第2章「バージンロード」第30話
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「連合」結成から数年後、突然「連合」がある南大陸に訪れた一人の少女。
彼女の訪問はあっという間に大きな噂の嵐を呼び起こして街中どころか南の全大陸は例の少女の話で大騒ぎでした。
「またあのお姫様の記事…」
新聞やニュースなどのマスコミは連日彼女のことを記事に出して国民の彼女への興味を極限まで高め、引き起こしました。
当然当時普通な大学生であった私も彼女のことにすこぶる興味を持ち、一度会ってみたいなと思いましたが彼女は到底私なんかにはお目通りできない雲の上の存在。
住む世界が私達はすれ違うことすらないと私はそう思っていました。
「帝国」第1皇女。
訳ありで母の名字を使っているが皇位継承順位第3位の名実ともに「皇」皇室の血を引く皇帝の一族。
後に「オーバークラス」の一人、「オーバーロード」としてこの世界を魔神から救い出す一人に選ばれる彼女の名前は「環八千代」。
きれいな金色の長い髪の毛と透き通った真っ青の目を持った彼女のことを私は「やっちゃん」と呼んですごく可愛がってました。
やっちゃんと会ったのは単に自分がフリーン様の弟子だったという割とシンプルな理由でしたが私はあの時運命が私達を導いたとそう感じました。
決して交わることすら叶わないと思った「帝国」のお姫様が私とフリーン様の家を訪ねたのは大学3年の時。
後1年で私は卒業して前から考えていた計画を行動に移す。
そう心を決めて聖王庁所在の医学部を飛び級で卒業してとっくに医者として活躍していたマリアちゃんと内密に例の計画を進めていたあの頃、
「ここにフリーン様がいらっしゃると伺いましたが。」
突然私とフリーン様の住処を訪ねてきたやっちゃん。
金色の長髪と澄み切った真っ青な目をした上品な美少女の登場に私は一瞬言葉も失ってただ呆然とするようになりましたが
「うわぁ…何あの胸の大きさ…本当に人間…?」
どうやら驚いてしまったのは私だけではなかったようです。
全身を包んで漂っている気品。
瞳のそこには王族としてのプライドと誇りが宿っていてやっちゃんの真っ直ぐで上品な性格をうかがえる。
それでもなお他人を思いやって誰かのために頑張れる優しさも併せ持つ。
多分あの時、すでに私はやっちゃんのことを例のプロジェクトのいち員として迎え入れようと思っていたかも知れないです。
何人かの付き人を連れてフリーン様に会いに来たやっちゃん。
やっちゃんは自分のことを「帝国」の第1皇女と名乗って初めて会った私に自分のことを紹介したのです。
「私は「環八千代」。
「帝国」の第1皇女であり、今回「連合」との和平協定のために使節団の代表として派遣されました。」
一国の姫であるやっちゃんがわざわざ敵対国である「連合」まで使節団としてやってきたのはもうじき行われる王位継承のため。
やっちゃんは腹違いの兄である時期皇帝「皇司」さんであればきっとよりいい世界を作ってくれると彼のことを強く信じていました。
「そのために私は先見者として名高いフリーン様に会って話を伺いたいと思います。
お兄様もぜひ話を聞きなさないと言ってましたので。」
「そうだったんですね。」
あの頃のやっちゃんのお兄様、つかささんは名実ともに王位継承順位第1位の時期皇帝で「帝国」に新たな風を吹き込む期待株として皆に大きな人気を得ていました。
賢明で知的で慈しみまで併せ持った今まで権威主義であった「帝国」の皇帝とは思えない人物。
立場上直接庶子であるやっちゃんのことを支持することはできませんでしたがそれでもやっちゃんのことを内心認め、大切にしていた妹思いの優しいお兄さんでした。
篤実な「聖王庁」信徒で悪を憎み、妥協はしない真っ直ぐな性格。
女神「エル」の教えに従って心を尽くして民を愛し、民から愛される善政の王。
「オーバークラス」となった妹のことを笑顔で迎えてくれたつかささんは固く閉じていた「帝国」の扉を思いっきり開いた先駆者でもありました。
つかささんのおかげで前より多くの人々が「帝国」との交流を図り、関係を深めることができてゆうくんもつかささんのことを高く評価したのです。
そんな彼が再び「魔術殺し」を復活させ、「帝国」の扉に鍵をかけて「帝国」を前代未聞の戦争国家に変えてしまった。
やっちゃんは「オーバークラス」でありながら徹底的なつかささんの手先になって今になっては「オーバーロード」や「騎士姫」ではなく「処刑姫」などの物騒なあだ名で呼ばれている。
彼の堕落にいくつかの事件が絡まっていますがやはり一番大きな影響を与えたのは病によって妻をなくしてしまったことだと世間はそう知っていてそのことに「聖王庁」と魔女が絡んでいることであることを「バージンロード」と「オーバークラス」の皆は知っています。
それでも私達はやっちゃんとのことを考えて何もできませんでした。
当時フリーン様を交えて今後のことについて話したいというつかささんの意見は「帝国」から見たらかなり破格的なものでしたがもしうまく行ったら人類はより目覚ましい発展を成し遂げることができると彼の志を強くアピールしたやっちゃん。
やっちゃんはつかささんはその「人類」に私のような「魔術師」やマリアちゃんの「悪魔」のような異種族も入れるように共存を図っているということも予め言っておきました。
後で知ったことですがあの時、やっちゃんはすでに私が普通な人間でないことに気づいていたらしいです。
その時、私は確信しました。
「この人ならきっと分かってくれるかも…!」
つかささんの共存思想を心から支持し、共感してくれるこの人なら私達と一緒に行動してくれるかも知れない。
そう思った私はまず彼女をフリーン様に会わせてあげたのす。
やっちゃんはフリーン様に会って何日も話を聞きました。
人類が目指すべきの未来、そのためにどう行動すればいいのか。
やっちゃんは真剣にフリーン様の意見を求めて一言も聞き逃さないように全神経を集中してフリーン様の話に耳を澄ませました。
「なるほど。確かにその通りです。」
っとまた知識が増えたと感服するやっちゃん。
周りからチヤホヤされながら育っただけのボンボン育ちに過ぎないという世間の認識と違ってやっちゃんは幅広い知識を持っていて様々な分野に興味を持っていたとても積極的で進取的な少女でそんな頑張りやさんのやっちゃんのことを私は心から尊敬しました。
私はそんなやっちゃんのことをもっと知りたくてやっちゃんと友達になろうとしました。