


マリアちゃんとゆうくん以外、同い年の子に初めて明かした本当の気持ち。

二人はより良い世界のために旅に出るという私の夢を聞いて、最初は少し戸惑って顔を見合わせましたが、最後にはこう言ってくれました。


「あなたが誇らしい。」


と。


そして約束してくれました。

何があっても私の夢を応援すると。

その時、私はやっちゃんも、カトリーナちゃんも、この世界をより良くするためにはどうしても必要な人だと心からそう思ってしまったのです。


そしてついに私はやっちゃんとの帰り道でやっちゃんに告白してしまったのです。


「私、やっぱりやっちゃんとずっと一緒にいたいです!

私にはやっちゃんが必要なんです!」


その時、やっちゃんがどんな顔をしていたのか、今もよく覚えています。


「あ…でも私達は会ってから日も浅いし…

それに先輩には恋人が…」

「はい?」


あの時、どうしてゆうくんのことが出てきたのかはよく分かりませんが、とにかく真っ赤な顔になってなんと言ったらいいのか、迷って一生懸命悩んでくれたやっちゃん。

それは真剣に私の告白を考えてくれたという証拠で、その気遣いがあまりにも嬉しかった私は、


「無理なお願いというのは承知の上です!

でも私はどうしてもやっちゃんと一緒にいたくて、やっちゃんと会えたのはきっと運命だと思いますから!」


私達の出会いは単なる偶然ではない。

私達は運命に導かれてここで出会ったと、自分のありったけの気持ちをやっちゃんにぶつけました。


「せ…先輩のお気持ちはすごく…すごく嬉しいです…

私だって先輩と一緒に…ずっと一緒にいたいし…

でも浮気はやっぱりよくないと言うか…」

「はい?」


ゴニョゴニョしながらも素直に私の気持ちに答えてくれたやっちゃん。

何を言っているのかはさっぱりでしたが、とにかく夕暮れに照らされてキラキラ輝くやっちゃんはとてもきれいで初々しい顔をしていました。


「私と一緒にいてくれますか?やっちゃん。」


っとやっちゃんの手を握って最後の一言を言った時、


「じゃ、じゃあ…よ…よろしくお願いします…先輩…」


ついに私の気持ちを受け止めてくれたやっちゃん。

私は自分の気持ちがちゃんと届いて、しかもやっちゃんがそれを受け止めてくれたと思って天にも昇るほど嬉しくて、やっちゃんのことを抱きしめて、


「やっちゃんならそう言ってくれると信じてました!

だってやっちゃんもまた私と一緒に世界のことを思ってくれた優しい人なんですもの!」


その嬉しさを言葉で語りましたが、


「…はい?」

「え?」


どうやらあの時のやっちゃんは多分別のものを考えていたようです。

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